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【領収証の基礎から電子化まで】業務効率化とリスク削減を実現するポイントを解説

【領収証の基礎から電子化まで】業務効率化とリスク削減を実現するポイントを解説

領収証は、ビジネスにおける金銭授受の証拠として非常に重要な書類です。しかしその重要性とは裏腹に、正しい書き方や収入印紙のルール、保管方法など、意外と知らない点が多いのではないでしょうか?特に、煩雑になりがちな領収証の管理は多くの企業にとって悩みの種です。

本記事では領収証に関する基礎知識から、業務効率化・リスク削減に役立つ電子化まで、わかりやすく解説します。領収証に関する疑問を解消し、スマートな領収証管理の実現に向けた第一歩を踏み出しましょう。

領収証の基本を理解する

ビジネスシーンにおいて金銭の授受は日常的に発生します。その際に必要となるのが、取引の証拠となる領収証です。

領収証は金銭授受を証明する重要な書類ですが、企業によっては作成方法やルールの理解が曖昧なまま運用しているというケースも少なくありません。

まずは領収証に関する基本的な知識を改めて確認し、正しい理解を深めましょう。

領収証とは何か?領収書との違いを解説

領収証とは、「金銭の受け取りを証明する書類」のことです。金銭を受け取った側(受領者)が、金銭を支払った側(支払者)に対して発行します。

領収証とよく似た言葉に「領収書」というものがありますが、両者に明確な違いはありません。実務上もほぼ同じものとして扱われ、どちらも金銭授受の証拠として有効です。発行時にどちらの名称を用いるかは、企業や取引先との慣習に合わせるのが一般的です。

ちなみに国税庁のホームページでは、領収書の具体例として「受取書」「領収証」「レシート」「預り書」などが挙げられています。領収証は領収書の一形態という扱いですが、実務上は特に区別する必要はありません。

参照:国税庁|「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書

正しい領収証の書き方

領収証には、税務処理や取引証明書類としての要件を満たすために記載が必要とされる項目がいくつかあります。これらのいずれかが欠けていると税務処理や取引証明の際に問題が生じる可能性もあるため、十分に注意が必要です。

税務・取引証明の観点より記載すべき項目

  • 取引日(代金を受け取った日)
  • 宛名(支払者の氏名または名称)
  • 金額(アラビア数字で明確に記載)
  • 但し書き(具体的な商品名やサービス内容)
  • 金額の内訳(インボイス対応の場合。税率ごとの消費税の合計金額も記載)
  • 発行者(受領者)の氏名または名称、住所、電話番号

手書き領収証の注意点

  • すべての項目を漏れなく記入する
  • 修正液は使用せず、誤った場合は二重線で訂正し、訂正印を押印する
  • 金額は明確に記載し、通貨単位も忘れずに記入する

領収証の訂正方法

  • 発行日を記入し忘れた場合は後から記入せず、再発行する
  • 宛名を誤って記入した場合は二重線で訂正し、正しい宛名を記入のうえ、訂正印を押印する
  • 金額を誤って記入した場合は二重線で訂正し、正しい金額を記入のうえ、訂正印を押印する

領収証の但し書きとは?

但し書きとは、領収証において、どのような取引で金銭の授受が発生したのかを具体的に示す項目です。単に「品代として」と記載するのではなく、「○○サービス利用料として」といったように、具体的な商品名やサービス内容を記載する必要があります。

特に消費税の仕入税額控除を受けるためには、但し書きに具体的な取引内容を記載することが必須です。曖昧な記載や省略は、税務調査の際に指摘を受ける可能性もあるため禁物です。

領収証に収入印紙は必要?

領収証に収入印紙を貼る必要があるかどうかは「取引の金額」および「営業に関するものか」によって異なります。うっかり貼り付けを忘れると、印紙税法違反としてペナルティーを受ける可能性もあるため注意しましょう。

そもそも収入印紙とは

収入印紙とは国が発行する証票の一種で、印紙税を納める際に使用される切手のような紙片です。

ちなみに印紙税とは、契約書や領収証など、一定の文書を作成した際に課税される税金のこと。納税の際は収入印紙を該当する文書に貼り付け、消印をします。

参照:国税庁|「契約書や領収書と印紙税

収入印紙は、郵便局や法務局の窓口などで購入できます(一部のコンビニでも取り扱っていますが、額面が「200円」のみというケースが多いようです)。

なお、一度購入した収入印紙は換金できません。

収入印紙が必要なケース

領収証に収入印紙が必要かどうか(印紙税か課税されるか)は、記載された金額によって判断されます。具体的には以下の通りです。

参照:国税庁|「No.7105 金銭又は有価証券の受取書、領収書

【売上代金の領収証】

記載金額

税額

5万円未満

非課税

5万円以上、100万円以下

200円

100万円超、200万円以下

400円

200万円超、300万円以下

600円

300万円超、500万円以下

1,000円

500万円超、1,000万円以下

2,000円

※ 1,000万円超については省略
※営業に関しないものは非課税となります

【売上代金以外の領収証】

記載金額

税額

5万円未満

非課税

5万円以上

200円

収入印紙が不要なケース

上の表からもわかる通り、取引金額が5万円未満の場合、領収証に収入印紙を貼る必要はありません

ただし5万円以上の取引を記載した領収証でも、以下の場合は収入印紙が不要です。

  • クレジットカードで支払った旨を明記した領収証
  • 電子領収証

参照:国税庁|「クレジット販売の場合の領収書

収入印紙の正しい貼り方、注意点

収入印紙を貼付する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • 貼付位置:領収証の「収入印紙貼付欄」に、金額が隠れないように、しっかりと貼り付けます。
  • 消印:収入印紙と領収証にまたがるように押印します。これにより、再利用を防ぐことができます。

なお、過大な金額の収入印紙を貼ってしまった場合、税務署に「印紙税過誤納確認申請(兼充当請求)書」という書類を提出することで還付を受けられる可能性があります。

参照:国税庁|「No.7130 誤って納付した印紙税の還付

手書き領収証の課題とリスク

多くの企業で慣れ親しまれてきた手書き領収証ですが、デジタル化が進む現代において、さまざまな課題やリスクがあらためて意識されています。

ここでは手書き領収証のデメリットに注目してみましょう。

手書きの領収証に潜んでいる課題

手書き領収証の主な課題としては、以下の四つが挙げられます。

  1. 記載ミス・紛失のリスク
  2. 保管スペースと手間
  3. 経費精算時の手間と人的ミスのリスク
  4. 不正利用のリスク

1.記載ミス・紛失のリスク

手書きによる記入ミスや領収証自体の紛失は、日常的に起こりえます。記載ミスがあった場合は訂正印を押す必要がありますし、紛失した場合は再発行を依頼しなければなりません。これらの作業は、担当者にとって大きな負担となり、業務効率を低下させる要因となります。

2.保管スペースと手間

税法上、領収証は最低でも7年間は保管する義務があります。そのため、紙ベースで管理していると、保管スペースの確保が課題となります。膨大な量の領収証の中から、必要な時にすぐに探し出すことは容易ではありません。

3.経費精算時の手間と人的ミスのリスク

経費精算の際、手書き領収証の内容を一つずつ確認し、手入力でシステムに入力していく作業は、時間と手間がかかります。また、入力ミスや計算ミスなどの人的ミスが発生する可能性もあり、正確性の面でも課題が残ります。

4.不正利用のリスク

手書き領収証はセキュリティー面でも脆弱です。ここでは主な不正利用リスクを紹介します。

改ざん・偽造の可能性

手書きであるがゆえに、悪意のある人物によって金額や日付などを書き換えられたり、偽造されたりするリスクがあります。悪質なケースでは、架空の取引をでっち上げ、不正に経費を請求するといったことも起こりえます。

二重請求による不正

領収証の原本を複数作成し、同じ領収証を使って何度も経費請求を行うという不正も考えられます。手書きの場合はコピーと原本の判別が難しく、不正を見抜くのが困難なケースも多いです。

コンプライアンス違反と企業イメージの低下

領収証の不正利用は、企業のコンプライアンス違反につながる重大なリスクです。社会的信用を失墜させるだけでなく、企業イメージの低下にもつながる可能性があります。

電子領収証で業務効率化&リスク削減

ここまで見てきたように、手書き領収証には、業務効率やコンプライアンスの面で多くの課題が残されています。これらの課題を解決するのが「電子領収証」です。

電子領収証とは?

電子領収証とは、電子データの形で発行・保存・管理される領収証のことです。紙の領収証と同じく金銭授受の証拠となる重要な書類ですが、電子データならではのメリットが豊富に存在します。

なお電子領収証については、電子帳簿保存法に関する記事も合わせてお読みください。

領収証を電子化するメリット

電子領収証の導入は、経費精算業務を劇的に効率化します。ここでは電子領収証の主なメリットを3つ紹介します。

  1. 経費精算の自動化、承認フローの簡素化
  2. 検索性向上、保管スペース削減
  3. コスト削減効果

1.経費精算の自動化、承認フローの簡素化

経費精算システムと連携することで、電子領収証のデータは自動でシステムに取り込まれ、申請・承認作業もオンラインで完結します。従来のような手入力作業や書類の回覧が必要ないため、担当者の負担を大幅に軽減できます。

2.検索性向上、保管スペース削減

電子データのため、膨大な量の領収証もシステム上で一元管理できます。必要な時にキーワード検索で瞬時に探し出すことが可能です。また、保管スペースも不要となるため、オフィス環境の改善にもつながります。

3.コスト削減効果

収入印紙が不要になるうえ、印刷費や郵送費、保管スペースの賃料など、紙の領収証にかかっていたコストを大幅に削減できます。

電子化によるリスク削減

電子領収証の導入は、以下のようなセキュリティー面の強化にもつながります

紛失防止、改ざん・偽造防止

電子データは、システム上で厳重に管理されるため、紛失のリスクがありません。また、タイムスタンプや電子署名などの技術を用いることで、改ざんや偽造を防止できます。

コンプライアンス強化、監査対応の効率化

電子帳簿保存法に準拠したシステムを導入することで、法令遵守を徹底できます。また、監査時には必要なデータを速やかに提出することができ、監査対応の負担軽減にもつながります。

電子領収証の発行方法

電子領収証の導入を検討する際、気になるのが発行方法です。ここでは自社で簡単に導入できる方法から、より本格的なシステム導入まで、具体的な方法をご紹介します。

PDFで作成する

最も手軽に電子領収証を作成する方法が、PDFファイルを活用する方法です。必要な情報を入力し、電子署名を加えることで、法的にも有効な電子領収証を作成できます。

必要なもの

  • PC
  • PDF作成ソフト(Adobe Acrobatなど)

作成手順

  1. PDF作成ソフトで新規ファイルを作成し、領収証に必要な項目(発行日、宛名、金額、但し書きなど)を入力します。
  2. 電子署名用のソフトウエアまたはサービスを使用して、作成したPDFファイルに電子署名を追加します。電子署名は、作成者の身元を証明し、文書の改ざんを防止する役割を担います。
  3. 電子署名を追加したPDFファイルを、メールやオンラインストレージなどを利用して、取引先に送付します。

メリット

  • 特別なシステムを導入する必要がなく、低コストで始められる
  • 既存の業務フローに大きな変更を加えずに導入できる

デメリット

  • 電子帳簿保存法に関する知識が必要
  • 証憑データの一元管理や検索機能などは利用できない

電子領収証発行システムを利用する

本格的に電子領収証を運用したい場合は、専用のシステム(サービス)導入を検討しましょう。これらのシステムは電子領収証の作成から送付、保管、管理までを一元化し、業務効率を飛躍的に向上させてくれます。

電子領収証発行システムの種類と特徴

  • クラウド型:インターネットに接続できる環境があれば、どこでも利用可能。導入費用が比較的安価で、短期間で導入できるケースが多い。
  • オンプレミス型:自社のサーバーにシステムを構築する必要があるため、導入費用は高額になりがちだが、セキュリティーレベルの高い運用が可能。

システム選びのポイント

  • コスト:初期費用や月額費用、取引件数に応じた従量課金制など、自社の予算や規模に合わせて検討する
  • 機能:電子署名、タイムスタンプ、データ保管、検索機能など、必要な機能が備わっているかを確認する
  • 操作性:システムの操作性やサポート体制も重要な選定ポイント

メリット

  • 電子帳簿保存法に完全対応しているため、安心して利用できる
  • 経費精算システムとの連携機能により、さらなる業務効率化が期待できる
  • 証憑データの一元管理、検索機能の利用などにより、管理業務を効率化できる

デメリット

  • 導入費用やランニングコストがかかる
  • 既存の業務フローを見直し、システムに合わせた運用が必要となる場合がある

まとめ

今回は領収証の基礎知識から、電子化の重要性まで解説しました。手書き領収証は、記載ミスや紛失のリスク、保管スペースの確保、経費精算の非効率性など、多くの課題を抱えています。また、改ざんや偽造など、不正利用のリスクも懸念されます。

これらの課題を解決するのが、電子領収証です。電子化によって、業務効率化やコスト削減、コンプライアンス強化、不正リスク抑制など、多くのメリットが期待できるでしょう。

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「月次決算に役立つ情報」編集部

執筆・編集

「月次決算に役立つ情報」編集部

Bill Oneが運営する「月次決算に役立つ情報」の編集部です。請求書業務全般の課題や法対応など、経理課題の解決に導く情報をお届けします。
小野 智博

記事監修者のご紹介

弁護士 小野 智博

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士

保有資格:弁護士

慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

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