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経理のペーパーレス化で業務効率アップ!メリットや導入の注意点を徹底解説
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経理業務のペーパーレス化は、企業の効率化やコスト削減を目指す上で重要な施策です。近年、紙の書類をデジタルデータに置き換える動きが広がり、経理業務でも請求書、領収書、契約書などの電子化が進んでいます。
ペーパーレス化を導入すれば、紙の書類を保管するスペースや管理コストが削減されるだけでなく、業務のスピードアップや在宅勤務など柔軟な働き方の推進にもつながります。
しかし、ペーパーレス化には事前準備や導入コスト、従業員の教育などの課題もあるため、計画的な取り組みが必要です。
本記事では、経理業務のペーパーレス化の概要やメリット・デメリットを詳しく解説し、成功させるための進め方と注意点についてもご紹介します。ペーパーレス化を検討中の方や、導入後の効果を最大化したい方は、ぜひ参考にしてください。
経理業務のペーパーレス化とは

経理業務のペーパーレス化とは、紙を使用した帳簿や書類管理をデジタル化し、電子データで処理・保存する仕組みを指します。伝票や請求書、領収書などの紙媒体を減らし、パソコンやクラウドサービスを活用して業務を効率化します。
近年では、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が求められ、ペーパーレス化の重要性が一層高まっています。
経理業務のペーパーレス化推進の背景

経理業務のペーパーレス化が進む背景には、以下のような社会的、業務的な要因があります。
- 法令・規制の改正: 電子帳簿保存法の改正により、電子データでの保存が正式に認められ、要件を満たせば紙の保存義務がなくなりました。
- デジタル化推進政策: 政府が推進するデジタル社会の形成や「働き方改革」により、企業には業務の効率化と柔軟な働き方の対応が求められています。
- 業務効率と競争力向上: 経理業務の効率化は、業務時間の短縮と競争力の向上につながり、企業成長の鍵となります。
- 環境への配慮: ペーパーレス化は紙の使用量削減に貢献し、環境保護の観点からも重要視されています。
電子化できる書類とは
経理業務において電子化できる書類は多岐にわたります。代表的なものには下記のような書類があげられます。
- 請求書・領収書
- 契約書
- 経費精算書
- 伝票類
- 決算関連書類 など
これらの書類は従来、紙で作成・保管されていましたが、近年ではスキャナーや電子取引システムを利用することで電子データとして管理することが可能です。
なお、電子請求書についてはこちらの記事に詳しくまとめています。併せてご参照ください。
経理業務ペーパーレス化によるメリット

経理業務をペーパーレス化することで、以下のように多くの面で効率化と利便性が向上します。
- コストや保管スペースが削減できる
- 必要書類がすぐに見つかる
- 月次決算が効率化する
- セキュリティー対策を強化する
- リモートワークに対応しやすくなる
- 請求書の修正や再発行がスピーディーになる
それぞれ詳しく解説します。
コストや保管スペースが削減できる
経理業務をペーパーレス化することで、下記のようなコストを削減できます。
- コピー用紙の購入費用
- 郵送費用や封筒などの発送資材費
- 書類保管スペースの家賃や棚の費用
紙の書類を電子データに置き換えることで、印刷費用やコピー用紙の購入費用が不要になります。また、紙の書類を郵送する必要がなくなるため、郵送費用や封筒などの発送資材費も削減できます。
さらに、保管スペースの問題も解決します。従来、書類を保管するためには専用のファイルや棚、場合によっては倉庫が必要でしたが、電子データ化することでそのようなスペースを大幅に削減できます。
必要書類がすぐに見つかる
経理業務をペーパーレス化する最大の利点の一つは、必要な書類を迅速に見つけられることです。紙の書類の場合、ファイルキャビネットや棚から特定の書類を探し出すには時間がかかり、場合によっては紛失したり誤った分類をしてしまったりするリスクがあります。
一方で、電子化された書類は、検索機能を活用することで瞬時に目的のデータを見つけ出すことができます。
この機能により、手作業による探し物の時間が大幅に短縮され、従業員は他の重要な業務に集中することが可能です。
月次決算が効率化する
経理業務をペーパーレス化することで、月次決算の効率化が実現します。経理業務には、伝票の整理やデータ入力、金額の集計といった定型作業が多く含まれており、これらの作業を電子化すれば処理の自動化が可能です。
また、クラウド上でデータを一元管理することで、必要な情報をリアルタイムで収集できるため、集計作業や確認プロセスが大幅に迅速化します。
セキュリティー対策を強化する
紙の書類は物理的な保管が必要で、紛失や盗難、劣化のリスクが常に伴います。一方、電子化することで、これらのリスクを最小限に抑えることが可能です。
電子データはパスワードや暗号化による保護ができ、アクセス権限を細かく設定することで、特定のユーザーだけが重要情報にアクセスできる仕組みを構築できます。また、クラウドサービスを利用すれば、自動バックアップ機能によりデータの損失リスクを回避できます。
さらに、アクセスログの記録により、データの利用状況を追跡できるようになり、不正アクセスや不適切な利用の早期発見が可能です。こうした対策で情報漏えいや改ざんのリスクが軽減され、企業の信用維持や法令遵守にもつながります。
リモートワークに対応しやすくなる
経理業務をペーパーレス化することで、場所に縛られない柔軟な働き方が可能になります。従来の紙ベースの経理業務では、書類がオフィスに保管されているため、出社しなければ業務を遂行できないケースが一般的でした。しかし、ペーパーレス化により、クラウドサービスやリモートアクセスを活用することで、必要なデータにどこからでもアクセスできる環境が整います。
これによってリモートワークや在宅勤務が実現し、オフィス以外の場所でも経理業務がスムーズに行えます。
請求書の修正や再発行がスピーディーになる
経理業務のペーパーレス化により、請求書の修正や再発行が格段にスムーズになります。従来の紙ベースの請求書では、修正が必要な場合、新しい請求書を作成し、再印刷して郵送する必要があり、多くの手間と時間がかかっていました。また、郵送期間も含めると、顧客への対応が遅れることも少なくありません。
一方、ペーパーレス化された請求書では、修正が必要な場合でもデジタル上でデータを簡単に編集し、すぐに再発行できます。電子メールや専用のクラウドシステムを利用すれば、即座に顧客に送信できるため、対応スピードが大幅に向上します。
経理業務ペーパーレス化によるデメリット

メリットが多い経理業務のペーパーレス化ですが、一方で以下のようなデメリットもあります。
- 導入するのにコストや手間がかかる
- システム環境や回線速度の影響を受ける
- 従業員の教育が必要になる
それぞれ具体的に解説します。
導入するのにコストや手間がかかる
経理業務のペーパーレス化には、初期導入時に一定のコストと手間がかかる点がデメリットとして挙げられます。例えば、電子化を進めるためには、スキャナーや専用の経理システム、クラウドサービスの導入費用が必要です。さらに、これらのツールやソフトウエアを企業の業務フローに合わせて設定する作業や、従業員への操作研修も重要なプロセスです。
さらに、導入後もシステムの保守・管理費用や法改正に伴うアップデート対応など、継続的なコストが発生します。そのため、ペーパーレス化を進める際は、導入にかかる費用対効果を事前にしっかりと検討し、計画的に進めることが求められます。
システム環境や回線速度の影響を受ける
経理業務のペーパーレス化では、書類がクラウドサーバーに保存されるケースが一般的であるため、システム環境やインターネット回線速度が業務に大きく影響します。クラウドサービスを利用する場合、データへのアクセスや操作の速度は回線の品質に依存するため、回線速度が遅いと業務効率が低下する可能性があります。
また、システムの安定性も重要です。サーバーの障害や通信トラブルが発生すると、書類へのアクセスができなくなり、業務が中断するリスクがあります。特に月次決算や税務申告など、締切が厳しい業務では、こうしたトラブルが大きな影響を及ぼします。
従業員の教育が必要になる
経理業務をペーパーレス化する際には、新しいシステムやツールを効果的に活用するために、従業員に対する教育や研修が必要です。ペーパーレス化に伴い、クラウドサービスや経理ソフト、データ管理の仕組みなど、従来とは異なる操作方法や業務フローを習得しなければなりません。
研修やマニュアルの作成、指導に必要なリソースも企業にとって負担となる場合があります。
経理業務のペーパーレス化の進め方

経理業務をペーパーレス化する際には、段階的に進めていく必要があります。以下ではそのプロセスを具体的に紹介します。
請求書の電子化については、こちらの記事にも詳しい記載があります。ご参照ください。
1.導入目的を明確にする
経理業務のペーパーレス化を成功させるためには、まず導入目的を明確にし、優先事項を決めることが重要です。ペーパーレス化の目的は企業によって異なるため、どの課題を解決したいのか、具体的に把握する必要があります。
例えば、請求書処理の効率化を重視するなら、電子請求書システムの導入が優先されるでしょう。一方、セキュリティーを強化したい場合は、データの暗号化やアクセス権限の設定が重視されます。
目的を明確にすることで、どの部分からペーパーレス化を進めるべきかが見えてきます。
2.電子化する書類を決める
経理業務のペーパーレス化を進める際には、すべての書類を一度に電子化するのではなく、優先度の高い書類から着手すると良いでしょう。特に、日常的に扱う頻度が高く、業務効率への影響が大きい書類を優先すると、効果が見えやすくなります。
例えば、請求書や領収書、伝票類などは多くの企業で頻繁に使用されるため、これらを最初に電子化することで、ペーパーレス化のメリットを早期に実感できます。また、これらの書類は検索機能や自動仕訳機能といったツールとの相性も良く、業務効率の向上に直結します。
3.業務フロー・社内ルールを整備する
ペーパーレス化は既存の業務プロセスに変化をもたらすため、従来の紙ベースの流れをデジタル環境に適応させるための明確な指針が必要です。
一般的には下記のような業務フローやルールを策定します。
- 承認フロー
- 電子書類の作成・保存ルール
- アクセス権限管理ルール
- データ利用ルール など
書類の作成から保存、承認に至るまでの既存の業務フローを見直し、電子化に合わせて最適化します。承認手順や責任者の設定を明確にし、システム内で誰がどのタイミングで対応すべきかをルール化することが重要です。
さらに、ルールを文書化し、全従業員に周知することで運用時の混乱を防ぎます。この際、クラウドストレージのフォルダ構造やファイル命名規則、アクセス権限の設定なども具体的に定めると、作業の一貫性が保たれます。
4.導入するシステムやツールを選定する
市場には多種多様な経理向けのシステムやクラウドサービスがあるため、自社のニーズに合ったものを比較検討する必要があります。
一般的に選定時する際には下記のような項目をチェックします。
- 操作性
- 機能の充実度
- 費用対効果
- カスタマイズ性
- セキュリティー
- サポート体制
これらの項目の中でも費用対効果がチェックすべき大きなポイントです。導入コストと運用コストを考慮し、それが業務効率化やコスト削減効果に見合うかを評価します。
また、システムの操作性も重要なポイントです。ユーザーインターフェースが使いやすいものを選び、従業員が迅速に新しい環境に適応できるようにします。
さらに、サポート体制や法改正への対応力も選定基準に含めるようにしましょう。システムトラブル時の迅速な対応や、法的要件に準拠した機能を持つサービスは、安心して利用できます。
5.従業員へ周知や教育を行う
ペーパーレス化を円滑に進めるには、従業員が新しいシステムやツールを正しく理解し、使いこなせるようにすることがカギとなります。システムの操作に慣れていない従業員も多い場合、適切な研修やトレーニングを提供することで、スムーズな移行をサポートできます。
特に重要なのは、ペーパーレス化の意義を伝えることです。業務効率の向上やコスト削減、環境への配慮といったメリットを明確に示すことで、従業員の理解と協力を得られるでしょう。
教育方法としては、実際の業務に即した操作研修や、マニュアル・動画教材の配布が効果的です。初期段階ではサポート体制を整備し、従業員が気軽に質問できる環境を提供することも重要です。
経理業務のペーパーレス化を進める上での注意点

経理業務をペーパーレス化するためには、下記の点に注意する必要があります。
- まずはスモールスタートする
- ペーパーレス化の意図を社内に浸透させる
- 取引先に電子化対応について確認する
それぞれ詳しく解説します。
まずはスモールスタートする
経理業務のペーパーレス化を成功させるためには、すべての業務を一度に切り替えるのではなく、重要な業務や取り組みやすい業務から段階的に進めるスモールスタートが効果的です。初期段階での混乱やリスクを最小限に抑えながら、ペーパーレス化の実際の効果を確認することができます。
例えば、頻繁に使用される請求書や領収書の電子化から始め、業務の効率化やコスト削減の成果を測定します。その結果を基に、運用ルールやシステムの改善点を洗い出し、次の段階でのスムーズな拡大に備えるとスムーズに展開できます。
ペーパーレス化の意図を社内に浸透させる
ペーパーレス化を円滑に進めるためには、社内全体がその意図を共有し、共通の目標に向かって取り組むことが重要です。特に、従業員が新しい仕組みに適応するには、その背景や目的をしっかり理解しておく必要があります。
ペーパーレス化がもたらすメリットを具体的に示し、業務効率の向上やコスト削減、環境への貢献といった利点を明確に説明することで、従業員の共感を得られます。
取引先に電子化対応について確認する
経理業務をペーパーレス化する際には、取引先企業が電子データの受け渡しに対応しているかを事前に確認をしておきましょう。ペーパーレス化を進めても、取引先が電子化に対応していなければ、従来どおり紙の書類が必要となり、業務効率化の効果が十分に発揮されない場合があります。
まず、主要な取引先に対して、請求書や領収書などの書類を電子形式で受け取れるか、または提供できるかを確認します。電子化対応が難しい取引先がある場合には、一部の書類については引き続き紙ベースで対応するなど、柔軟な運用ルールを検討する必要があります。
まとめ
経理業務のペーパーレス化は、コスト削減や業務効率化を実現する有効な手段です。請求書の電子化を進めることで、印刷費や郵送費が削減されるだけでなく、書類検索の迅速化やリモートワークへの対応も容易になります。ただし、導入にはコストや従業員教育といった課題が伴うため、計画的に実施する必要があります。
経理業務の中でも、日常的に扱う請求書業務は、特にペーパーレス化の効果を実感しやすい分野です。請求書業務からペーパーレス化を進めてみてはいかがでしょうか。
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部