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IPO準備期の経理がやるべきこと | 役割や業務内容・体制づくりのポイントを解説

IPO準備期の経理がやるべきこと | 役割や業務内容・体制づくりのポイントを解説

IPOの準備が始まると、経理には月次決算の早期化に加え、内部統制の整備や監査・審査対応など、これまでにない業務が次々と加わります。日常業務を回しながら新たな対応も求められる中で、業務量や責任の重さに強いプレッシャーを感じている経理担当者も多いのではないでしょうか。

本記事ではIPO準備における通常の経理業務との違いや、N-3期から申請期までのロードマップを整理するとともに、IPO準備がリソース不足に陥りやすい理由や、それを解消するポイントを解説します。

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IPO準備期の経理と通常の経理の違いとは?

IPO(新規上場)を目指す段階になると、経理業務の質と量は大きく変化します。まずは、未上場企業の経理(税務会計)と、上場企業の経理(財務会計)における3つの大きな違いについて解説します。

目的の違い

未上場企業における経理業務は、主に法人税法に基づいた「税務会計」が中心です。決算の主眼は正確な税金の計算と確定申告にあり、経営者や税務署への報告が主な目的となります。

一方、上場企業の経理では、開示を前提とした「財務会計」の重要性が一段と高まります。株主や投資家に対する受託責任(説明責任)を果たし、意思決定に有用な情報を提供するため、企業の財政状態や経営成績を適切かつ信頼性の高い形で示すことが求められます。

具体的には、金融商品取引法をはじめとする法令や会計基準に準拠した適正な会計処理と開示が不可欠です。収益認識の基準や引当金の計上、資産の評価などにおいても、より厳格で透明性の高い処理が求められるようになります。

スピードの違い

決算スケジュールのスピード感も大きく異なります。未上場企業であれば、年に1回の決算確定と申告が中心的なスケジュールであることが一般的です。

一方、上場企業では四半期ごとの決算開示が義務付けられており、年間を通じて決算業務が継続的に発生します。このため、実務面では常に決算対応を念頭に置いた業務運営が必要です。

さらに、正確な数値を迅速に把握するため、月次決算の早期化も求められます。具体的には、翌月5営業日から遅くとも10日程度で月次決算を締めるスピード感が必要です。この厳格な締め切りに対応することは、現場の経理担当者にとって大きなプレッシャーとなる場合もあります。

プロセスの違い

3つ目の違いは、業務プロセスそのものに対する管理体制です。上場準備においては、作成された財務諸表の数字が合っていることだけでなく、その数字が作られるプロセスに不正や誤りがないことを証明する「内部統制」の構築が必要となります。

未上場企業の少人数体制では、一人の担当者が発注から支払いまですべてを行うケースも見られますが、上場企業では権限の分離が求められます。「誰が起票し、誰が承認したか」というプロセスの透明化と、牽制機能(ダブルチェック体制)が不可欠です。

このように、結果(数字)だけでなく、そこに至るまでの「正しい手続き」を整備・運用することが、IPO準備期の経理には求められます。

IPO準備のロードマップと経理業務の内容

IPO準備のロードマップと経理業務の内容を説明する図

IPOを実現するためには、一般的に「N-3期(直前々期以前)」から準備を開始し、段階を経て体制を整えていく必要があります。ここでは、各フェーズにおける経理の役割と具体的な業務内容を解説します。

N-3期以前(準備期)

N-3期以前は、IPOプロジェクトのキックオフとなる時期です。まず、監査法人によるショートレビュー(予備調査)を受け、自社の現状と上場基準との間にどのようなギャップ(課題)があるかを洗い出します。

この時期の経理部門は、ショートレビューで指摘された課題を基に、今後の改善計画(ロードマップ)を策定することが主な業務となります。具体的には、会計処理の方法を税務基準から上場基準へ変更するための検討や、それに伴う会計システムの入れ替え検討、経理規程や職務分掌規程といった整備計画などが挙げられます。

この段階で、将来を見据えたシステム選定や規程の枠組みをしっかりと計画しておくことが、後工程での混乱を防ぐための重要なポイントです。

N-2期(直前々期)

N-2期からは、監査法人による会計監査が本格的に始まります。上場申請には原則として直前2期分の監査証明が必要となるため、この時期から監査対応が日常業務に加わることになります。

経理部門としては、N-2期の期首から、新しい会計基準での処理と月次決算の早期化を「運用」ベースで回していく必要があります。計画段階ではなく、実際に定められた期限内に月次決算を完了させ、監査法人のレビューに耐え得る精度の高い財務諸表を作成しなければなりません。

また、原価計算制度の構築や固定資産管理の徹底など、実務レベルでの管理体制を強化する時期でもあります。監査法人からの指摘事項に対して迅速に対応し、期中に修正・改善を繰り返していくことが求められます。

N-1期(直前期)

N-1期は、いよいよ上場申請に向けた最終仕上げの期間です。この時期には、内部統制報告制度(J-SOX)への対応が本格化します。業務フロー図や業務記述書、リスクコントロールマトリクス(RCM)などの文書化を進め、実際に内部統制が有効に機能しているかを確認する運用テストを実施します。

並行して、膨大な上場申請書類の作成にも着手しなければなりません。特に「上場申請のための有価証券報告書(いわゆる「Ⅰの部」)」の作成は非常に工数がかかります。経理部門は、過去の財務データの精査に加え、事業のリスク要因や経営分析(MD&A)などの記述についても、経営企画や関連部署と連携して作成を進めます。

申請期

証券取引所へ上場申請を行った後の申請期では、証券会社や証券取引所からの審査対応が中心となります。この審査では、数百問にも及ぶ質問が投げかけられ、期限内に正確かつ論理的に回答を作成する必要があります。

特に経理関連では、予算達成に向けた進捗管理や、予実差異(予算と実績のズレ)が発生した際の原因分析と説明能力が厳しく問われます。上場後も投資家に対して適切な業績予想と説明ができる体制があるかどうかが審査されるためです。

また、審査対応と並行して四半期ごとの開示体制の最終確認も行うなど、上場直前まで業務負荷の高い状況が継続します。

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IPO準備期の経理がリソース不足に陥りやすい理由

IPO準備を進める中で、多くの企業が直面するのが経理部門のリソース不足です。なぜ、この時期に業務が回らなくなってしまうのでしょうか。その主な理由を3つの観点から解説します。

経理の人材不足の現状については、以下の記事をお読みください。

兼務の制限

未上場企業の少人数組織では、一人の担当者が経理、財務、労務、総務などを兼務することが珍しくありません。しかし、IPO準備においては、内部統制における不正防止の観点から「職務分掌」の徹底が求められます

具体的には、「起票担当者」と「承認者」を分ける、あるいは「経理(記帳・集計)」と「財務(資金移動・管理)」を明確に分離するといった対応が必要です。これにより、これまで一人で完結していた業務を複数人で分担しなければならず、物理的な頭数(人員)が必要になります。結果として、既存メンバーの兼務によるカバーが難しくなり、リソース不足が顕在化します。

採用の難易度

人員を補充しようとしても、採用が思うように進まないことも大きな要因です。IPO準備の実務をリードできるような、上場準備経験者や上場企業の経理経験者は、転職市場において非常に価値が高く、採用難易度もコストも跳ね上がります

また、現場は日々の業務に追われているため、採用活動自体に十分な時間を割く余裕がないというジレンマも発生します。運良く採用できたとしても、入社までにはタイムラグがあり、入社後の教育期間も必要です。

突発業務の発生

IPO準備期には、日々のルーティンワークとは別に、予期せぬ突発業務が頻繁に発生します。

たとえば、監査法人から過去の取引に関する詳細な資料提出を求められたり、会計処理の根拠について早急な回答を求められたりすることがあります。これらは期限付きの依頼であることが多く、優先して対応しなければなりません。

こうした突発業務に対応するための余力がない状態で業務を回していると、本来やるべき月次決算などのコア業務が後回しになり、遅延してしまうという本末転倒な結果を招きやすくなります。

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IPO準備期の経理体制を強化するポイント

リソース不足を解消し、IPO準備をスムーズに進めるためには、単に人を増やすだけでなく、業務の仕組みそのものを見直すことが重要です。ここでは、経理体制を強化するための3つのポイントを紹介します。

ボトルネックを解消する

月次決算の早期化を阻む要因の一つに、経理部門以外からの情報連携の遅れがあります。たとえば、他部署からの請求書提出の遅延や、経費精算申請の不備、承認フローの停滞などです。これらがボトルネックとなり、経理担当者が処理に着手できない待機時間が発生してしまいます。

そのため、経理内部の処理スピードを上げる努力だけでなく、情報が経理に集まる仕組み自体を変える「前倒し」の意識を持つことが大切です。全社的なルールの周知徹底や、提出期限の管理強化など、関連部署を巻き込んだ改善が必要となります。

アナログ業務から脱却する

業務効率化と内部統制強化の両面において、アナログ業務からの脱却は非常に有効です。

紙の請求書の開封、ファイリング、Excelへの手入力といったアナログな作業は、工数がかかるだけでなく、入力ミスや紛失、改ざんといった不正の温床となりやすいものです。こうした状態は、監査法人からも内部統制上のリスクが高いとみなされる傾向にあります。

手作業への固執は、ミス修正による工数の増加や、データの整合性が取れなくなるリスクを招きます。そのため、上場準備の段階で多くの企業が経理システムやクラウドサービスを導入し、業務の自動化・効率化を図ると同時に、ログ管理や承認フローのシステム化による内部統制への対応を進めています。

経理業務を電子化するメリットについては、以下の記事をお読みください。

外部専門家の力を借りる

すべてを自社の人員だけで完結しようとせず、外部のリソースを有効活用することも効果的です。たとえば、新しい会計基準の適用といった判断に迷う会計処理については、自己判断で進めず早めに監査法人に相談することで、後からの修正(手戻り)を防ぐことができます。

また、記帳業務や給与計算などの定型業務については、アウトソーシング(BPO)を一時的に活用するのも一つの手です。ルーティンワークを外部に任せることで、社内の経理メンバーは、決算分析や監査対応、開示資料作成といった、高度な判断を伴うコア業務に集中する体制を作ることが可能になります。

経理アウトソーシングを利用するポイントについては、以下の記事をお読みください。

まとめ

IPO準備期の経理業務は、通常の経理業務とは異なり、投資家保護を目的とした厳格な会計処理と、四半期開示に対応できるスピード感が求められます。N-3期から申請期にかけて、監査対応やJ-SOX対応などやるべきことは山積みですが、リソース不足は多くの企業に共通する課題です。

この課題を乗り越えるためには、採用による人員強化だけでなく、業務の「仕組み化・システム化」が重要です。特に、月次決算早期化のボトルネックとなりやすい「請求書の受領から計上」までのプロセスは、システム導入によって劇的に効率化できる領域です。

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「月次決算に役立つ情報」編集部

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Bill Oneが運営する「月次決算に役立つ情報」の編集部です。請求書業務、経費精算、債権管理や経理業務における法対応など、さまざまな業務の課題を解決に導く情報をお届けします。

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