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ペーパーレス化でSDGs経営を加速|環境・社会・経済への貢献と導入のポイント
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SDGs経営の重要性が高まる中、ペーパーレス化は環境保護だけでなく、社会や経済面でも大きな貢献が期待できます。特に経理部門でのペーパーレス化は、業務効率化やワークライフバランスの向上など、多面的な効果をもたらします。
本記事では、ペーパーレス化とSDGsの関係、具体的なメリット、そして効果的な導入方法を詳しく解説します。
ペーパーレス化とSDGsの関係性
ここでは、ペーパーレス化がSDGsの目標達成にどのように貢献するか、その関連性を解説します。
SDGs経営とは
SDGsの理念を企業経営に取り入れ、持続可能な社会と事業成長を目指す経営手法です。これにより、企業は環境や社会への責任を果たしながら、長期的なビジネスの安定と成長を図ることができます。
さらに、ステークホルダーとの信頼関係を深め、ブランド価値を向上させることも可能です。持続可能なビジネスモデルを構築することで、企業は市場競争力を強化し、未来の課題に柔軟に対応することができます。
ペーパーレス化がSDGsに貢献する理由
紙の使用を削減することで森林の伐採を抑制し、地球の生態系保護に寄与しています。森林は二酸化炭素の吸収源であり、気候変動の緩和に重要な役割を果たしています。
次に、紙の製造過程で大量の水やエネルギーが消費され、温室効果ガスが排出されますが、ペーパーレス化によりこれらの資源の使用が大幅に減少します。
さらに、紙の廃棄物が減ることで、廃棄物処理にかかる環境負荷も軽減され、持続可能な資源管理が推進されるでしょう。ペーパーレス化は、企業のコスト削減にもつながり、効率的な業務運営が可能となるため、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」にも貢献してます。
日本社会におけるSDGsの定着
日本社会におけるSDGsの定着は、企業、政府、教育機関、市民の協力によって徐々に進展しています。特に企業においては、SDGsを経営戦略に組み込む動きが加速しており、持続可能なビジネスモデルの構築が求められています。
政府もまた、政策や補助金を通じて、企業や地方自治体のSDGsへの取り組みを支援しています。教育分野では、SDGsに関する教育プログラムが小学校から大学まで幅広く導入され、次世代のリーダー育成が進められています。
さらに、メディアやSNSを通じた情報発信がSDGsの認知度向上に貢献しており、市民の間でも持続可能な社会づくりへの関心が高まっています。これらの要因が相まって、日本社会におけるSDGsの定着は着実に進んでいます。
SDGsの高い認知度
2023年6月の電通による調査によると、SDGsの認知度は91.4%に達し、日本社会ではかなり浸透しています。企業のSDGs取り組みに対する好印象も増加傾向にあります。
電通「第6回SDGsに関する生活者調査」
企業によるSDGs取り組みの現状
三菱UFJ リサーチ&コンサルティングの2023年の調査によると、上場企業の80%がSDGs達成に向けた取り組みを行っており、17%が検討中です。中小企業でも、40%が取り組み中で、40%が検討中となっています。
三菱UFJ リサーチ&コンサルティング|「令和3年度地方創生SDGsに関する上場企業及び中小企業並びに海外都市調査業務 調査報告書 ~上場企業及び中小企業調査編~令和4年3月」
SDGsと企業価値の関連性
多くの企業がSDGsを事業戦略と結びつけ、イノベーション推進や社会的責任の実践を通じて企業価値向上を図っています。前述の三菱UFJ リサーチ&コンサルティングの調査でも上場企業の59%が、SDGs達成に向けた取り組みを現在の収益事業の一部と位置付けています。
SDGs実現に向けた環境省のガイドライン
環境省は、持続可能な開発目標(SDGs)に係る取り組みの進展に寄与することなどを目的として、すべての企業が持続的に発展するためのSDGsの活用ガイドを作成しています。
参照:環境省|「すべての企業が持続的に発展するために- 持続可能な開発目標(S D G sエスディージーズ)活用ガイド - 」
3つの側面から考えたペーパーレス化によるSDGsへの貢献
環境、社会、経済の3つの側面からペーパーレス化のSDGsへの貢献を詳しく説明します。
環境面での貢献
ペーパーレス化は、環境保護に多方面で大きく貢献します。まず、紙の使用を減らすことで、森林伐採の抑制につながります。紙の原料である木材の需要が減ることで、森林の保全が促進され、二酸化炭素の吸収能力が維持されます。
さらに、紙の製造過程では大量の水とエネルギーが消費されるため、紙の使用削減は資源の節約にも寄与します。また、印刷インクの使用や廃棄物の削減にもつながり、土壌や水質の汚染防止に効果的です。
デジタル化によって資料や情報を電子媒体で共有することで、紙に依存しない働き方が普及し、持続可能な社会の実現に寄与します。これにより、環境への負荷が大幅に軽減されます。
資源節約と森林保護(目標12: つくる責任 つかう責任、目標15: 陸の豊かさも守ろう)
紙の使用量削減は、森林資源の保護に直接的に貢献します。紙の主な原料は木材であり、紙を製造するためには大量の樹木が伐採されます。そのため、紙の使用量を減らすことは、木材の需要を抑制し、森林伐採の削減につながります。
特に、熱帯雨林などの貴重な生態系が破壊されるリスクを軽減できるため、生物多様性の保護にも寄与します。
さらに、森林は地球の二酸化炭素を吸収する重要な役割を担っており、森林が保全されることで、気候変動の抑制にもつながります。
CO2排出削減効果(目標13: 気候変動に具体的な対策を)
紙の生産・輸送・廃棄に伴うCO2排出削減効果は、環境保護において非常に重要です。
紙の製造過程では、大量のエネルギーが使用されCO2が排出されます。紙の使用量を減らすことで、製造時に必要なエネルギーが削減され、その結果、CO2排出量も減少します。さらに、紙の輸送にも燃料が使用されるため、輸送に伴うCO2排出も抑えられます。
社会面での貢献
ペーパーレス化は、環境保護だけでなく、社会問題の解決にも貢献します。例えば、紙の削減によりコスト削減が可能となり、教育や医療など他の社会資源に資金を回すことができます。
また、デジタル化により情報の共有が迅速化し、災害時の情報伝達や行政手続きの効率化が進み、社会全体の生産性向上と公平性の確保に寄与します。
ワークライフバランスの向上(目標8: 働きがいも経済成長も)
ペーパレス化により、労働時間の短縮や柔軟な働き方が実現します。業務のデジタル化により、従来の手作業が削減され、業務が迅速化します。
これにより、従業員は残業を減らし、より短時間で仕事を完了できるため、ワークライフバランスが向上します。また、リモートワークの導入が進み、働く場所や時間に柔軟性が生まれ、多様な働き方が可能になります。
ジェンダー平等の促進(目標5: ジェンダー平等を実現しよう)
リモートワークの促進は、ジェンダー平等に大きく貢献します。特に育児や介護を担う女性にとって、柔軟な働き方が可能になることで、キャリアを継続しやすくなります。
家庭と仕事の両立がしやすくなり、性別による役割分担の固定観念が緩和されます。また、場所にとらわれない働き方は、男性にも家庭への関与を促進し、性別に関係なく平等な働き方を実現します。
経済面での貢献
ペーパーレス化は、企業にとって経済的な利益をもたらします。まず、紙や印刷関連のコスト削減が可能となり、経費の圧縮につながります。また、デジタル化により業務の効率化が進み、作業時間の短縮やミスの減少が実現します。
これにより、生産性が向上し、企業の競争力が強化されます。さらに、環境に配慮した取り組みとして、企業のブランド価値や社会的信用も向上します。
業務効率化と生産性向上(目標8: 働きがいも経済成長も)
文書のデジタル化は、業務の効率化と生産性向上に直結します。デジタル化により、文書の検索や共有が瞬時に行えるようになり、情報の取り扱いが効率化されます。また、データの自動処理やクラウドを活用した共同作業が可能となり、場所を問わず迅速に対応できます。これにより、業務フローが円滑化し、結果として全体の生産性が向上します。
コスト削減効果(目標9: 産業と技術革新の基盤をつくろう)
紙・印刷・保管コストの削減は、企業に具体的な経済効果をもたらします。紙の購入や印刷機器のメンテナンス費用が削減されることで、直接的な経費節約が実現します。
また、文書のデジタル化により、物理的な保管スペースが不要となり、倉庫やオフィススペースのコストも削減できます。これにより、企業の運営コストが大幅に圧縮され、利益率の向上に寄与します。
経理部門のペーパーレス化によるメリットと課題
経理業務では、請求書や領収書などの証憑書類を多く取り扱います。まず、紙の書類をデジタル化することで、請求書や領収書の処理が迅速化され、業務効率が向上します。デジタルデータは容易に検索・共有ができ、正確な財務管理が可能となります。
また、ペーパーレス化により、紙の保管スペースが不要となり、コスト削減やセキュリティーの強化にもつながります。しかし、導入時にはいくつかの課題が生じます。例えば、既存の紙の書類をデジタル化する作業に時間とコストがかかることや、新しいシステムの導入・操作に不慣れな従業員への教育が必要です。
さらに、データのセキュリティー対策や法令遵守も重要で、これらの課題を解決するための計画が求められます。
ペーパーレス化のメリット
経理部門のペーパーレス化がもたらす主なメリットを3つ紹介します。
- 経理業務の効率化と正確性向上
- リモートワークの実現
- データセキュリティーの強化
1.経理業務の効率化と正確性向上
デジタル化は、入力ミス削減や業務の自動化に大きなメリットをもたらします。デジタル化によって、手動入力に伴うヒューマンエラーを減少させ、データの正確性を向上させます。
また、自動化により、定型的な作業が迅速かつ効率的に処理されるため、従業員はより重要な業務に集中でき、生産性が向上します。これにより、業務全体の品質と効率が向上します。
2.リモートワークの実現
場所を問わない業務遂行が可能になることで、働き方の柔軟性が大幅に向上します。リモートワークの導入により、従業員は自宅や他の場所からでも業務を遂行でき、通勤時間が削減されます。
また、急な対応が必要な場合でも迅速に作業が行えるため、業務の継続性が確保されます。さらに、優秀な人材を地域に縛られずに採用でき、企業の競争力が向上します。
3.データセキュリティーの強化
デジタル管理は、セキュリティー向上に多くのメリットをもたらします。データは暗号化やアクセス制限により保護され、不正なアクセスや情報漏えいを防ぐことが可能です。
また、バックアップやリカバリシステムが整備されているため、災害や故障時にも迅速にデータを復元できます。さらに、アクセス履歴が記録されることで、不正行為の追跡や監視が容易になり、全体的な情報セキュリティーが強化されます。
ペーパーレス化の課題
Sansan株式会社が2024年に実施した調査によると、発行する請求書について「紙の割合が高い」とした回答者は6割、「電子の割合が高い」とした回答者は2割未満となっており、いまだにペーパーレス化が進んでいない現状がうかがえます。
ここでは経理部門のペーパーレス化を進める上での主な課題4つを解説します。
- 既存システムとの統合の困難さ
- 初期導入コストの負担
- 従業員の抵抗感と教育の必要性
- 法令遵守への対応
既存システムとの統合の困難さ
長年使用してきた会計システムとの連携や統合には、いくつかの課題が伴います。まず、システム間の互換性が低い場合、データの移行や統合が複雑化し、エラーやデータ損失のリスクが高まります。
また、旧システムに依存している従業員が新しい操作方法に慣れるまでに時間がかかることや、導入に伴うコストと時間の負担も課題となります。これらの課題を解決するためには、計画的な移行プロセスが必要です。
初期導入コストの負担
新しいシステムやツールの導入には、初期費用の問題がつきまといます。システムの購入やライセンス費用、導入に必要なハードウェアの購入費、さらに従業員へのトレーニング費用などが発生します。
これらの初期投資が高額になる場合、特に中小企業にとっては経済的な負担が大きくなる可能性があります。加えて、導入後のメンテナンスやサポート費用も考慮する必要があります。
従業員の抵抗感と教育の必要性
新しいシステムへの移行に対して、従業員は不安を感じることがあります。特に、既存の業務フローや操作に慣れている従業員にとって、変化はストレスや抵抗を引き起こすことが多いです。このため、移行時には従業員への十分な教育とサポートが必要です。
トレーニングやマニュアルの提供を通じて、新システムの使い方を習得させることで、移行への不安を軽減し、業務が円滑に進むよう支援することが重要です。
法令遵守への対応
電子帳簿保存法などの法的要件を満たすためには、いくつかの課題が存在します。まず、システムが法的基準に適合しているかを確認し、必要なセキュリティー対策やデータの保存期間の遵守が求められます。
また、適切なバックアップ体制や監査証跡の管理も必要です。さらに、法改正に対応するための継続的なシステム更新や、従業員への法的要件に関する教育も重要な課題となります。
経理部門のペーパーレス化の重要性
経理業務では、請求書や領収書などの証憑書類を多く取り扱います。紙の書類をデジタル化することで、検索や管理が容易になり、ミスや紛失のリスクが大幅に減少します。また、ペーパーレス化はコスト削減にも寄与します。紙、インク、印刷機器の使用を削減することで、資源の節約が可能となり、企業全体のコスト構造が改善されます。
しかし、請求書発行業務に携わるビジネスパーソンを対象にSansanが 2024年に実施した調査によると、発行する請求書について「紙の割合が高い」とした回答者は6割、「電子の割合が高い」とした回答者は2割未満となっており、いまだに電子化が進んでいない現状が伺えます。
ペーパーレス化を成功させるポイント
ペーパーレス化を効果的に進めるための重要なポイントを4つ解説します。
- 経営層の理解と支援を得る
- 段階的な導入計画の立案
- 従業員教育とサポート体制の構築
- 適切なツールの選択
1.経営層の理解と支援を得る
トップダウンでの推進が成功の鍵となる理由は、組織全体への影響力と方向性の統一にあります。経営層がリーダーシップを発揮し、明確なビジョンと目標を示すことで、従業員はプロジェクトの重要性を理解し、積極的に取り組むようになります。
また、経営層の支持があることで、必要なリソースの確保や意思決定が迅速に行われ、組織全体が一丸となって目標達成に向かいやすくなります。
2.段階的な導入計画の立案
無理のない段階的な導入は、従業員の負担を軽減し、システムの定着を促すために重要です。まず、小規模な部門やプロジェクトから新しいシステムを試験導入し、フィードバックを集めて問題点を修正します。
次に、成功事例を基に他部門へ拡大し、全社的な展開を進めます。このアプローチにより、リスクを最小限に抑えながら、スムーズな移行と高い成功率が得られます。
3.従業員教育とサポート体制の構築
スムーズな移行のためには、従業員への教育とサポートが不可欠です。新しいシステムやプロセスに対する理解不足や操作ミスを防ぐため、十分なトレーニングを提供し、実践的なスキルを習得させる必要があります。
また、移行期間中は、問題発生時に迅速に対応できるサポート体制を整えることで、従業員の不安を軽減し、業務の継続性を確保します。これにより、移行がスムーズに進み、導入の成功が促進されます。
4.適切なツールの選択
業務に合った適切なツール選びは、効率向上と成功の鍵です。ツールが業務ニーズに適していない場合、操作が複雑化し、生産性が低下するリスクがあります。
選定ポイントとして、業務プロセスに合致する機能性、操作の簡便さ、他システムとの連携性、サポート体制の充実度を重視することが重要です。これにより、最適なツールを導入し、業務の効率化と効果的な運用を実現できます。
ペーパーレス化がSDGs経営を加速する
ペーパーレス化がSDGs経営にもたらす総合的な効果を解説します。
ペーパーレス化がもたらす多面的な効果
ペーパーレス化は、企業に多方面での効果をもたらす重要な施策です。まず、紙の使用を減らすことで、環境負荷の低減に直接寄与します。紙の製造や廃棄には多大なエネルギーが必要であり、これを削減することでCO2排出量を抑制し、企業の環境意識を高めることができます。また、ペーパーレス化は業務効率の向上にもつながります。
デジタルデータの管理は、検索性や共有のしやすさが紙媒体と比較して格段に優れており、情報の迅速なアクセスが可能です。さらに、保管コストやスペースの削減により、長期的なコストダウンが実現します。ペーパーレス化は企業のESG(環境・社会・ガバナンス)戦略の一環としても評価され、持続可能な成長を目指す上で不可欠な取り組みといえるでしょう。
持続可能な企業経営への貢献
長期的視点での企業価値向上と持続可能性は、企業が短期的な利益追求を超えて、環境、社会、ガバナンス(ESG)を重視する戦略を導入することを意味します。
これにより、企業は社会的責任を果たしつつ、ブランドの信頼性と顧客ロイヤリティを高め、持続可能な成長を実現します。長期的には、これが競争力を強化し、企業の市場価値を高める要因となります。
まとめ
ペーパーレス化は、環境保護だけでなく、業務効率化や働き方改革など、多面的にSDGs達成に貢献します。特に経理部門では、アナログ業務が多い中で、請求書のデジタル化が大きな効果をもたらします。しかし、導入には課題も多く、計画的なアプローチが必要です。
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部