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OCRで請求書の処理を効率化|導入メリットと注意点を解説
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「請求書処理の業務を効率化したい」「OCRの導入が自社に適しているかどうかを知りたい」といった悩みを抱えていないでしょうか。
請求書の処理は慎重に管理することが求められ、特に手動でのデータ入力や確認作業には時間と労力がかかります。OCRを導入すれば、請求書のデータを正確に読み込み、処理を自動化することが可能です。
この記事では、請求書処理にOCRを活用するメリットや注意点、OCRツールの選定ポイントなどを解説します。
OCRとは
OCR(Optical Character Recognition)は、日本語の「光学文字認識」を意味し、紙や画像の文字をデジタルデータに変換する技術です。
OCR機能を備えたツールを活用すれば、請求書処理にスキャンした請求書の文字や数字を変換し、テキストデータとして取り扱えるようになります。
技術の発展とともにOCR市場は拡大しており、OCRを導入して請求書の読み取り作業を自動化する企業が増えています。
請求書をデータ化する主な方法
請求書をデータ化する方法として以下の3つを紹介します。
- 手入力
- スキャナーで取り込む
- OCR
1.手入力
手入力は、紙の請求書の内容をExcelや自社システムに手動で入力します。
この方法は初期投資が不要で、手書きで書かれた文字に対応しやすく、独自フォーマットで柔軟に整理できるといったメリットがあります。
一方で、作業に多くの時間と労力がかかります。大量の請求書を処理する必要がある場合、多くの作業時間が必要となります。また、入力ミスが発生しやすく、後の会計処理や税務申告に影響を及ぼす可能性があります。
2.スキャナーで取り込む
スキャナーでの取り込みは、紙の請求書や領収書を専用スキャナーや多機能プリンターでスキャンし画像として保存する方法です。
手入力やOCRとは違い、スキャナーでの取り込みでは書かれている文字の内容を識別せず、単に画像として保存するものです。
この方法のメリットは、請求書の電子保管が可能になり、物理的な保管スペースを削減できることです。また、画像化された請求書は簡単に共有でき、必要時にすぐに参照できます。
しかしスキャナーで取り込んだデータは、テキストデータに変換されないためテキストとしての編集や検索ができないほか、電子帳簿保存法に準拠するためにタイムスタンプの付与など追加の対応が必要があります。
3.OCR
最も効率的に請求書をデータ化する方法が、OCRを活用する方法です。先述したとおり、OCRは紙や画像ファイルに書かれた文字をデジタルデータに変換する技術で、スキャンした請求書の画像から自動的に文字や数字を認識し、編集可能なテキストデータに変換することができます。
OCRを使用すれば、読み込んだデータがテキストデータに変換されるため、データ入力の時間を大幅に短縮できる上、手入力による人的なエラーも減らすことができます。
OCRで請求書をデータ化する5つのメリット
OCRを利用して請求書をデータ化すると、以下のようなメリットがあります。
- 業務工数が少なくなる
- 人的コストの削減につながる
- 会計ソフトなどの外部システムと連携できる
- 物理的な保管スペースが不要になる
- 紙の削減で環境対策に寄与できる
1.業務工数が少なくなる
請求書の処理業務にOCRを導入すると請求書のデータ化が自動化されるため、業務工数が少なくなります。
その結果、担当者の負担が大幅に軽減されるだけでなく、担当者は他の重要な業務にリソースを割けるようになります。
業務工数の削減によって、全体的な業務効率が向上し、企業の生産性も高まります。
2.人的コストの削減につながる
請求書の処理業務は、細かな確認や集計作業など多くの時間が必要とされるため、請求書処理が集中する月末月初は残業代が発生することも珍しくありません。
OCRを活用することで請求書のデータ化が自動化されるため、作業時間を大幅に短縮できます。その結果、残業時間の減少とともに人的コストの削減が実現します。
3.会計ソフトなどの外部システムと連携できる
OCRでデータ化された請求書や領収書は、会計ソフトなどの外部システムと連携することで、処理や管理がより効率的に行えるようになります。
例えば、請求書をOCRでデータ化し、会計ソフトと連動させると、データの自動入力および自動仕訳が可能となり、業務をより効率化できます。また、請求書管理システムと連携させれば、支払期日の管理や承認フローの自動化が可能になります。
4.物理的な保管スペースが不要になる
請求書は、受け取る側と発行する側の双方に保存が求められる文書です。書類を印刷して紙で保存する場合は、保管場所の確保が必要です。OCRで請求書をデータ化すれば、電子データのまま保存できるため、保管場所の有効活用や、保管コストの削減につながります。
また、請求書をデータ化することで検索性が向上し、過去の請求書を簡単に検索できるようになるため、監査対応や取引履歴の確認が迅速化します。
5.紙の削減でSDGsへの貢献ができる
OCRによる請求書のデータ化は、紙の使用量を大幅に削減し、SDGsへの貢献もできます。これは、コスト削減以上の意味を持ち、企業の社会的責任(CSR)を果たす重要な取り組みとなります。
企業に対する環境への配慮が求められる昨今、OCR技術の導入は、環境対策を推進する企業としてのイメージ向上にもつながります。
OCRで請求書をデータ化する流れ
OCRで請求書をデータ化する際の一般的な流れを紹介します。
- OCRで請求書ファイルを読み込む
- 読み込んだデータ内容の修正・確認
- 請求書のデータを書き出す
- 会計システムなどへのデータ連携
- データの保存とバックアップ
1.OCRで請求書ファイルを読み込む
まずは読み取りたい請求書をOCRでスキャンしましょう。
大量の請求書をスキャンする際には、あらかじめ送信先フォルダを指定し、ファイル名を設定しておくと管理が効率的に行えます。
2.読み込んだデータ内容の修正・確認
次にOCRで読み込んだ請求書データを確認し、正しく読み込めていない部分については修正を行います。
OCRの認識精度は改善され続けていますが、完璧ではありません。したがって、確認や修正が必要です。
3.請求書のデータを書き出す
OCRで読み込んだ請求書データの修正・確認が終わったら、請求書データの書き出しを行います。
テキストファイルやPDFなど任意の形式を選び、書き出し先のフォルダへファイル名を指定して保存しましょう。
4.会計システムなどへのデータ連携
書き出した請求書データを会計ソフトやERPシステムなど、他の管理システムと連携します。
データの自動インポートを設定しておけば、毎回の手動操作が省略でき、データの取り込みがスムーズに行えて便利です。
5.データの保存とバックアップ
請求書をOCRでデータ化した後は、データの保存とバックアップが非常に重要です。
クラウドストレージや外部ハードディスクを使って定期的なバックアップを実施することで、データの紛失や破損に備えましょう。
請求書に適したOCRツールの5つの選定ポイント
請求書処理に適したOCRツールを選ぶ際に役立つ5つのポイントを紹介します。
- 効率化したい業務に合ったツールを選ぶ
- 認識精度にこだわる
- 費用対効果を検証する
- 連携したいツールとの互換性を確認する
- オペレーターによるチェックの有無を確認する
1.効率化したい業務に合ったツールを選ぶ
請求書業務にOCRを導入する場合は、効率化したい業務や自動化したい業務に合ったツールを選ぶことが重要です。
例えば、データ入力の効率化を重視する場合は、高精度なOCRエンジンを持つツールが適しています。仕訳作成の自動化を目指すなら、AIによる自動仕訳機能を備えたツールが効果的でしょう。また、承認プロセスの簡素化が課題であれば、充実したワークフロー機能を持つツールを選択することで、大幅な改善が期待できます。
自社の業務フローを分析し、最も効果が高いツールを選ぶことで、業務の効率化につながります。
2.認識精度にこだわる
OCRツールは製品によって文字認識の正確性に差があるため、認識精度の高いツールを選ぶことが重要です。
手書き文字や特殊フォントへの対応など、高い認識精度を持つツールを使用することで手動での修正作業が少なくなり、業務効率の向上が期待できます。
3.費用対効果を検証する
必要な機能が定まったら、導入コストと期待される業務効率化の効果を比較検討しましょう。
小規模企業の場合は無料のツールで対応できることもありますが、一般的に企業向けのOCRツールは初期導入費に加えてライセンス費や月額利用料といった費用が発生します。
コストと見込まれる効果を比較検討し、自社のニーズに最適なツールを選ぶようにしましょう。
4.会計ソフトなどと連携できるかを確認する
請求書業務に適したOCRツールを選ぶ際は、会計ソフトなどと連携できるかもあわせて確認しましょう。
システム連携が適切に行われることでデータの一元管理が可能となり、運用の効率化が図れます。そのため、データ形式やAPI連携の要件、システム構成などツールが適切に連携できるかどうかを事前に検証しておく必要があります。
5.オペレーターによるチェックの有無を確認する
OCR技術を用いたデータ化は、完全な正確性が保証されているわけではないためデータを目視で確認する必要があります。ツールによっては、オペレーターがデータ化された請求書をチェックするサービスもあるので、必要に応じてサービス内容を確認しましょう。
オペレーターによるチェックが加わることで、OCRでの認識エラーが修正され、より精度の高いデータを得ることができます。
請求書読み取りでOCRツールを利用する際の注意点
OCRツールで請求書を読み取る際に注意すべきポイントを4つ紹介します。
- 手書きの文字や特殊文字は読み込めない可能性がある
- 目視による確認をする
- 会計システムや業務管理ソフトとの連携を確認する
- 電子帳簿保存法に対応しているか確認する
各ポイントを詳しくみていきましょう。
1.手書きの文字や特殊文字は読み込めない可能性がある
OCRツールの多くは文字の読み取りに優れていますが、手書きの文字や特殊文字の場合、正確に認識されないことがあります。これらの要素を含む書類を扱う場合は、手動での確認が不可欠です。
手書き文字や特殊文字が含まれる請求書は、データ修正が必要となることを考慮してOCRを導入するとよいでしょう。
2.目視による確認をする
OCRを使用して請求書を読み取る際は、目視による確認が必要です。
請求書処理において、金額や数量、日付などの数値データは特に重要であり、誤りがあると大きな問題になります。
目視確認によって、これらの重要な情報が正しく読み取られているかを確認し、必要に応じて手動で修正を行いましょう。
3.会計システムや業務管理ソフトとの連携を確認する
OCRツールで請求書を読み取る際は、会計システムや業務管理ソフトとの連携を忘れずに確認しましょう。
OCRツールで読み込んだ請求書データが自動的に会計システム・業務管理ソフトに取り込まれることで、業務プロセスがスムーズに進行します。そのため、データ転送の自動化設定やエラー処理の方法などをできる範囲で事前に確認、検証しましょう。
4.電子帳簿保存法に対応しているか確認する
電子帳簿保存法に対応しているOCRツールを使用することは、法令遵守の観点から極めて重要です。
電子帳簿保存法は、請求書の保存方法やデータの取り扱いに関する規制を定めており、適切なツールを使用しないと法令違反となる可能性があります。画像品質や検索機能、改ざん防止措置などの要件を満たしているかを確認しましょう。
まとめ
この記事では、請求書処理におけるOCR活用のメリットや注意点、OCRツールの選定ポイントについて解説しました。
請求書処理においてOCRによるデータ読み取りが正確でないと、後の財務処理に影響が及ぶため、OCRのデータ化の精度は非常に重要です。しかし、機械による読み取りには限界があるのも事実です。
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部
記事監修者のご紹介
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
保有資格:弁護士
慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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