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経費精算で請求書は使える?領収書の代わりに使用できるケースと注意点

経費精算で請求書は使える?領収書の代わりに使用できるケースと注意点

経費を会計処理で計上する際には、出費を裏付ける書類が必要です。通常、領収書がその証憑書類となりますが、領収書を紛失した場合や発行されなかった場合、特定の条件を満たすことで請求書を代替として利用できるケースがあります。

ただし、請求書を経費精算に使用する際には、注意点がいくつかあるため、把握しておく必要があります。

本記事では、経費精算で請求書を領収書の代わりに使用するための条件や、請求書と領収書の違い、請求書を経費精算に使う時の注意点について解説します。

請求書は経費精算に使える?

原則として、請求書は経費精算に使用できませんが、特定の条件を満たすことで領収書の代わりに請求書を使用できます。

まずは、請求書と領収書の違いと、請求書を領収書の代替として使えるケースを確認していきましょう。

請求書と領収書の違い

請求書と領収書は、商品やサービスの取引において重要な役割を果たす書類です。それぞれ、発行する目的やタイミング、法的な義務の有無に違いがあります。

請求書と領収書の違いは、以下の通りです。

請求書

領収書

目的

代金の支払いを求めるため

代金の受け取りを証明するため

発行のタイミング

代金支払い前

代金支払い後

法的な義務・権利

ない

領収書の発行を請求する権利(民法486条)

請求書は、商品やサービスの提供前に代金の支払いを求めるために発行されます。一方、領収書は、商品やサービスの代金支払いが完了した後に発行される書類であり、買い手が支払った内容を証明するための書類です。

なお、請求書には法的な発行義務はなく、領収書については、民法486条(受取証書の交付請求)で発行を請求する権利が認められています。

請求書を領収書の代替として使えるケース

請求書は支払い前に発行される書類であり、支払い内容を証明するものではないため、通常は経費精算に使用できません。しかし、以下のケースでは請求書を領収書の代わりとして使用することができます。

銀行振込・クレジットカード払いの場合

インターネットショッピングや銀行引き落としなど、店舗以外での取引では、領収書が発行されないケースがあります。この場合、「請求書」と「明細書」があれば、経費精算に使用できます。明細書には、書類の発行者・受領者・日付・金額・支払内容が記載されていることが必須です。

ただし、飲食店の支払いをクレジットカードで行う場合など、請求書なしで代金を支払う場合には、領収書が必要です。領収書は、日付・領収金額・取引内容が記載されたレシートでも代用できます。

「請求書兼領収書」が発行される場合

支払い済みであることが明記された請求書は、経費精算における領収書の代わりとして使用できます。

例えば、「代済」「相済」「了」など、支払いが完了したことを示す記載がある請求書や、お買上票が金銭の受領を証明する場合は、経費精算の対象となります。

また、請求と領収が同時に行われる場合に発行される「請求書兼領収書」も経費精算に利用できます。ただし、企業間の取引で請求と領収が同時に行われることは極めてまれです。

適格請求書の要件を満たしている場合

2023年10月からスタートしたインボイス制度により、適格請求書(インボイス)または適格簡易請求書(簡易インボイス)が必要となりました。インボイス制度とは、複数の税率に対応した消費税の仕入税額控除方法であり、適格請求書は売り手から買い手に対し、正確な適用税率や消費税額を含む情報を提供するための書類です。

適格請求書には、次の項目が記載されている必要があります。

【適格請求書の記載事項】

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 交付を受ける事業者の氏名又は名称

出典: 国税庁|「適格請求書等保存方式 の概要」

請求書以外でも、領収書やレシートが適格請求書の要件を満たしていれば、仕入税額控除が適用されます。

なお、適格請求書の内容の一部を省略した「適格簡易請求書(簡易インボイス)」が発行される場合もあります。適格請求書では買い手の氏名や名称が必要ですが、適格簡易請求書では不要です。また、適格請求書は適用税率と消費税額の両方が必要ですが、適格簡易請求書はどちらか一方の記載が条件となります。

請求書を経費精算に使う時の注意点

領収書の代替として請求書を利用する場合、いくつか留意すべき点があります。ここでは、請求書を経費精算に使う時の3つの注意点を解説します。

収入印紙が必要なケースがある

支払総額が5万円以上の金銭や有価証券の受け取りに関する領収書には、収入印紙を貼り付ける義務があります。請求書を領収書の代わりに使用する場合も同様に、支払総額が5万円以上であれば、収入印紙を貼り付けて印紙税を納付しなければなりません

なお、電子請求書として発行し、紙に印刷せず領収書の代わりに使用する場合は、収入印紙の貼り付けは不要です。ただし、印刷した時点で収入印紙が必要となる点には注意しましょう。

店舗で領収書が発行された場合は請求書を使用できない

クレジットカード払いの場合、請求書と明細書がそろっていれば経費精算に使用できます。ただし、店舗にてクレジットカードで買い物をして領収書が発行された場合には、請求書・明細書を領収証の代わりとして使うことはできません。

領収書が発行された場合は、その領収書を経費精算の際に使用する必要があるため、必ず受け取るようにしましょう。

7年間保管しなければならない

請求書と領収書には法律により保管義務が課せられており、請求書は原則として7年間の保管が義務付けられています。領収書については、青色申告の場合は7年間、白色申告の場合は5年間の保管が求められます。

保管期間は「確定申告期限の翌日」から計算されるため、注意が必要です。事業年度に合わせて、指定期間分を保管しましょう。保管義務に違反した場合、税務署が調査を行った際にトラブルに発展する可能性があるため、厳守することが重要です。

まとめ

請求書は代金の支払いを求めるための書類であり、通常は経費精算に使用することはできません。ただし、特定の条件を満たすことで、請求書を領収書の代わりに使用できる場合があります。

請求書を経費精算に使う際には、収入印紙の必要性や7年間の保管義務など注意点があり、経理担当者の請求書や領収書の管理は煩雑になりがちです。

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「月次決算に役立つ情報」編集部

執筆・編集

「月次決算に役立つ情報」編集部

Bill Oneが運営する「月次決算に役立つ情報」の編集部です。請求書業務全般の課題や法対応など、経理課題の解決に導く情報をお届けします。
小野 智博

記事監修者のご紹介

弁護士 小野 智博

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士

保有資格:弁護士

慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

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