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領収書の保管期間は何年?電子データで保存する場合のメリットや注意点を解説
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「領収書の保存期間は何年間なのか」
そんな疑問を持っている経理担当者様は少なくありません。特に明確な期間を意識せず、なんとなく領収書を保管しているという方もいるかもしれません。
領収書の保管期間は、法律によって明確に決められています。不十分な理解や適切でない管理を行うと、予期しないペナルティーを受ける可能性があるため、十分に注意する必要があります。
この記事では、法人における領収書の保管期間と、保管期間を守りつつ効率的な管理を行う方法を解説します。
領収書の電子保存に対応!経費精算システム
領収書に保管期間があるのはなぜ?
領収書は、適正な経費の証明として、税務調査などで会社の正当性を主張するための重要な証拠となる書類です。
もし領収書をきちんと保管していなかった場合、経費としての支出を証明できず、税務署から否認される恐れがあります。その結果として追徴課税が発生する可能性がありますので、領収書の管理は重要です。
領収書の保管は、会社の信頼性、そして経営を守るための重要な義務です。
領収書の保管期間はどれくらい?
領収書の保管期間は法律で定められています。
保管期間は原則「7年」
法人の領収書の保管期間は、原則として7年です。
ただし、これは領収書の日付から7年ではありません。国税庁によると「その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間」が保存期間とされています。
たとえば12月決算の会社の場合、確定申告書の提出期限は翌年の2月末です。この場合、2024年分の領収書は、2025年3月1日から7年間、つまり2032年2月29日まで保管する必要があります。
10年以上前までは、中小企業の領収書の保管期間は5年でしたが、2014年1月1日以降に始まる事業年度からは、保管期間が7年へと延長されました。
参照:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間」
保存期間は最大「10年」に
欠損金額が発生した事業年度に青色申告書を提出した法人は、領収書を最大10年間保管しなければなりません。
これは「繰越欠損金控除制度」に関係しています。繰越欠損金控除制度とは、企業が赤字を出した場合に、その赤字(欠損金)を翌年以降に繰り越して、黒字と相殺できるというものです。
赤字は10年間繰り越すことができますが、赤字が発生した証拠として、事業年度の領収書を10年間保管しておく必要があるのです。
たとえば、2023年に赤字を出した企業が2033年に黒字転換し、この繰越欠損金を控除して税金を減らしたい場合、2023年の赤字を証明するための領収書が必要になります。
繰越欠損金の控除を受ける予定がある場合や、その可能性がある場合、領収書は必ず10年間保管しておかなくてはなりません。
参照:国税庁「No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」
領収書を電子化した場合の保存期間
電子帳簿保存法の要件を満たせば、スキャンした領収書を電子データとして保管できます。この場合も、保管期間は紙媒体の場合と変わりません。
また、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、定期的な検査を行う必要がなくなりましたので、令和4年1月1日以降に保存を行う領収書については、スキャナーで読み取り、折れ曲がり等がないかの同等確認を行った後であれば、書面(紙)の領収書は即時に廃棄することとして差し支えありません。
国税関係書類の書面破棄に関する要件
なお、電子帳簿保存法一問一答問3には以下のように記載されています。
『令和3年度の税制改正において、適正事務処理要件(旧規則第3条第5項第4号。紙段階での改ざん等を防止するための仕組み)の規定が廃止され、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、定期的な検査を行う必要がなくなりました。そのため、スキャナーで読み取り、折れ曲がり等がないか等の同等確認を行った後であれば、国税関係書類の書面(紙)は即時に廃棄することとして差し支えありません。』
引用元:国税庁「電子帳簿保存法一問一答 【スキャナ保存関係】」(2024)
上記記載の通り、条件を満たす場合には書面の破棄も可能となりましたが、顧問税理士がいる場合は相談し判断するようにしましょう。
領収書の保管期間が守られないとどうなる?
領収書の保管期間がきちんと守られなかった場合、その企業にはさまざまなリスクが待ち受けています。
青色申告の承認取り消し
青色申告をしている企業の場合、帳簿や書類(領収書など)の不備が見つかると「青色申告の要件を満たしていない」と判断され、青色申告の承認を取り消される可能性があります。
青色申告の承認が取り消されると、最大65万円の特別控除が受けられなくなるだけでなく、簡易な帳簿付けや赤字の繰り越しといったメリットも失われてしまいます。
参照:国税庁「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」
推計課税の対象になる
領収書や帳簿書類を適切に保管していないと、税務調査で金額や取引を証明できる資料を提出できません。このような場合は推計課税という方法で課税される可能性があります。
推計課税では、法人の財産や債務の増減、収入・支出の状況などに応じて税額を推計します。ただし客観的な証拠がないため、実際の所得よりも多く見積もられ、納税額が大幅に増える可能性も少なくありません。
たとえ悪意がなく、うっかり領収書を紛失してしまった場合などでも、推計課税の対象となる可能性があるため注意が必要です。
追徴課税の対象になることも
推計課税の対象になり、納税額が増えた場合、企業が以前に申告・納税した金額との差額を補填しなければなりません。これが追徴課税です。
ただし場合によっては、差額以外にも「延滞税」「利子税」「過少申告加算税」「無申告加算税」などが課されることがあります。
特に、意図的に領収書を破棄したり、偽造するなどの悪質なケースでは「重加算税」という追徴課税の対象になる可能性がありますが、この場合の税率は35%または40%という、大変重いものとなります。
また悪意がなくても、領収書の紛失や保管期間の誤解などにより、結果的に過少申告とみなされるケースもあります。
うっかりミスであっても、多額の追徴課税を課される可能性があるため注意が必要です。
領収書はどうやって保管すればいい?
領収書の保管方法は、大きく分けて「紙媒体」と「電子データ」の2種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社に合った方法を選びましょう。
紙媒体で保管するメリット
領収書を紙媒体で保管するメリットは以下の2つです。
- 特別なシステムや設備が不要
- 原本を直接確認できる安心感
1.特別なシステムや設備が不要
紙媒体での保管は、特別なシステムや設備を必要としません。慣れ親しんだ方法であるという点がメリットです。
2.原本を直接確認できる安心感
紙媒体であれば原本を自分の目で直接確認できるため、安心感があります。
紙媒体で保管するデメリット
紙媒体による領収書の保管にはメリットがある一方、以下のようなデメリットもあります。
- 保管スペースが必要
- 検索性が低い
- 共有ができないため非効率
- 紛失・破損のリスクがある
それぞれについて解説します。
1.保管スペースが必要
紙媒体での保管は、長期間にわたるため、保管スペースが必要になります。領収書が増えるほど、場所を取り、管理が大変になるというデメリットがあります。
2.検索性が低い
紙媒体の場合、必要な領収書を探すのに手間がかかります。大量の領収書の中から特定のものを探し出すのは、非常に時間がかかる作業です。
3.共有ができないため非効率
紙媒体は、関係者間での回覧や共有が難しいため、非効率です。
たとえば、領収書の承認を得るために、その都度担当者に書類を回覧する必要があるなど、手間がかかります。
4.紛失・破損のリスクがある
紙媒体は災害や経年劣化によるダメージを受けやすく、紛失や破損のリスクがあります。また、誤って廃棄してしまう可能性もあるため、注意が必要です。
電子データで保管するメリット
領収書を電子データで保管する場合、以下の4つのメリットがあります。
- 保管スペースが削減できる
- 検索性が向上する
- すぐにデータで共有できる
- 災害時にも安全
それぞれについて解説します。
1.保管スペースが削減できる
電子データは場所を取らないため、大量の領収書でも効率的に保管できます。オフィススペースの有効活用にもつながり、コスト削減にも貢献します。
2.検索性が向上する
電子データの場合、キーワード検索などで必要な領収書をすぐに探し出すことができます。大量の領収書の中からでも、目的のものを簡単に見つけられるため、業務効率が大幅に向上します。
3.すぐにデータで共有できる
電子データは、簡単に共有できるため、業務の効率化につながります。たとえば、承認のために領収書をスキャンしてメールで送るなど、ペーパーレス化を進めることができます。
4.災害時にも安全
電子データは、火災や水害などの災害時にも安全です。バックアップを適切に取っておけば、万が一の事態でもデータが失われる心配がありません。
電子データで保管する注意点
電子データによる領収書の保管はメリットが多くありますが、いくつかの注意点もあります。
- 電子帳簿保存法への対応
- システム導入・運用コストがかかる
- セキュリティー対策が必要
それぞれについて解説します。
1.電子帳簿保存法への対応
電子データで領収書を保管する場合、電子帳簿保存法の要件を満たしたシステムを導入する必要があります。
2.システム導入・運用コストがかかる
電子化には、スキャナーなどの初期費用や、システム利用料が発生する場合があります。導入前に、コストをしっかりと確認しておく必要があります。
3.セキュリティー対策が必要
電子データは、情報漏えいのリスクがあるため、適切なセキュリティー対策が必要です。データの暗号化やアクセス制限など、セキュリティー対策を徹底することが重要です。
領収書管理サービスを利用するメリット
領収書の電子化や保管は、自社で行うことも可能ですが、領収書管理サービスを利用することで、上に挙げた注意点に適切に対応できるなどのメリットが得られます。
- 電子帳簿保存法への対応
- 強固なセキュリティー対策
- 導入・運用コストを抑えられる
- 業務効率化に役立つ機能を備えている
- コンプライアンスが強化される
1. 電子帳簿保存法に対応
領収書管理サービスは、電子帳簿保存法に対応しています。
電子帳簿保存法は頻繁に改正されるため、その都度自社でシステムをアップデートしなければなりません。しかし、法制度に対応したシステムを利用すればシステム側が法改正に対応してくれるケースもあるため、安心して利用できます。
2. 強固なセキュリティー対策
領収書には、顧客情報や取引先情報など、重要な情報が含まれています。
領収書管理サービスは、データの暗号化やアクセス制限など、強固なセキュリティー対策が施されているため、安心して領収書を保管できます。
3. 導入・運用コストを抑えられる
自社でシステムを構築・運用する場合、初期費用やランニングコストがかかります。
もちろん領収書管理サービスにも利用料金が発生しますが、自社でシステムを構築・運用するよりも低コストで済むケースがほとんどです。
スキャナーなどの設備投資や、システムの維持管理・バージョンアップ費用も不要になる場合が多く、トータルでのコスト削減につながります。
4. 業務効率化に役立つ機能を備えている
領収書管理サービスには、業務効率化に役立つさまざまな機能が備わっています。
たとえばOCRによる自動読み取りは、手入力の手間を省き、領収書の内容を簡単にデータ化できる機能です。
また、キーワード検索や日付・金額での絞り込みなど、検索機能が充実しているため、必要な領収書をすぐに見つけられます。
会計ソフトや経費精算システムとのデータ連携も可能なため、業務フローを効率化できます。
5. コンプライアンスが強化される
領収書管理サービスは、企業のコンプライアンス強化に貢献します。申請や承認の履歴がシステムに正確に記録されるため、不正な経費申請の抑止効果が期待できるでしょう。
また、あらかじめ設定した社内規定と申請内容を、システムが自動で照合します。この機能により、規定違反の申請を未然に防いだり、チェック作業の負担を軽減したりする効果が見込めます。
領収書管理サービスの導入までの流れ

領収書管理サービスの導入は、以下の流れで導入しましょう。
- 現状把握と要件定義
- 情報収集と比較検討
- 領収書管理サービスをトライアルする
- 本格導入する
- 社内への周知とトレーニング
1. 現状把握と要件定義
まずは、現在の領収書の管理方法を詳細にリストアップし、どのような課題があるのかを洗い出します。たとえば、「紙の領収書が多く処理に時間がかかる」「申請ミスや不正が起こりやすい」といった点が挙げられるでしょう。
これらの課題を踏まえ、サービス導入によって何を実現したいのか、具体的な目標を設定します。目標が定まれば、必要な機能もおのずと見えてくるでしょう。承認フローの設定機能や予算の上限、利用する従業員数など、具体的な要件を固めていきます。この段階でしっかりと要件定義を行うと、サービス選定がスムーズに進みます。
2. 情報収集と比較検討
次に、設定した要件を満たす領収書管理サービスを探すため、情報収集と比較検討を行います。情報収集は、インターネットでサービスのWebサイトを確認したり、業界の展示会で直接説明を聞いたりするのも有効です。
気になるサービスが見つかったら、資料請求や無料説明会へ参加して、より詳細な情報を得ましょう。複数のサービスをリストアップし、それぞれの機能や料金プラン、セキュリティー対策などを比較表にまとめるのがおすすめです。この比較検討を通じて、自社の要件に合致し、トライアルに進むサービスを数社に絞り込みます。
3. 領収書管理サービスをトライアルする
候補を絞り込んだら、実際の画面を見せてもらうなどして、使用感を確認します。実際にサービスに触れることで、資料だけでは分からなかった操作性や設定方法を具体的に体験できます。あわせて、自社の業務フローに適合するかを見極めましょう。
また事前に設定した導入目的を達成できるかも確認しましょう。たとえば、特定の承認フローが問題なく設定できるか、会計ソフトとの連携はスムーズかなどです。これらの検証結果を基に、最終的に契約する1社を選定します。
4. 本格導入する
導入する領収書管理サービスが決定したら、サービス提供事業者と契約を締結し、本格的な導入へと進みます。基本的に初期設定や既存の会計ソフトとの連携作業が必要です。これらの作業は、カスタマーサポートを活用しながら進めると、円滑に進められます。
また、新しいシステムの導入に伴い、既存の経費精算に関するルールを見直しましょう。新しい運用方法に合わせてルールを整備し、従業員が混乱しないように準備を進めます。
5. 社内への周知とトレーニング
新しい領収書管理サービスをスムーズに社内に浸透させるためには、従業員への丁寧な周知とトレーニングが不可欠です。従業員には導入目的や新しい経費精算のルール、そして具体的なサービスの使い方を説明します。
また誰でも操作方法を確認できるよう、マニュアルを作成することも有効です。必要に応じて、操作トレーニングの機会を設けるなど、従業員が新しいシステムに慣れるためのサポート体制を整えましょう。
6. 効果測定と改善
領収書管理サービスを導入した後も、それで終わりではありません。導入によって当初の目的が達成されたか、業務フローに新たな問題が発生していないかなどを定期的に確認し、効果測定を行います。従業員からのフィードバックを積極的に収集すると、実態把握に有効です。
効果測定の結果、改善すべき点が見つかった場合は、速やかに運用を見直します。このようなサイクルを回すことで、サービスの利用価値を最大限に引き出せます。
まとめ
領収書の保存期間は、最大10年間です。また領収書を適切に保管しないと、税務調査で経費が認められなかったり、ペナルティーを受けたりといったリスクが発生します。効率的な管理のためにも、領収書を適切な形で管理できるサービスの導入がおすすめです。
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記事監修者のご紹介
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
保有資格:弁護士
慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部


