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請求書デジタル化のメリット・デメリット | システム導入やデジタル化の進め方を解説

請求書デジタル化のメリット・デメリット | システム導入やデジタル化の進め方を解説

電子帳簿保存法の施行や郵便料金の値上げなどを背景に、請求書のデジタル化は多くの企業にとって避けて通れない重要なテーマとなりました。加えて、ペーパーレス化が進む現代において、請求書のデジタル化はコスト削減や業務の効率化、さらにはセキュリティー強化や環境保護にも大きな効果を発揮します。

本記事では、請求書をデジタル化する具体的なメリットに加え、その具体的な方法や注意点について詳しく解説します。

請求書業務のデジタル化で工数を削減

請求書のデジタル化とは

請求書のデジタル化とは、従来は紙ベースで発行・管理されていた請求書を、電子データ形式に置き換えることです。

ただし、単に紙の請求書をスキャンしてPDFなどに変換するだけでは十分ではありません。請求書をデジタル化する企業には、電子帳簿保存法に定められた要件に準拠した形式で、適切に管理・保存することも求められます。

電子帳簿保存法の概要については、以下の記事をお読みください。

請求書のデジタル化が求められる3つの理由

請求書のデジタル化が求められる3つの理由を示す図

近年、多くの企業で請求書のデジタル化が進められています。ここでは、その背景にある3つの理由について解説します。

電子帳簿保存法による義務化

電子帳簿などのデータ保存ルールを定めた「電子帳簿保存法」は1998年に制定されたものですが、令和3年度税制改正によって抜本的な見直しが行われました。この改正により、令和4年1月1日以降に行う取引に関して、事業者はデータとして発行した請求書を、紙ではなく必ずデータ形式で保存することが義務化されました。

またデータの保存要件は緩和されたものの違反時の罰則は強化されたため、多くの事業者が適切にデータを管理するための体制を改めて整える必要が生じています。

参照:国税庁|「電子帳簿等保存制度特設サイト

郵便料金の値上げ

事業者が請求書のデジタル化を進めるべきもう一つの理由が、2024年10月から実施された郵便料金の値上げです。一般書留と簡易書留を除くほぼすべての形態で20円以上の値上げが実施されたため、企業はコストダウンを図るためにデジタル化を進める必要性が高まっています。

具体的には、定形郵便物(25g以内)の場合、84円から110円に値上げされました。定形外郵便物(50g以内)は120円から140円、レターパック(ライト)も370円から430円になるなど、ほぼすべての郵便料金が値上げされています。

主な郵便料金

種類

重量

新料金

旧料金

定形郵便物

25g以内

110円

84円

50g以内

110円

94円

定形外郵便物

(規定内)

50g以内

140円

120円

100g以内

180円

140円

150g以内

270円

210円

250g以内

320円

250円

特定記録郵便

210円

160円

レターパックライト

430円

370円

スマートレター

210円

180円

(郵便局|「2024年10月1日(火)から郵便料金が変わりました。」の情報を基に作成)

こうした値上げは、請求書を大量に発送する企業にとって、年間で相当なコスト増加につながる可能性があります。

Sansan株式会社の行った調査によると、請求書一件当たりの郵便料金が26円引き上げられた場合、請求書の郵送にかかる企業の費用負担は年間で108万円程度増加する見込みとなり、請求書のデジタル化は単なる効率化だけでなく、コスト削減の観点からも重要な施策となっています。

参照:Sansan株式会社「請求書の発行業務に関する実態調査」を実施~郵便料金値上げまで半年も、請求書発行は「紙が多い」が約6割。一方で約半数が紙から電子への切り替えを検討~

DXの普及と人手不足による業務効率化ニーズ

国内でデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進される中、経理・会計分野においても紙中心の業務から脱却する動きが加速しています。特に、新型コロナウイルス感染症の拡大を契機にテレワークが定着したことで、紙の書類を前提とした業務フローが効率化を妨げる要因として顕在化しました。

経理業務の中でも、請求書の発行や受領、処理といった作業は、紙の文化が根強く残っている領域の一つです。慢性的な人手不足への対応や生産性向上の観点からも、これらの業務プロセスの見直しが求められており、その解決策としてデジタル化が注目されています。

請求書をデジタル化するメリット

「請求書のデジタル化で最もメリットを感じたこと」についての調査結果を示す図

請求書をデジタル化することで、企業の経理部門にはさまざまなメリットがあります。

Sansan株式会社の調査によると、請求書のデジタル化によって最も多く挙げられたメリットは「社内のペーパーレス化が進んだ」(73.2%)で、次いで「郵送代などコストを削減できた」(58.0%)、「請求書を処理する時間が減った」(42.4%)となっています。

これらの調査結果を踏まえ、請求書をデジタル化する以下の4つのメリットを紹介します。

参照:Sansan株式会社:インボイス制度対応の実態調査」を実施

~制度開始から3か月、いまだ3分の1以上の企業で課題。対応が順調な企業は「従業員周知」と「業務デジタル化」に注力~

1. コスト削減

請求書をデジタル化することは、コストの削減につながります。紙で請求書を発行する場合、紙のコストや印刷コスト、さらには郵送料金などのコストが発生しますが、請求書をデジタル化すればそれらのコストはかかりません。

また郵送の手間も省けるため、企業全体としての生産性も向上します。

2. 効率化

請求書をデジタル化すればオンラインで発行・管理・保存業務が完結するため、業務効率が大幅に上がります。またミスも減るためいつでも正確な請求が可能となり、取引先とのトラブルや社会的信用を失うリスクを軽減できます。

3. セキュリティー

請求書のデジタル化は紙媒体における紛失や流出等のリスクを軽減し、セキュリティーの向上につながります。例えば「間違って破棄してしまうリスク」や「退職者が書類を持ち帰って流出させるリスク」などの事態を防ぐことができます。

ただし、データ保存にも紙媒体とは異なるセキュリティーリスクがあります。例えば取引先・関係者への誤送信や不正アクセスによる流出、といったケースが実際に発生しているため、従来の紙媒体とは全く異なるセキュリティー対策が必要になります。

4. 環境保護

請求書をデジタル化することは紙の消費を減らすため資源保護となります。最近では企業の環境への取り組みや配慮を評価して投資する「ESG投資」も活発化しており、デジタル化を公表することで環境負荷軽減や、社会的な評価の向上も期待できます。

請求書のDXで業務工数を削減

請求書デジタル化のデメリットと課題解消のポイント

次は請求書をデジタル化する際によくある3つの課題と、その解消方法について解説していきます。

  1. 取引先との調整が必要
  2. 従業員の教育や業務フローの見直しが必要
  3. 導入コストがかかる

1. 取引先との調整が必要

請求書は自社だけで完結するものではないため、デジタル化への移行には取引先の協力が不可欠です。取引先によってはデータ化した請求書を拒否されるケースもあり、その場合は紙で印刷・送付する手間がかかります。

取引先に協力を依頼する際は、デジタル化が双方にもたらすメリット(例:処理の迅速化、郵送・管理コストの削減など)を丁寧に伝えることが大切です。

依頼文テンプレートの例

件名:請求書の電子発行への移行に関するお願い

[取引先会社名] [担当者様]

拝啓

貴社におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、この度弊社では、業務効率化および環境負荷低減の取り組みの一環として、請求書の発行を従来の紙による郵送から電子データ(PDF)による送付へ移行させていただきたく存じます。

誠に恐縮ではございますが、貴社への請求書についても電子発行への切り替えにご協力賜りますようお願い申し上げます。

何卒ご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

敬具

[自社名] [担当部署・担当者名] [連絡先]

万が一、取引先の事情によりデジタル化を拒否された場合は、無理強いはせず、個別の事情を尊重する姿勢が必要です。例えば、該当の取引先のみ紙での発行・郵送を継続し、他の取引先から段階的にデジタル化を進めるといった方法も考えられます。

そのほかの対応策や交渉のポイントについては、以下の記事もお読みください。

2. 従業員の教育や業務フローの見直しが必要

請求書をデジタル化する方法や導入目的は従業員すべてに周知される必要があるため、社員教育の機会を設けたり講習会を実施する必要があるかもしれません。

既存の業務プロセス変更に伴う負担の多くは従業員が負うことになるため、一部の従業員から反発が起きる可能性もあります。

こうした課題への対策としては、まずスモールスタートを心がけることが挙げられます。特定の部署や、請求書の受領業務だけなど、範囲を限定して導入し、徐々に対象を拡大していく方法です。

システム選定の段階で、操作が直感的で分かりやすいマニュアルが整備されている製品を選ぶことも、導入後の教育コストを抑え、現場の負担を軽減する上で有効です。

3. 導入コストがかかる

請求書をデジタル化するに当たって、システムの導入や機器の購入、初期費用や月額費用などの支出が発生します。

導入の際は初期費用や月額費用だけでなく、デジタル化によって削減が見込まれる郵便代や印刷代、人件費といった長期的なコスト削減効果を試算し、費用対効果を明確にすることが重要です。

また、導入コストの負担を軽減するために、「IT導入補助金」をはじめとする国や地方自治体の支援制度を活用することも有効な手段となります。

請求書をデジタル化する方法

請求書のデジタル化には、請求書の受け取りと請求書の発行の大きく2つの領域があります。

各領域ごとに請求書をデジタル化する方法を3つ紹介します。

  1. 請求書の受け取り:請求書をスキャンしてPDF化
  2. 請求書の受け取り:OCR技術を活用したデータ化
  3. 請求書の発行:請求書発行システムの導入

1. 請求書の受け取り:請求書をスキャンしてPDF化

基本的に請求書は電子データで受け取るのが望ましいですが、紙で発行された場合はスキャンしてPDF化し、データとして保存できるようにします。最初から電子データとして発行したもの、また発行されたものを受け取る場合は、データへの変換作業は不要です。

スキャンの方法

スキャンは主に、書類をスキャナー(専用機)で読み取ります。ただしスキャン機能が付いた複合機による読み取りや、さらにはスマートフォンやデジタルカメラなどで撮影し、電子データとして保存することも認められています。

参照:国税庁|「Ⅰ 通則【制度の概要等】

スキャナーの要件

電子帳簿保存法の保存要件を満たすためには、使用するスキャナー(またはスマートフォン、デジタルカメラなど)が一定の基準を満たしている必要があります。国税庁が定める主な要件は以下の通りです。

項目

要件

解像度

25.4ミリメートル当たり200ドット以上

カラー階調(重要書類の場合)

赤色、緑色、青色それぞれ256階調以上

グレースケール階調(一般書類の場合)

白色から黒色まで256階調以上

(国税庁|「Ⅰ 通則【制度の概要等】」の情報を基に作成)

2. 請求書の受け取り:OCR技術を活用したデータ化

請求書をスキャンしてデータ化する際には「OCR」という技術を活用します。これはシステムに文字を読み取ってもらい、テキストデータとして管理することを指します。

現在はAI技術によりOCRは大きく発達し、大量の書類の内容を一度に読み取れるようになっています。AI-OCRを活用するなら、より正確で効率的な請求書管理が可能となるでしょう。

以下に、一般的なOCRの利用手順を紹介します。

1. 書類をスキャンする

まず、スキャナーや複合機、スマートフォンなどを使用して、紙の請求書を電子データに変換します。この段階で作成されるのは、PDFやJPEGといった画像ファイルで、書類に記載されている文字は画像の一部です。

まだテキストデータとして認識されていないため、後からファイル内の文字を検索したり、コピー&ペーストしたりすることはできません。

2. OCRツールでテキスト化する

次に、スキャンして作成した画像データに対し、OCRツールを使用してテキスト化処理を行います。

OCRツールには、Adobe AcrobatのようにPDF編集ソフトに機能が含まれているものや、専用のソフトウエア、クラウドサービスなど、さまざまな種類があります。自社の運用体制や予算、必要な機能に合わせて選定することが大切です。

この処理により、画像内の文字がコンピュータで編集可能なテキストデータに変換されます。

3. テキストを確認・修正する

OCR処理が完了したら、生成されたテキストデータが元の請求書の内容と一致しているかを目視で確認します。

特に、手書きの文字や、かすれ・汚れがある箇所の文字は正しく変換されない(変換精度が落ちる)場合があるため注意が必要です。誤りが見つかった場合は、手動で正しいテキストに修正します。

なお、近年では、AI(人工知能)技術を活用し、より高い精度でテキスト化できるAI-OCRも普及しています。

3. 請求書の発行:請求書発行システムの導入

請求書発行のデジタル化には請求書発行システムの導入が必要です。

請求書発行システムは作成工数の削減につながるだけでなく、発行した後の管理を効率化することにもつながります。

紙やExcelなどで請求書を作成している場合、過去の発行履歴を参照する際に検索がしにくいため、管理工数が膨らみがちです。

請求書発行システムの導入により管理がしやすくなり、発行した後の工数削減にもつながるでしょう。

請求書発行システムを選ぶ際は、以下の点に注意します。

自社のニーズ

請求書発行システムと一口に言っても、その機能は多岐にわたります。請求書の発行・送付機能に特化したシンプルなものから、見積書や納品書の作成、入金管理(消込作業)、会計ソフトとの連携など、請求業務の前後に発生する作業までを幅広く効率化できる多機能なシステムも存在します。

まずは自社がどの業務を最も効率化したいのか、どのような機能が必要なのかというニーズを明確にすることが選定の第一歩です。

既存システムとの連携

導入を検討している請求書発行システムが、現在社内で使用している会計システムや販売管理システムと連携できるかどうかも、確認すべき重要なポイントです。

システム間でデータが自動連携できれば、手作業による転記ミスを防ぎ、経理業務全体のさらなる効率化につながります。

操作方法

システムの操作画面は、製品ごとに異なります。毎日使用するツールであるため、操作が直感的で分かりやすいかどうかは、業務効率に直結します。

必ずしも経理担当者がITツールの操作に習熟しているとは限らないため、ITに詳しくない人でも無理なく使いこなせるかどうか、という視点で評価することが大切です。

コスト

請求書発行システムの導入には、一般的に初期費用と月額の運用費用が発生します。

運用費用には、機能やユーザー数に応じて固定の月額費用がかかるタイプと、発行する請求書の件数などに応じた従量課金タイプがあります。自社の請求書発行枚数や利用規模を考慮し、長期的に見てコストメリットのある料金プランを選ぶことが重要です。

セキュリティー対策

請求書は取引に関する重要な情報を含むため、セキュリティー対策が万全であるかは最も重要な選定基準の一つです。

データが送受信時や保存時に暗号化されているか、IPアドレス制限や二段階認証などで不正なアクセスを防止する仕組みがあるか、誰がいつ操作したかを記録するログ管理機能が備わっているかなどを確認しましょう。

請求書のデジタル化を行う際のポイント

請求書をデジタル化する際は、以下の4つのポイントに沿って行うことが大切です。

  • STEP1.現状分析と目標設定
  • STEP2.システムの選定
  • STEP3.導入準備
  • STEP4.運用開始と改善

STEP1. 現状分析と目標設定

最初に行うべきなのは、自社の業務フロー把握や課題特定を伴う、現状分析と目標設定です。具体的には、自社でデジタル化するに当たって、現在どのような業務が発生して今後どのような対応が必要になるのかを分析し、その分析結果に応じた適切な目標設定を行います。

課題となる点はいくつか想定されます。例えば請求書の印刷・封入・郵送するプロセスがすべて手作業であり、多くの時間がかかっているかもしれません。

STEP2. システムの選定

次は請求書のデジタル化に向けて、どのシステムが自社に向いているのか選定を行います。具体的には、まず自社のニーズを明確化し、どこまでを自動化したいのか、ほかのシステムとの兼ね合いも含めて想定します。

その上でいくつか候補を絞り、自社が求める基準をもっとも満たしているものを選びます。例えばインボイス制度への対応やランニングコストの低さ、他社への導入実績やサポート体制の充実さなどが比較基準となります。

STEP3. 導入準備

次はシステムの導入準備です。システムを導入するに当たって、社員に利用してもらうためにマニュアルを作成したり、全体で新システムの使い方について学習できる機会を設けます。必要ならば取引先にも周知し、同意を得るようにします。

STEP4. 運用開始と改善

運用開始後、しばらくの間は問題やトラブルが発生する可能性があります。運用当初はすべての業務をデジタル化するのではなく、適用範囲を段階的に広げていくようにしましょう。

運用での改善点を、PDCA(計画・実行・評価・改善)を回しながら対応することも重要です。これにより自社の方向性を明確にして、必要なところは改善を図りながら、適切かつ円滑な業務を継続的に行えるようになります。

電子請求書の導入で業務効率化

デジタル化における注意点

最後に、請求書をデジタル化する際に注意したい、以下の3つの点を解説します。

  1. 電子帳簿保存法の要件
  2. インボイス制度への対応
  3. セキュリティーの確保

電子帳簿保存法の要件

電子帳簿保存法では、次の3つの要件を遵守することが求められています。

  • 真実性の確保
  • 可視性の確保
  • 検索機能の確保

真実性の確保

まず必要なのが「真実性」です。具体的には、次のいずれかの措置が行われる必要があります。

  • タイムスタンプが付された後に授受する
  • 授受後、速やかに(7営業日以内に)タイムスタンプが付される
  • データの訂正削除の記録が残る、または訂正削除ができないシステムを利用して、授受及び保存する
  • 訂正・削除の防止に関連した事務処理規程の策定、運用、備付け

要するに、データの改ざんや削除が行われていないことを証明するためのシステムが必要だということです。これにより請求書が本物であることを示す「真実性」が確保されます。

可視性の確保

次に必要なのが「可視性」です。具体的には、すべての措置が行われる必要があります。

  • システムの概要書(仕様書・説明書等)が備え付けられている(自社開発のプログラムを使用する場合に限る。)
  • 保存場所に出力できる装置(PC・プリンター・ディスプレイなど)がある
  • 取引情報をすぐに検索できる

上記の通り、保存形式は限定されていないものの、電子書類の保存に関わる可視性を確保するための環境が必須です。三番目の「検索」については次で詳しく解説します。

検索機能の確保

システムの検索要件については、次に挙げる機能が確保されているべきです。

  • 取引の日付や金額、取引先などの主要な項目を検索条件として設定できる
  • 取引の日付や金額では、範囲指定で検索できる
  • 2点以上の記録項目を任意に組み合わせた検索条件を設定できる

ただし、税務職員による「データのダウンロードの求め」に応じることができるようにしている場合、以下の通り要件が緩和されます。

すべての方において、上記⑵および⑶の検索要件(範囲指定・組合せ検索)が不要となります。

さらに以下に該当する方は、⑴から⑶まですべての検索要件が不要となります。

  • 判定期間(前々年等)の売上高が 5,000 万円以下の事業者
  • データをプリントアウトし、「取引年月日などの日付」および「取引先」ごとに整理された状態で、書面を提示・提出できる事業者

インボイス制度への対応

電子帳簿保存法では、インボイス制度への対応が要求されます。

適格請求書発行事業者の登録

インボイス制度に対応した請求書を発行するためには、企業が「適格請求書発行事業者」として登録されている必要があります。税務署に申請書を提出し審査に通ると、発行事業者としての登録番号が発行され、公式サイトで確認できるようになります。

電子インボイスの要件

紙媒体で受領した適格請求書はそのまま紙媒体での保存も可能ですが、メールやクラウドサービス等で受領した、いわゆる電子インボイスについては、電子帳簿保存法の「電子取引」に該当するため、同法が定める「真実性の確保」および「可視性の確保」の要件をすべて満たしたうえで、原則としてデータのまま保存しなければなりません。

セキュリティーの確保

電子請求書のセキュリティーリスクと、データ保護のための対策を紹介します。要件として2024年1月から義務化されている電子帳簿保存法について記載します。

電子請求書はデータのため、紙媒体とは異なる漏えいや消失などのリスクがあります。そのリスクを最小化するために、以下の対策をすることが重要です。

  • 送信時・保存時にデータを暗号化する
  • 請求書データにアクセスできる人物を制御(制限)する
  • 請求書データへのアクセスログを常時取得・保存できるようにする
  • 請求書データのバックアップ体制を構築する
  • 高いセキュリティーが確保された信頼できるシステムを導入する
  • セキュリティーの意識を高めるための社員教育を徹底する

これらの適切な対策を実施することにより、業務が停滞したり、社会的な信頼を失ったりするような事態を避けられます。当然ながら、これらの対策と電子帳簿保存法の要件を満たすことは両立されているべきです。

請求書のデジタル化でよくある疑問と回答

ここでは、デジタル化に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめます。

電子データの請求書に印鑑は必要か?

電子データ、紙の形式を問わず、請求書への押印は法的に必須ではありません。請求書に角印などの社印を押印するのは法的な義務ではなく、あくまで日本の商習慣として行われてきたものです。

一般的な請求書に記載される項目は以下の通りです。

  1. 請求書の宛先
  2. 発行者の情報
  3. 請求日(発行日)
  4. 取引年月日
  5. 取引内容
  6. 金額
  7. 振込期日
  8. 振込先
  9. 請求書番号
  10. 備考

なお、請求書が適格請求書(インボイス)として認められるためには、さらに以下の3項目の記載も必要です。

  1. 適格請求書発行事業者の登録番号
  2. 適用税率および税率ごとの合計額
  3. 税率ごとに区分した消費税額等

請求書の記載項目の詳細については、以下の記事をお読みください。

データ保存期間・法定保存要件は?

請求書の保存期間は、法人税法や会社法によって定められています。法人の場合は、原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。ただし、欠損金が生じた事業年度においては、10年間(※平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)の保存が義務づけられています。

なお、電子データとして保存する場合は、電子帳簿保存法の「電子取引」または「スキャナ保存」の要件を満たした形で保存することが求められます。

請求書の保存期間についての詳しい情報は、以下の記事をお読みください。

デジタル化をした後、紙の請求書は保存すべき?

取引先から受け取った紙の請求書をスキャンして保存した場合、電子帳簿保存法のスキャナ保存の要件を適切に満たしていれば、紙の原本は破棄しても問題ありません。

一方で、注意が必要なのは電子データとして受領した請求書です。メール添付のPDFやWebサイトからダウンロードした請求書は、紙に出力して保存することが認められず、電子データのまま保存することが義務付けられています。

電子帳簿保存法に対応した保存方法については、以下の記事をお読みください。

デジタル化しない場合の罰則は?

請求書をデジタル化しなかったことで科される罰則はありません。例えば、請求書を紙で受け取った場合は、スキャンせずに紙のまま保存し続けることが認められています。

不利益を被る可能性があるのは、あくまで電子帳簿保存法の要件を守らなかった場合です。特に、メール添付やダウンロードで受け取った電子取引データを、要件を満たさずに保存(または削除)した場合がこれに該当します。

税務調査の際に、電子データが適切に保存されていないと、その取引が正当な経費として認められず、結果として追徴課税が発生するリスクがあります。

加えて、意図的なデータの改ざんや隠蔽などが認められた場合は、青色申告の承認が取り消されたり、通常よりも重い重加算税が課されたりする可能性もあるため注意が必要です。

まとめ

請求書のデジタル化について詳しく解説してきました。デジタル化は、コスト削減、業務効率の向上、セキュリティーの強化、環境保護など、多くのメリットをもたらします。一方で、取引先との調整や従業員教育、初期導入コストなどの課題もあります。

また、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応、データセキュリティーの確保など、法的要件や安全性にも十分な注意を払う必要があります。

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小野 智博

記事監修者のご紹介

弁護士 小野 智博

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士

保有資格:弁護士

慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

  • 本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。なお、本稿は、読みやすさや内容の分かりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。
「月次決算に役立つ情報」編集部

執筆・編集

「月次決算に役立つ情報」編集部

Bill Oneが運営する「月次決算に役立つ情報」の編集部です。請求書業務、経費精算、債権管理や経理業務における法対応など、さまざまな業務の課題を解決に導く情報をお届けします。

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