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取適法(中小受託取引適正化法)とは?2026年の下請法改正の適用対象や企業の対応を解説

取適法(中小受託取引適正化法)とは?2026年の下請法改正の適用対象や企業の対応を解説

2026年1月から、下請法が「取適法(中小受託取引適正化法)」として改正・施行されました。適用対象が大幅に拡大され、従業員数基準の新設により中堅企業も対象となるケースが増えるため、多くの企業に影響が及びます。

取適法では、価格交渉への対応義務化や手形払いの実質禁止など、新たなルールが追加されました。違反した場合は是正勧告と企業名の公表、さらには罰則の対象となるリスクもあり、企業イメージへの影響も懸念されます。

この記事では、取適法の基本的な内容から改正のポイント、適用対象の判断方法、委託事業者に課される義務と禁止行為、そして経理・財務部門が今から準備すべき具体的な対応まで、実務に役立つ情報を分かりやすく解説します。

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目次

  1. 取適法とは
  2. 取適法が制定された背景と目的
  3. 下請法から取適法への主な改正点
  4. 取適法の適用対象となる取引や事業者
  5. 委託事業者に課される4つの義務
  6. 委託事業者に禁止される11の行為
  7. 取適法に違反した場合のペナルティーとリスク
  8. 取適法が経理・財務部門に与える影響
  9. 取適法施行に向けて企業が準備すべき対応
  10. まとめ

取適法とは

取適法は、製造委託や情報成果物作成委託などの取引において、中小受託事業者を保護し、取引の適正化を図るための法律です。

2026年1月1日から施行された下請法の改正法であり、従来の「親事業者」「下請事業者」という用語が「委託事業者」「中小受託事業者」に変更されました。

これにより、対等な取引関係を重視する姿勢が明確になっています。

取適法の正式名称と略称

取適法の正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」です。

正式名称が非常に長いことから、実務上は「取適法(とりてきほう)」という略称が広く使用されています。

この略称は、法律の趣旨である「取引の適正化」を端的に表現したものです。委託者と受託者が対等な立場で適正な取引を行うことを目指す理念が込められています。

下請法との関係

取適法は、下請法が改正されて新たな名称として施行されるものです。

下請法は1956年の制定以来、長年にわたり中小事業者を保護してきました。一方で、「下請」という表現が上下関係を連想させ、対等な取引関係の構築を阻害しているとの指摘がありました。

そこで今回の改正では、用語の見直しが行われ、委託者と受託者が対等な関係であることを重視した法律へと生まれ変わっています。実質的な内容も拡充され、より実効性の高い保護措置が導入されました。

取適法が制定された背景と目的

取適法が制定された背景には、インフレの進行に伴う中小企業の価格転嫁推進があります。

原材料費や人件費が上昇する中、中小事業者が適正に価格を転嫁できる環境を整備し、実質賃金の上昇を目指す政府施策の一環として位置づけられています。

中小事業者の価格転嫁を阻む課題

中小事業者は、取引において立場が弱く、価格交渉で不利な状況に置かれるケースが少なくありません。具体的には、原材料費や人件費の上昇分を価格に転嫁できず、収益を圧迫される状況が続いていました。

また、一方的な条件変更や支払い遅延といった問題も発生しやすく、健全な事業運営を阻害する要因となっています。こうした課題を放置すれば、中小事業者の経営基盤が揺らぎ、サプライチェーン全体に悪影響を及ぼす恐れがあります。

適正な価格転嫁の促進と賃金上昇への貢献

取適法は、インフレ下での中小企業の収益確保を支援し、取引の透明性と公正性を確保することを目的としています。適正な価格転嫁が実現されれば、中小事業者の収益が改善され、従業員の賃金引き上げにもつながります。

政府の経済政策においても、取適法は重要な施策の一つとして位置づけられており、メディアからの注目度も高く、厳格な運用が予想されます。

このような背景から、企業には法令遵守の徹底が求められる状況です。

下請法から取適法への主な改正点

下請法から取適法への改正では、法律名称や用語の変更に加えて、以下の変更が行われました。

  • 適用対象の拡大
  • 価格交渉プロセスの義務化
  • 手形払等の実質禁止
  • 契約書面の電子化対応

ここでは、主要な改正点を確認していきます。

法律名称や用語の変更

法律名称が「下請法」から「取適法」へと変更され、用語も「親事業者」から「委託事業者」、「下請事業者」から「中小受託事業者」へと改められました。

これにより、上下関係を連想させる表現が廃止され、対等な取引関係を重視する姿勢が明確になっています。

用語の変更は、単なる言葉の置き換えではなく、取引関係に対する意識改革を促す重要な改正です。

委託者と受託者が互いに尊重し合い、公正な取引を行う文化の醸成が期待されています。

適用対象の拡大

適用対象の拡大は、今回の改正における最も重要なポイントの一つです。

従来の資本金基準に加えて、従業員数基準が新たに導入されました。これにより、従業員100人超から100人以下への取引も対象となり、中堅企業も対象となる可能性が高まっています。

また、特定運送委託が新たに追加され、運送業における取引も保護の対象となりました。

特に製造業やIT・情報通信業では、仕入れ業務のほぼすべてが対象となるケースも考えられ、影響範囲は非常に広範です。

価格交渉プロセスの義務化

取適法では、中小受託事業者から協議を求められた際に協議を行わず(または必要な説明をせずに)一方的に代金を決定することが禁止されました。

協議の場を無視することは重大な違反とみなされ、委託事業者は真摯に価格交渉に応じなければなりません。

協議に応じずに一方的に代金を決定することは禁止されており、価格を据え置く場合には業界平均などの根拠を提示する必要があります。

価格交渉の記録を残すことも重要であり、適切なプロセスを経たことを証明できる体制が求められます。

手形払等の実質禁止と60日ルール

従来の手形払いでは、受領から現金化まで最大120日を要するケースがあり、中小事業者の資金繰りを圧迫していました。取適法では、手形払が明確に禁止されます。

また、電子記録債権や一括決済方式などの支払い手段についても、支払い期日までに代金相当額満額を得ることが困難なものは、支払い遅延に該当するものとして禁止されます。

委託事業者は、支払い方法全般について見直しを行い、中小受託事業者が支払い期日までに確実に金銭を受け取れる手段を選択する必要があります。

契約書面の電子化対応

取適法では、契約書面を電磁的方法で交付することが可能になりました。

重要なのは、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メールなどの電磁的方法による交付が認められる点です。

電子契約の普及により、書面の作成・保管にかかる手間やコストを削減でき、実務上の利便性が向上します。また、契約内容の検索や管理も容易になり、法令遵守の徹底にも寄与します。

企業は、電子契約システムの導入を検討し、業務効率化と法令対応を同時に実現することが望ましいでしょう。

取適法の適用対象となる取引や事業者

取適法の適用対象を正しく理解することは、法令遵守の第一歩です。

対象となる取引の種類、資本金基準、従業員数基準を確認し、自社の取引が該当するかを判断しましょう。

対象となる取引の種類

取適法の対象となる取引は、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託の5種類です。

製造委託には部品の製作や加工が含まれ、情報成果物作成委託にはソフトウエア開発やデザイン制作が含まれます。

役務提供委託には他社に提供する運送や保管、情報処理などのサービスを他の事業者に委託することが含まれ、特定運送委託は取引の対象となる相手方への物品の運送に関する委託です。

ただし、建設工事そのものは建設業法で規制されるため取適法の対象外ですが、建設工事に関連する図面作成や資材運送は取適法の対象となります。

資本金基準による判定

資本金基準では、委託事業者と中小受託事業者の資本金の組み合わせと、取引類型によって適用対象かどうかが判定されます。

取引類型によって基準が異なる点に注意が必要です。

製造委託・修理委託・特定運送委託の場合、情報成果物作成委託の場合(プログラム作成に限る)、役務提供委託の場合(運送、物品の倉庫における保管及び情報処理に限る。)

  • 資本金が3億円を超える法人が委託事業者となる場合は、資本金3億円以下の法人または個人事業者が受託者となる取引
  • 資本金が1,000万円を超え3億円以下の法人が委託事業者となる場合は、資本金1,000万円以下の法人または個人事業者が受託者となる取引

情報成果物作成委託(プログラムの作成を除く)・役務提供委託(運送・物品の倉庫における保管及び情報処理を除く)の場合

  • 資本金が5,000万円超える法人が委託事業者となる場合は、資本金が1,000万円以下の法人または個人事業者が受託者となる取引
  • 資本金が1,000万円を超え5,000万円以下の法人が委託事業者となる場合は、資本金1,000万円以下の法人または個人事業者が受託者となる取引

この基準により、大企業から中小企業への委託だけでなく、中堅企業から小規模企業への委託も対象となります。

取引類型に応じた正確な判定が重要です。

従業員数基準による判定

従業員数基準は、今回の改正で新たに導入されました。資本金基準と同様に、取引類型によって基準が異なります。

製造委託・修理委託・特定運送委託の場合、情報成果物作成委託の場合(プログラム作成に限る)、役務提供委託の場合(運送、物品の倉庫における保管および情報処理に限る。)

  • 常時使用する従業員数が300人超の法人が委託事業者となる場合は、常時使用する従業員の数が300人以下の法人または個人事業者に委託する場合

情報成果物作成委託(プログラムの作成を除く)・役務提供委託(運送・物品の倉庫における保管及び情報処理を除く)の場合

  • 常時使用する従業員数が100人超の法人が委託事業者となる場合は、常時使用する従業員の数が100人以下の法人または個人事業者に委託する場合

「常時使用する従業員」の数の計算方法には注意が必要です。

正社員だけでなく、契約社員やパートタイム労働者も含めて計算する必要があります。中堅企業も対象となる可能性が高まっており、自社の従業員数を正確に把握することが求められます。

対象業界の特徴

製造業やIT・情報通信業では、取適法の適用範囲が広範に及びます。

製造業では部品調達や加工委託が多く、IT業界ではシステム開発やデザイン制作が該当するため、ほぼすべての取引が対象となるケースもあります。

また、手形払いが多い業界として、製造業、物流業、海運業が挙げられます。

これらの業界では、60日ルールへの対応が特に重要であり、支払い方法の見直しが急務です。

委託事業者に課される4つの義務

取適法では、委託事業者に対して4つの義務が課されます。これらの義務を遵守しなければ、法令違反となり、罰則の対象となる可能性があります。

各義務の内容を正確に理解し、確実に履行しましょう。

発注内容の明示義務

委託事業者は、発注内容を書面または電子データで明示する義務があります。

明示すべき項目は12項目あり、委託内容、納期、代金の額、支払い期日、支払い方法などが含まれます。

明示のタイミングも重要です。発注時に直ちに明示する必要があり、口頭での発注後に書面を交付するだけでは不十分です。

電子データで明示する場合も、中小受託事業者が内容を確認できる状態にすることが求められます。

書類等の作成・保存義務

委託事業者は、取引内容を記録した書類を作成し、2年間保存する義務があります。

記録すべき内容には、発注日、納期、代金の額、支払い日などが含まれ、取引の経緯を確認できる状態にしておく必要があります。

操作・編集履歴の記録も重要です。

書類の作成日時や変更履歴を残すことで、不正な改ざんを防止し、取引の透明性を確保できます。電子データで管理する場合は、履歴管理機能を備えたシステムの活用が有効です。

支払い期日を定める義務

委託事業者は、検査をするかどうかを問わず、発注した物品などを受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、支払い期日を設定する義務があります。検収作業の有無にかかわらず、受領日が起算日となる点が重要です。

多くの企業が、法令遵守と取引先への配慮から、一律30日サイトへの変更を検討している実態があります。自社の支払いサイトを見直し、中小受託事業者の資金繰りに配慮した設定が望ましいでしょう。

遅延利息の支払い義務

支払いが遅延した場合、委託事業者は年14.6%の遅延利息を支払う義務があります。遅延利息の計算方法は、遅延した代金の額に年14.6%の利率を乗じ、受領日又は役務の提供を

受けた日から起算して 60 日を経過した日から実際に支払が行われる日までの日数により算出します。

遅延利息の負担は企業にとって大きなコストとなるため、支払い遅延を防止する体制の構築が不可欠です。物品の受領日や役務提供びから支払いまでのプロセスを見直し、確実に期日内に支払える仕組みを整えましょう。

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委託事業者に禁止される11の行為

取適法では、委託事業者に対して11の行為が禁止されています。

これらの行為は、中小受託事業者に不当な不利益を与えるものであり、厳格に禁止されています。現場での「下請けいじめ」を監視し、防止する体制が重要です。

たとえ中小受託事業者の了解を得ていても、また、委託事業者に違法性の意識がなくても、これらの規定に触れるときには、本法に違反することになるので十分注意が必要です。

1. 受領拒否の禁止

委託事業者は、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに、発注した物品やサービスの受領を拒むことが禁止されています。

正当な理由なく受領を拒否すれば、中小受託事業者は代金を受け取れず、経営に深刻な影響を受けます。

受領拒否が問題となるケースには、発注後に需要が減少したため受領を拒否する場合や、委託事業者の都合で一方的に納期を変更する場合が含まれます。発注時に慎重に計画を立て、不当な受領拒否を防ぐことが重要です。

2. 製造委託等代金の支払遅延の禁止

支払い期日までに代金を支払わないことは禁止されています。支払い遅延は中小受託事業者の資金繰りを直撃し、経営を不安定にする要因となります。

支払い遅延を絶対に起こさない体制構築が必要です。

物品の受領日や役務提供日から承認、支払いまでのプロセスを可視化し、期日管理を徹底しましょう。

システムを活用して自動的にアラートを出すなど、確実な支払いを実現する工夫が求められます。

3. 製造委託等代金の減額の禁止

一方的な代金の減額は禁止されています。抽象受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに委託事業者の都合で代金を減額すれば、中小受託事業者は収益を失い、事業の継続が困難になります。

不当減額を防止するためには、管理体制の整備が必要です。代金の決定プロセスを明確にし、変更が生じる場合は必ず協議を行い、双方が納得した上で変更することが重要です。

4. 返品の禁止

受領後の不当な返品は禁止されています。中小受託事業者に責任がないにもかかわらず、委託事業者の都合で返品を要求することは認められません。

返品が正当化されるのは、納品物に明らかな瑕疵がある場合や、契約内容と異なる物品が納品された場合など、中小受託事業者に責任があり、かつ受領後速やかに引き取らせる場合に限られます。不当な返品を防ぐため、検収基準を明確にし、受領時に十分な確認を行いましょう。

5. 買いたたきの禁止

通常の対価を著しく下回る代金での発注は禁止されています。買いたたきは、中小受託事業者の利益を不当に削り、健全な事業運営を阻害する行為です。

買いたたきに該当するかどうかは、対価の決定方法や内容、市場価格との乖離、コスト動向などを総合的に考慮して判断されます。

代金を決定する際は、適正な価格を提示し、中小受託事業者が納得できる条件で契約を結ぶことが重要です。

6. 購入・利用強制の禁止

委託事業者が指定する物品やサービスの購入・利用を強制することは禁止されています。中小受託事業者に対して、自社製品の購入や特定のサービスの利用を強要すれば、不当な経済的負担を強いることになります。

購入・利用の強制が問題となるケースには、委託事業者が販売する原材料の購入を義務付ける場合や、委託事業者が運営するシステムの利用を強制する場合が含まれます。取引の公正性を保つため、強制的な要求は避けましょう。

7. 報復措置の禁止

公正取引委員会等への通報を理由として、中小受託事業者に不利益な取扱いをすることは禁止されています。報復措置は、法令遵守を促進する上で重大な障害となり、中小受託事業者が声を上げることを妨げます。

報復措置には、取引量の削減、取引条件の悪化、取引の打ち切りなどが含まれます。通報を理由とした不利益取扱いは厳しく禁止されており、違反すれば重大な法令違反となります。

8. 有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止

有償で支給した原材料の代金を、製品代金の支払い前に支払わせることは禁止されています。中小受託事業者に先に原材料代金を支払わせれば、資金繰りに大きな負担を与えます。

原材料等を有償で支給する場合、早期決済にならないようにするためには、有償支給原材料等を使って製造等を行い、納入される物品の代金の支払制度や検査期間、中小受託事業者の加工期間を考慮して、代金の支払と有償支給原材料等の対価の決済が「見合い相殺」になる仕組みにしておくこと大切です。

早期決済を求めることは、不当な資金負担を強いる行為とみなされます。

9. 不当な経済上の利益の提供要請の禁止

金銭や労務の提供などを不当に要請することは禁止されています。委託事業者が中小受託事業者に対して、協賛金の提供や無償の労務提供を求めることは、不当な経済的負担を強いる行為です。

中小受託事業者の利益を不当に害さないものとして正当化されるのは、経済上の利益提供が自社製品の販促など直接の利益に繋がり、かつ自由な意思に基づき自発的に行われる場合に限られます。

つまり、受託者側の直接的な利得と自発性の双方が備わっていることが正当性の根拠となります。

一方的な要請は避け、公正な取引関係を維持しましょう。

10. 不当な給付内容の変更、やり直しの禁止

中小受託事業者に責任がないのに、給付内容の変更ややり直しを求めることは禁止されています。委託事業者の都合で仕様を変更したり、やり直しを要求したりすれば、中小受託事業者は追加のコストと時間を負担することになります。

給付内容の変更が必要な場合は、中小受託事業者と協議し、追加コストの負担や納期の延長について合意を得ることが重要です。一方的な変更ややり直しは、不当な行為として禁止されています。

11. 協議に応じない一方的な代金決定の禁止

価格交渉の協議に応じず、一方的に代金額を決定することは禁止され、協議の場を無視することは、重大な違反とみなされます。

また、価格を据え置く場合は、具体的な説明や根拠資料を提供する必要があります。

協議の記録を残し、適切なプロセスを経たことを証明できる体制を整えましょう。価格交渉への対応は、取適法において特に重視されている事項です。

取適法に違反した場合のペナルティーとリスク

取適法に違反した場合、行政指導や勧告、企業名の公表、刑事罰などのペナルティーが科されます。企業イメージへの影響も大きく、法令遵守の徹底が不可欠です。

行政指導と勧告

公正取引委員会は、毎年、委託事業者、中小受託事業者に対する定期調査を実施しています。調査の結果、違反が確認されれば、違反委託事業者に対して違反行為の是正やその他必要な措置をとるべきことを勧告することができます。

勧告を受けた事業者の名前は公表され、その結果、メディアで報道される可能性があります。

企業名の公表は、企業イメージに大きなダメージを与えます。取引先や消費者からの信頼を失い、ビジネスに深刻な影響を及ぼす可能性があります。法令遵守を徹底し、勧告を受けることのないよう注意が必要です。

刑事罰と勧告による原状回復

取適法に違反した場合、違反の類型によっては刑事罰の対象となります。

発注内容等の明示義務違反、書類作成・保存義務違反、報告拒否・虚偽報告・検査妨害などの一定の義務違反については、代表者・行為者(担当者)個人および会社(法人)に50万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、減額など不当な行為があった場合、公正取引委員会から勧告を受け、減じた額を支払うなどの原状回復措置を求められることがあります。

さらに、違反が確認された企業は、再発防止の取り組みが求められ、状況によっては継続的な監督の対象となる可能性があります。

遅延利息の負担

支払い遅延が発生した場合、年利14.6%の遅延利息を支払う必要があります。遅延利息は、遅延した代金の額と日数に応じて計算され、企業にとって大きな金銭的負担となります。

遅延利息の負担を避けるためには、支払い期日を厳守する体制を構築することが重要です。請求書の処理を迅速化し、期日管理を徹底しましょう。

取適法が経理・財務部門に与える影響

取適法の施行は、経理・財務部門に大きな影響を与えます。現状取引の見直し、キャッシュフローへの影響、請求処理体制の強化、価格交渉記録の管理など、対応すべき課題は多岐にわたります。

現状取引の全件調査と是正

経理・財務部門は、まず現状の取引を全件調査し、取適法の適用対象となるかを確認する必要があります。取引内容、支払い方法、支払いサイトを洗い出し、法令に適合しているかを判定します。

多くの企業が、法令遵守と取引先への配慮から、一律30日サイトへの変更を検討しています。支払いサイトの短縮は、中小受託事業者の資金繰り改善に寄与し、取引関係の強化にもつながります。

キャッシュフローへの影響

支払いサイトの短縮は、キャッシュフローに影響を与えます。支払いが早まることで、キャッシュアウトが増加し、フリーキャッシュフローが減少する可能性があります。

また、振込手数料の増加も考慮する必要があります。支払い回数が増えれば、それに伴い振込手数料も増加します。資金調達計画や経営計画を見直し、キャッシュフローの変化に対応しましょう。

請求処理体制の強化

支払い遅延を絶対に起こさない体制構築が求められます。請求書の紛失や処理漏れを防ぐため、請求書の電子一元管理を検討しましょう。すべての請求書を経理部門で確認できる仕組みを整えれば、未着請求書の把握も可能になります。

短縮された支払いサイト内で確実に処理するためには、承認フローの見直しも必要です。迅速な承認プロセスを設計し、期日内に支払いを完了できる体制を構築しましょう。

価格交渉記録の管理

価格交渉の記録を残す社内ルールの整備が必要です。協議の経緯を証拠として保管する仕組みを構築し、適切なプロセスを経たことを証明できるようにしましょう。

価格交渉の記録には、協議の日時、参加者、協議内容、合意事項などを含めます。電子データで管理し、検索や参照が容易にできる状態にしておくことが望ましいでしょう。

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取適法施行に向けて企業が準備すべき対応

取適法は令和8年(2026年)1 月1日から施行されています。自社の取引が適用対象かを確認し、契約書や支払い条件の見直し、社内規程の整備、価格交渉プロセスの明確化、請求書管理体制の見直しを行いましょう。

自社の取引が適用対象か確認する

まず、取引先との関係を洗い出し、資本金基準や従業員基準に該当するかを判定します。現状取引の全件調査を実施し、どの取引が取適法の対象となるかを明確にしましょう。

適用対象の判定は、慎重に行う必要があります。不明な点がある場合は、専門家に相談し、正確な判断を行いましょう。

契約書や発注書のフォーマットを見直す

発注内容の明示事項が漏れなく記載されているかを確認しましょう。12項目の記載事項を満たすよう、契約書や発注書のフォーマットを見直す必要があります。

電子契約への移行も検討しましょう。電子契約により、書面の作成・保管にかかる手間を削減でき、業務効率化が期待できます。

支払い条件や支払い方法を見直す

検査をするかどうかを問わず、受領日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で、支払い期日を設定しましょう。多くの企業が30日サイトを検討しており、自社も取引先の資金繰りに配慮した設定が望ましいでしょう。

手形払は明確に禁止されるため、廃止が必須です。また、電子記録債権や一括決済方式などを利用する場合も、支払い期日までに代金相当額満額を得ることが困難なものは禁止されるため、支払い方法全般を見直しましょう。振込手数料の負担方法についても、取引先と協議し、明確にしておくことが重要です。

社内規程の整備と担当者への周知

取適法に対応した社内規程を作成し、発注・支払い業務に関わる担当者への教育を行いましょう。法令遵守の重要性を周知し、全社的な意識向上を図ることが重要です。

現場での不当減額防止の監視体制も必要です。各部門が適切に取引を行っているかを定期的にチェックし、違反行為を未然に防ぎましょう。

価格交渉プロセスの明確化

義務化された価格交渉への対応として、協議の記録を残す仕組みづくりが必要です。価格交渉の経緯を記録し、適切なプロセスを経たことを証明できるようにしましょう。

一方的な価格決定を防ぐ体制整備も重要です。価格を据え置く場合は、業界平均などの根拠資料を準備し、中小受託事業者に説明できるようにしましょう。

請求書管理体制の見直し

請求書の電子一元管理を検討しましょう。すべての請求書を経理部門で確認でき、未着請求書の把握も可能になります。請求書の紛失や処理漏れを防ぐため、デジタル化は有効な手段です。

未着請求書の確認体制構築も必要です。定期的に取引先に請求書の発行状況を確認し、請求書が届いていない場合は速やかに対応しましょう。処理漏れ防止のためのチェック体制を整備し、確実に期日内に支払える仕組みを構築しましょう。

まとめ

取適法は2026年1月から施行される下請法の改正法で、従業員数基準の新設により適用対象が拡大します。

価格交渉への対応義務化や手形払いの実質禁止など、新たなルールが追加され、違反時には企業名公表や罰則のリスクがあるため、早急な対応が必要です。

経理・財務部門では、現状取引の全件調査、支払いサイトの短縮対応、キャッシュフロー計画の見直し、請求処理体制の強化など、準備すべき項目は多岐にわたります。

特に請求書の紛失・処理漏れを防ぎ、短縮された支払い期日内で確実に処理する体制構築が求められます。

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小野 智博

記事監修者のご紹介

弁護士 小野 智博

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士

保有資格:弁護士

慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

  • 本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。なお、本稿は、読みやすさや内容の分かりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。
「月次決算に役立つ情報」編集部

執筆・編集

「月次決算に役立つ情報」編集部

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