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デジタル監査とは?メリットや課題、導入方法まで解説
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近年、企業においてデジタルツールやクラウド技術の活用が急速に進んでいますが、監査業務においてもデジタル化の波が押し寄せています。
従来の監査手法では、膨大なデータの処理や分析に限界があり、効率性や精度の面で課題を抱えていました。そこで注目されているのが「デジタル監査」です。
デジタル監査とは、AIやデータ分析ツールなどを活用した、より効率的で精度の高い監査手法のこと。本記事では、デジタル監査のメリット・デメリットから導入方法、そして課題解決のためのヒントまで、わかりやすく解説していきます。
デジタル監査とは
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が進むにつれて、従来の監査手法では対応しきれない範囲が広がっています。そこで登場したのが「デジタル監査」です。
まずはデジタル監査がどのようなものか、基本的な仕組みや従来の監査手法との違いについて見ていきましょう。
デジタル監査の定義
デジタル監査は、企業の財務データや取引データをAIや自動化ツールによって分析・監査する手法です。
従来、監査は大量のデータを手作業で処理する必要があり、ミスや漏れが発生するリスクが伴いました。デジタル監査は、このようなプロセスにデジタル技術を導入し、監査の効率と精度を大幅に向上させることを目指しています。
デジタル監査は、特にリアルタイムでのリスク管理が求められる現代において、迅速な意思決定や法令遵守に貢献する重要な技術革新といえます。
また、デジタル監査はデータ分析を基盤として、より包括的な監査を可能にし、企業の透明性向上やガバナンス強化にもつながっています。
デジタル監査の基本的な仕組み
デジタル監査は、AIやデータ分析ツールを活用して大量のデータを自動で処理・分析する仕組みを採用しています。
近年ではクラウド技術の進化により、複数の拠点や部署のデータを一元管理し、ビッグデータのような膨大な情報も素早く分析できる環境が整ってきました。
また自動化技術を活用することで、異常検知やリスク評価がリアルタイムで行われ、不正やエラーを早期に発見することも可能です。
これにより、会計処理におけるパターンをAIが検知し、不正の兆候を自動的に警告するなど、従来の手法では困難だった迅速な監査を実現できます。
従来の監査手法との比較
従来の監査手法には、紙ベースや手作業によるデータの確認が多く、処理に時間がかかりエラーも発生しやすいという課題がありました。また手作業による手法では、情報量が増えるにつれてミスが発生するリスクも高まります。
これに対しデジタル監査は、AIや自動化ツールを活用してデータの処理や分析を迅速かつ正確に行えるため、効率性が大幅に向上します。さらにリアルタイムでのデータ更新が可能なため、最新情報に基づくリスク評価や意思決定が行える点も大きな特徴です。
このように効率性と正確性の面で優位性があるデジタル監査は、企業がリスク管理を強化し、より透明な監査プロセスを構築するうえで欠かせない手法となっています。
デジタル監査を導入するメリット
デジタル監査の導入は、企業にさまざまなメリットをもたらすものです。ここでは以下の3つのメリットについて説明します。
- コスト削減と業務の効率化
- リアルタイム分析によるリスク管理
- 精度と信頼性の向上
1.コスト削減と業務の効率化
デジタル監査は、従来の監査業務に必要だった膨大な手作業を大幅に削減します。
従来行われていた手作業の監査は時間がかかるうえ、人員を多く割かなければならず、その分のコストがかかっていました。しかし、デジタル監査を導入することで、データ分析や処理が自動化され、監査コストの削減が可能です。
また自動化によってエラーの発生率も低下するため、データの正確性が高まり、手直しの作業も減少します。
この結果、業務全体のコストパフォーマンスが向上するとともに、監査部門の労力削減にもつながります。監査担当者はより高度な分析や判断に集中できるため、人的リソースの有効活用も期待できるでしょう。
2.リアルタイム分析によるリスク管理
デジタル監査は、ビッグデータとリアルタイム分析を活用することで、従来の手法では困難だった即時的なリスク管理を実現します。
大量のデータを瞬時に処理できるようになれば、異常が発生した場合に迅速にそれを検知し、対策を講じることが可能です。たとえば、AIが過去のデータパターンと照合し、不正の兆候や異常値を即座に知らせる異常検知システムなどもそのひとつといえます。
こうしたシステムは、リスクを未然に防ぎ、企業の財務や経営面での安全性を高めるうえで役立ちます。またリアルタイムのリスク評価は、企業の迅速な意思決定にも役立ち、競争力向上にも寄与するでしょう。
3.精度と信頼性の向上
デジタル監査により、監査データの精度と信頼性が大幅に向上します。
自動化ツールを使用すれば、データ入力や分析の精度が向上し、人為的なミスが減少するため、より正確な結果が得られるでしょう。
またデジタル監査は長期的なデータ保管が容易で、データを誰がいつ、どこで編集したのかというデータのトレーサビリティも確保されているため、後からのデータ追跡や確認もスムーズです。
このような精度と信頼性の向上は、企業が将来的に活用できるデータベースを築くことにもつながり、長期的なビジネスの信頼性を支える基盤となります。
デジタル監査のデメリットと課題
デジタル監査には多くのメリットがある一方で、導入にはいくつかのデメリットや課題も存在します。ここでは、代表的な課題として、以下の3つについて解説します。
- 導入コスト
- セキュリティーリスク
- デジタル人材の不足
1.導入コスト
デジタル監査を導入する際には、初期コストが発生します。
専用の監査ツールやAIシステムの導入には、ソフトウエアの購入費やカスタマイズのための開発費用がかかるため、企業にとっての初期投資は決して小さくありません。
また、導入後も継続的に費用がかかります。たとえばツールのライセンス更新やシステムの保守・アップデートに伴う経費などが発生します。
特に、中小企業にとってはこうしたコストが負担になることもあるため、導入の際は事前に費用対効果をしっかりと評価する必要があります。
2.セキュリティーリスク
デジタル監査では大量のデータをクラウドやオンラインで管理することから、サイバーセキュリティー対策が不可欠です。
監査情報には企業の財務データや機密情報が含まれるため、セキュリティーが脆弱であるとデータ漏えいや不正アクセスの危険が生じます。特にクラウド上でのデータ管理は、外部からの攻撃に対する対策が欠かせません。
具体的なセキュリティー対策としては、データ暗号化や二段階認証、定期的なセキュリティー診断の実施などが必要です。セキュリティーを強化するための投資も必要になるため、導入時にはリスク管理計画を立てておくことが必須といえるでしょう。
3.デジタル人材の不足
デジタル監査の運用にはデジタルツールを扱える専門的なスキルを持つ人材が必要となりますが、多くの企業には、これらのデジタル人材が不足しています。
監査ツールやAIを効果的に活用するには、データ分析やシステム管理の知識が必須です。経験のある人材を確保するため、企業には新たなデジタル人材の採用が求められるかもしれません。あるいは、既存スタッフを教育・訓練する必要があるでしょう。
またツールを使いこなすには継続的な教育が必要なため、それが運用コストを押し上げる可能性もあります。デジタル監査の導入時には、人材育成にかかる時間とコストについても考慮すべきです。
デジタル監査の導入方法
デジタル監査を効果的に導入するためには、事前の準備からベンダー選定、そして実際の運用開始まで、段階を踏んだプロセスが重要です。以下に、導入のための具体的なポイントを解説します。
導入前の準備が重要
まずはデジタル監査を推進するための専任チームを結成し、責任者や担当者を明確化することで、スムーズな導入体制を構築します。
その後、デジタル監査の目的、メリット、導入による変化などを社内全体に周知徹底し、理解と協力を得ることが重要です。特に、監査部門以外の部門からの協力を得るためには、デジタル監査がどのように効率化や精度向上に役立つかをしっかり伝える必要があります。
導入による業務の変化や、新しいツールの運用方法について事前に周知することで、社員の理解が深まり、スムーズな導入が可能になるでしょう。
ベンダー選定のポイント
デジタル監査を導入する際には、適切なベンダーと監査ツールを選定することが重要です。ベンダー選定のポイントとしては、以下の点が挙げられます。
- 実績と信頼性:豊富な導入実績と高い信頼性を有しているか
- 技術力:顧客の幅広いニーズに対応できる技術を有しているか
- サポート体制:導入後のサポート体制が充実しているか
- コスト:導入コストと運用コストを考慮し、自社の予算に見合っているか
監査ツールは、自社の監査対象や業務プロセスに合致した機能を有するものを選ぶ必要があります。デモやトライアルを活用して実際の使い勝手を確認しながら、最適な機能やサポートを提供してくれるベンダーを選びましょう。
実際の導入プロセス
デジタル監査のおおまかな導入プロセスは、以下の通りです。
- 現状分析:現在の監査プロセスや課題を分析する
- 要件定義:デジタル監査に求める要件を明確化する
- ツール選定:要件に合致したツールを選定する
- 導入:ツールの導入と設定を行う
- 運用:デジタル監査システムを運用開始する
- 評価:導入効果を評価し、改善を行う
運用開始後も定期的なシステムチェックや社員へのトレーニングを継続して行い、常にスムーズな運用ができるようにすることが成功の鍵です。
デジタル監査の未来
デジタル監査は、AIやデータ分析技術の進化とともに、今後さらに発展していくことが予想されます。
AIを活用した未来の監査
AIの進化は、監査業務をさらに変革していく可能性を秘めています。
たとえば自然言語処理技術を用いることで、契約書や議事録などの非構造化データの分析を自動化し、リスクの抽出や不正の検知をより高度に行うことが可能になるでしょう。
また機械学習を用いることで、過去の監査データから不正リスクの高い取引パターンを学習し、さらに高い精度で不正を予測するシステムの開発も期待できます。
自動化がもたらすさらなる効率化
RPAなどの自動化技術は今後も進化を続け、より広範囲の監査業務を自動化することが可能になるでしょう。
これにより監査担当者は、より高度な分析や判断、そして企業へのコンサルティング業務に注力することができるようになり、監査の質向上と企業価値向上に貢献できます。
監査の範囲の拡大
デジタル技術の進化は、監査の範囲を拡大する可能性も秘めています。たとえばIoTセンサーデータやサプライチェーン情報などを活用することで、企業の非財務情報に関する監査も可能になるかもしれません。
このように、デジタル監査は、AIや自動化技術の発展とともに、より高度化、効率化し、監査の範囲も拡大していくことが予想されます。
デジタル監査の未来
デジタル監査は、監査業務の効率化、精度向上、リスク低減を実現するだけでなく、企業のガバナンス強化、不正リスクの低減、そして経営の透明性向上にも大きく貢献していくことが期待されます。
デジタル監査は、監査業界の未来を担う重要な技術といえるでしょう。
まとめ
デジタル監査の導入は、監査業務の効率化とリスク管理の向上に大きく貢献します。膨大なデータを自動化ツールで効率よく処理し、AIによるリアルタイム分析で不正やリスクを即座に検知できる点は、従来の監査手法にはない利点です。
一方で、導入にはコストやセキュリティー対策、デジタル人材の育成といった課題も伴いますが、これらを克服すれば、長期的な成長と信頼性の向上が期待できます。
企業としては、社内体制の整備や社員の理解促進、適切なベンダー選定を通じ、効果的なデジタル監査の実現を目指すことが重要です。経理業務のデジタル化も同時に推進することで企業全体のデジタルトランスフォーメーションが加速し、さらなる業務効率化とガバナンス強化が図れるでしょう。
執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部