- 生産性向上
経理業務を効率化する方法は?効率化のメリットやポイントもあわせて解説
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経理業務は手作業で行うものが少なくないため、作業の労力や時間がかかってしまうことが多いです。
一方、経理で作成する書類は、企業の経営方針を決める際や社外に公表する際などに必要なことが多いため、いつでも内容を確認しておけるのが理想です。業務が滞ると、経理担当だけでなく、企業全体にマイナスの影響が生じることも想定されます。
本記事では、経理業務を効率化するための方法やメリット、効率化におけるポイントなどについて解説します。
経理業務の効率化が求められる理由
経理業務は、以下のように多くの種類があります。
- 伝票の作成
- 仕訳
- 現預金の管理
- 請求書の発行・受領
- 入金管理・消込
- 経費精算
- 給与計算
- 税金の管理
- 決算報告関連書類の作成
また、慢性的な人手不足を感じている企業も少なくありません。最近は、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応などもあり、さらに業務が煩雑化しています。
このような状況から、経理業務の効率化が求められているのが現状です。具体的にどのような必要性があるのか、解説していきます。
経理部門が抱える慢性的な人手不足の課題
Sansanが、請求書関連業務に携わる1,000名の経理担当者を対象に行った「経理の人手不足に関する実態調査」では、経理担当者の半数以上が人手不足を感じており、そのうちの9割弱が「深刻な状況である」と回答しています。
人手不足の主な原因としては、「新制度・法対応による業務量の増加」「経理業務ができる人材の採用が困難」「システムの未導入による生産性の低さ」などが挙げられます。
また、経理の人手不足により、人為的ミスや時間外労働の増加、月次決算の遅れといった課題が発生しているようです。
こうした課題を抱える企業にとって、経理業務をできる限り効率化する重要性は極めて高いといえるでしょう。
労働環境の悪化は企業のさまざまなマイナス要因となる
生産性が悪く、長時間労働や従業員の負担増加という状態にあると、経理部門のみならず、企業全体にも悪影響が及ぶ恐れがあります。
例えば、労働環境が悪化している企業では、求職者が少なく人材確保が困難になったり、企業ブランドのイメージが低下したりするリスクが考えられます。売り上げにマイナスの影響が出る可能性も否定できません。
近年は、労働環境やコンプライアンスが経営課題として重要視されているため、労働環境が良好ではない場合、企業評価が下がる要因にもなりえます。
電子帳簿保存法やインボイス制度により業務負担が増えている
先述の人手不足の要因にもあったように、2023年10月のインボイス制度の導入、2023年12月の電子帳簿保存法の宥恕期間終了にともない、経理業務に新たな負担が発生しています。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により、適格請求書の受領と保存、要件の確認・区分、経過措置を考慮した取引先ごとの仕訳といった業務が必須になりました。
特に、個別対応方式による仕入税額控除の場合は、税率ごとに最大18種類に区分する必要があり、処理が複雑化しています。また、3万円未満の取引についても、適格請求書の受領と保存が不可欠です。
電子帳簿保存法の改正により、電子データで取引した請求書について、以下の要件を満たしたうえで、特定の期間(通常7年間)電子保存することが義務付けられました。
- 真実性の確保:データが改ざんされていないことを保証する
- 可視性の確保:容易に検索でき、要求に応じて税務署などの監査機関に提出できる体制を整える
なお、請求書の発行側・受領側ともに、これらの要件に沿った保存が必要です。
こうした業務への対応を手作業で行う場合は、大きな手間や負担がかかるため、経理業務効率化の必要性が高まっています。
経理業務の効率化を進めるメリット
経理業務の効率化を図ることで、さまざまなメリットを享受することが期待できます。具体的なメリットを知ることで、効率化を進める明確な理由が見えてくるでしょう。
従業員の負担軽減
経理業務における業務負担の増加は、恒常的な残業過多や休日出勤といった労働環境の悪化を招き、従業員のストレスや負担を増大させる要因となります。こうした状況は、従業員のモチベーション低下や離職率の上昇につながる可能性があります。
経理業務のデジタル化・自動化により、作業時間を短縮でき、従業員の負担を軽減することが可能です。労働環境が改善されることで従業員の満足度が向上し、離職率の低下やモチベーションの維持といったメリットを得られます。
また、前述したような人材確保の困難や、企業イメージの低下といったリスクを避けることにもつながります。
ミスの削減
経理業務の効率化によって業務が自動化したり、従業員の負担が減少したりすることで、ヒューマンエラーの減少につなげることが可能です。
本来、経理業務は企業の資金を管理する、間違いが許されない仕事であるため、経理担当者にとっては大きな責任を負うものです。しかし、手作業の場合には、どうしてもミスが発生してしまいます。たとえ複数人で確認しても、ミスを完全になくすことは難しいでしょう。
そこで、システムを導入することにより、経理業務の自動化を進められます。手作業に比べてミスの起きにくい環境を構築することで、取引先との関係悪化や税務上の誤りといった、リスクの軽減が期待できます。
コスト削減
経理業務の効率化で従業員の業務負担を軽減できるようになると、残業代や休日出勤にかかる人件費を削減することが可能です。慢性的な人手不足が課題となっている企業でも、人員補充が不要になれば、その分の人件費をかけずに済みます。
また、効率化の一環として、システムの導入によるペーパーレス化が進めば、紙や印刷などにかかっていた費用を削減する効果も期待できます。
生産性の向上
業務の効率化により、従業員に時間的・精神的な余裕が生まれると、コア業務に専念することが可能になります。ここでいう経理のコア業務とは、今後の財務管理や経営判断に必要となる情報を提供することです。
例えば、ファイル整理や伝票作成などのルーティンワークは、必要な業務ではあっても、コア業務には該当しません。こうした業務を効率化できれば、より重要度の高い業績管理や債権管理、決算関連書類の作成といった業務に時間を割くことができます。
経営陣の意思決定スピードの向上
経理で作成される月次決算書は、経営陣が迅速かつ的確な意思決定を行ううえで、重要な役割を果たすものです。効率化によって決算にかかる時間を短縮することで、経営陣の意思決定スピードを高めることが可能になります。
また、月次決算をスピーディーに行うことにより、複雑な検討を要する事案について経営陣が考えるための時間を確保できれば、より最適な意思決定に貢献できるでしょう。
経理業務を効率化する方法
経理業務を効率化するための方法を5つ解説します。自社の状況や課題を考慮し、対応できるものから順番に取り入れてみましょう。
経理業務のフローから課題点を洗い出す
経理業務のフローを確認し、課題を洗い出して整理することは「効率化の第一歩」です。主な確認事項として、以下の内容が挙げられます。
- 各業務を実施している担当者
- 各業務を実施している時期
- 各業務にかかっている時間とその適切性
- 属人化している業務
マニュアルや手順書などをもとに、業務フローを確認すると良いでしょう。上記のような事項を整理しながら、効率化が可能なポイントや効率化において課題になり得る点を把握し、改善していくことが大切です。
フォーマットを統一する
各種申請書類や提出書類など、社内で使用している書類のフォーマットや書き方が統一されていない場合、それらを処理する経理担当者の負担が大きくなります。また、フォーマットが統一されていないことで、書類に記入する側のミスも起きやすくなり、業務効率が悪化することも考えられます。
特に、幅広く事業展開している企業や利用する書類が多い場合には、書類のフォーマットを統一することで業務の効率化につながる可能性が高いです。さらに、経理業務の属人化防止にも役立ちます。
システム・ツールを導入する
すでに解説した通り、法対応による業務負荷の増大もあり、経理業務をすべて手作業で行っていくのは、効率化の観点から見ても限界があるといえます。
そこで、「会計システム」や「請求書発行システム」などの経理業務をサポートするツールを導入することで、大幅な業務効率化につなげることが可能です。ヒューマンエラーが減ることで、より正確な経理業務が可能になります。
こうしたシステムであれば、各種帳簿作成や転記の自動化、請求書自動発行、承認・受領のデジタル化といったことが可能になり、経理業務の負担削減や人為的ミスの削減が期待できます。
銀行振込をまとめる・ネットバンキングを活用する
取引先が複数社ある場合、振込日が分散していると経理の対応に手間がかかってしまいますが、振込日をまとめられると振込処理を簡略化できます。
また、振込日に銀行の窓口に出向いている場合は、ネットバンキングを活用することで、職場に居ながらにして振込状況の確認が可能です。銀行への往復がなくなるだけでも、時間のロスをなくせます。
キャッシュレス化を推進する
法人カードを導入すると、小口現金の使用を減らせたり、現金での立替精算をなくしたりすることが可能です。経費精算の負担を軽減できるため、業務の効率化が進みます。
また、法人カードであれば、いつ・どのような取引が成されたかという利用明細が自動で記録されます。会計ソフトと連携することで、仕訳作業まで自動化が可能です。
経理業務の効率化におけるポイント
経理業務の効率化を図るために、留意すべき4つのポイントについて解説します。自社が内包している課題を洗い出し、改善しながら効率化を進めましょう。
ECRSの法則で業務を見直す
ECRS(イクルス)の法則を、経理業務の見直しに活用しましょう。
ECRSとは、排除(Eliminate)・統合(Combine)・交換(Rearrange)・簡素化(Simplify)の、4つの単語の頭文字をとった言葉で、業務改善を段階的に進めるための指針や姿勢を示したものです。
排除(Eliminate)
不要な業務がないか確認する作業です。ルーティンワークで慢性的に行っている業務を、本当に必要かどうか検討し、行わなくても問題ない業務であれば排除候補に挙げます。
統合(Combine)
関連する業務、または重複する業務を一つにまとめられないか検討する作業です。似たような資料やレポートを一括管理したり、複数の部署で担当している類似業務を、一つの部署に集約したりすることなどが挙げられます。
交換(Rearrange)
作業プロセスを交換することで、効率化が図れないか検討する作業です。一連の工程を効率的な順序に転換することにより、作業の流れが円滑化され、時間の短縮につながります。
簡素化(Simplify)
現行の作業手順をシンプルにできないか検討する作業です。頻繁に使用する書類をテンプレート化したり、ビジネスチャットを導入したりするなどの方法があります。ヒューマンエラーが減少するうえ、作業の効率化が期待されます。
自社に合ったシステム・ツールを選択する
前述の通り、システムやツールの導入は経理業務の効率化に有効ですが、導入する際は、自社に適したものを選択する必要があります。
ポイント | 説明 |
---|---|
導入形態 | システムやツールの形態として、主にクラウド型・インストール型・オンプレミス型などがあります。 システムやツールによって、強みとする特徴が異なるため、自社がシステム化したい業務を明確にし、それを可能にする特徴を持ったシステムを選ぶことが大切です。 |
自社が求める機能 | 自社がシステム化したい目的にかなったシステムやツールを導入することがポイントです。そのためには、自社が具体的にどの業務を効率化したいのかを検討する必要があります。 例えば、実務の正確性や効率化を高めたいのか、経営判断に用いる書類を充実したものにしたいのかなどを判断します。 |
セキュリティー | システムやツールに施されているセキュリティーについても確認することが大切です。 情報が暗号化されているか、バックアップは適切に行われているかなどを確認しましょう。 |
既存システムとの連携 | 既存システムとの連携が可能かどうかも、確認が必要です。 連携が可能であれば、データの共有をリアルタイムで行うことができ、経理部門だけでなく、企業全体の業務効率アップにも効果的です。 |
インボイス制度・電子帳簿保存法への対応 | インボイス制度や電子帳簿保存法といった法制度の改正に柔軟に対応できるかも、忘れずに確認したい点です。 改正・変更時に、システムのアップデートなどで対応できるものを選びましょう。 |
アフターサポートの体制 | システムの新規導入に際しては、サポート体制が充実しているかも重要です。 わかりやすいマニュアルが設置されているか、トラブル発生時にどのようなサポートが受けられるのかを、あらかじめ確認しておきましょう。 |
利便性の高いネットバンキングを選ぶ
自社にとって利便性の高いネットバンキングを選ぶことも大切です。選ぶ際は、以下の点に留意すると良いでしょう。
CSVなどによる一括振込の対応可否
振込を取引先ごとに個別に行うと、甚大な労力や時間がかかってしまいます。CSV形式や全銀フォーマット形式を利用した振込であれば、多数の振込を一括で登録可能です。振込業務の効率化を図るためには、一括振込に対応しているネットバンキングを選ぶ必要があります。
口座振替の可否
法人カードの利用代金や法人保険の保険料、社会保険料、労働保険料など、企業で発生する費用のなかには、口座振替で支払えるものがあります。銀行の窓口に出向かずとも、ネットバンキングで支払えると手間が省けます。
会計ソフトなど既存システムとの連携
自社で利用している会計ソフトなど、既存システムとの連携が取れるかどうかも重要なポイントです。連携が取れる場合は、データの共有が円滑に行えます。
手数料(ネットバンキング手数料、他行への振込手数料)
インターネットバンキングを利用すると、手数料が発生します。ただし、手数料は銀行によって異なるため、サービス内容と料金を十分に考慮して決めることが大切です。
こうした観点を自社の業務と照らし合わせつつ、利便性が高く、メリットを得られるネットバンキングを選択することが重要です。
キャッシュレス化は入念な準備やルール策定を行って推進する
経費精算のキャッシュレス化を行う際は、ルールを定めたうえで、下記のポイントに注意して準備を進めなければなりません。
法人カードの運用ルールを策定する
トラブル防止のために、法人カードの貸出方法や限度額、利用対象範囲、利用にあたって必要な書類などについて規定しておきます。
残高の管理を徹底する
クレジットカードは、決済後口座から現金が引き落とされるまでに時間的なズレが生じます。残高が不足していると支払いができず、カードが利用停止されてしまうことがあるため、残高をきちんと管理することが必要です。
不正利用対策を行う
カードを利用した際に通知が受け取れたり、万が一のときに停止できたりするカードを利用して、不正利用対策を行いましょう。必要に応じて、権限を制限できるタイプもおすすめです。
スモールスタートで移行する
業務の混乱を避けるためにも、まずは移行しやすいところからスモールスタートすると良いでしょう。試用期間を設けつつ、運用ルールをブラッシュアップしたうえで本格導入すると、負担が少ないです。
まとめ
経理業務の効率化が進むと、従業員の負担が軽減することで、人為的ミスを削減することが可能です。システムの導入により、コストダウンや生産性の向上、経営陣における意思決定のスピードアップといったメリットがあります。
効率化を図るためには、問題点の洗い出しやネットバンキングの利用、アウトソーシングの活用など多様な方法がありますが、システムやツールの導入が効果的です。
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部
記事監修者のご紹介
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
保有資格:弁護士
慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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