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経費の自腹負担が招くトラブルとは?法的リスクを回避するルール整備と効率的な経費精算の方法を徹底解説
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多くの企業では、従業員による経費の自腹負担が常態化しています。意図的に自腹を求める場合に限らず、立替精算漏れなどの運用上のミスでも、従業員の不信感や不満を招くだけでなく、法令違反や税務上のリスクといった深刻な経営トラブルに発展する可能性があります。
この記事では、経費の自腹負担が引き起こす具体的なトラブルから、法的リスクを回避するための社内ルール整備のポイント、そして業務効率を高める経費精算の工夫について解説します。
経費精算をキャッシュレスで効率化
経費の自腹負担が引き起こすトラブルとは

引用:Sansan株式会社|「経費精算業務に関する実態調査」を実施〜会社員の7割以上が精算や領収書管理に「課題あり」。約半数が「立替経費精算が通常業務の妨げになっている」と回答〜
業務で発生した経費を立て替えたものの、精算せず自腹で負担した経験がある人は52.2%にのぼります。このように多くの企業で発生している経費の自腹負担は、従業員の不満や業務負担の増大、コミュニケーション上の摩擦といったさまざまなトラブルを引き起こす要因となります。
ここではまず、経費の自腹負担がもたらす具体的なトラブルについて見ていきましょう。
従業員の不満とモチベーションの低下
経費の自腹負担は、従業員に「なぜ自分だけが負担しなければならないのか」という不公平感や不信感を抱かせる可能性があります。立替払いによる一時的な金銭的負担や、煩雑な精算手続きが心理的なストレスとなり、従業員の生産性を低下させるケースも少なくありません。
これらの不満やストレスは、エンゲージメントを低下させ、最悪の場合は優秀な人材の離職リスクにもつながります。
経営層・経理担当者の業務負担増大
経費に関するルールが曖昧なままだと、従業員から経費にあたるかどうかの問い合わせが頻発し、本来なら他の業務に充てられるはずの時間を奪われることが少なくありません。また、判断基準が属人化することで、担当者が不在の際に業務が滞るリスクもあります。
さらに深刻なのは、申請されない「隠れコスト」の存在です。経営層が正確なコストを把握できなければ、適切な予算策定や経営判断を行うことは困難です。見えにくいコストは、気づかないうちに企業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。
認識のズレが生むコミュニケーションコスト
従業員が「業務に必要だから当然経費になる」と考える費用と、企業側が「経費として認められる」と判断する費用の間には、しばしばギャップが存在します。たとえば、在宅勤務で使用する文具の購入費などがその一例です。
こうした認識のズレは、申請の差し戻しや再申請といった無駄なやりとりを生み出します。さらに、部署間での見解の相違から、社内の対立や不信感が生まれるリスクもあります。
経費の自腹に潜む法的・税務上の重大リスク

経費の自腹負担は、単なる社内の運用上の問題では済まされません。ここでは、経費の自腹がもたらす法的・税務上のリスクについて詳しく解説します。
【法的リスク】労働基準法違反の可能性
労働基準法第24条では「賃金全額払いの原則」が定められています。業務の遂行に伴い発生した経費は、原則として企業が負担すべきものであり、従業員に恒常的に負担させる運用は、実質的な賃金未払いと評価される可能性があります。
実際、従業員への経費天引きが違法と認定され、企業側に支払いを命じる判決が下された事例もあります。特に悪質と判断された場合には、労働基準監督署から是正勧告を受けたり、罰則の対象となったりするおそれがあります。
【税務リスク】経費否認と追徴課税の危険性
従業員が自腹で支払った経費を、後から会社が「手当」などの名目で補填するケースがあります。しかし、この方法には大きな税務リスクが潜んでいます。補填が「給与」とみなされると、源泉所得税の徴収漏れに該当する可能性があります。
また、証憑が不十分な経費は、税務調査において「経費」として認められず、追徴課税の対象になることがあります。税務上、経費として正しく認められるには、日付・金額・支払い先・目的が明記された領収書など、客観的な証憑書類が不可欠です。
交通費精算の領収書については、以下の記事もご覧ください。
【ガバナンスリスク】不正の温床と信頼の失墜
経費精算のルールが曖昧で、チェック体制が整っていない状態は、不正行為の温床となりやすい環境です。たとえば、カラ出張や水増し請求、私的流用など、経費に関する不正は後を絶ちません。これらの不正が発覚すれば、企業の信頼性を大きく損なうおそれがあります。
特に上場企業にとって、内部統制の不備は深刻なリスクとなります。経費精算プロセスの問題が明らかになれば、株主や投資家からの信頼を失う要因にもなりかねません。さらに、取引先から「ガバナンスに課題のある企業」と見なされ、ビジネスチャンスを逃す可能性も考えられます。
経費の自腹をなくす社内ルールの作り方

経費の自腹負担を防ぐには、明確で実効性のある社内ルールの整備が欠かせません。ここでは、従業員が迷わずに判断できる経費規程の作り方と、その運用方法について具体的に解説します。
「どこまでが経費か」の基準を言語化する
経費として認められるかどうかの基準は、誰が読んでも判断に迷わないよう、具体的に言語化することが重要です。たとえば、以下のような項目ごとに、金額の上限や条件を明確に定めておくとよいでしょう。
費目 | 設定すべき基準 |
|---|---|
交通費 | 業務利用と通勤費を明確に区別し、利用可能な交通機関や経路のルールを定める。 |
出張費 | 日当や宿泊費の上限額を、役職などに応じて具体的に設定する。 |
交際費 | 参加者一人当たりの上限額、対象となる相手先などを明確にする。 |
備品購入費 | 一定金額以上の購入には事前承認を必須とするなど、承認プロセスを定める。 |
経費規程に盛り込むべき必須項目
言語化した基準は、実効性のある「経費規程」として文書化する必要があります。経費規程には、少なくとも以下の項目を盛り込みましょう。
項目 | 内容 |
|---|---|
目的 | なぜこの規程を定めるのか。 |
適用範囲 | どの役職・雇用の従業員までを対象とするのか。 |
経費の定義 | どのような支出が経費として認められるのか。 |
申請・承認フロー | 誰が、いつまでに、どのような手順で申請し、誰が承認するのか。 |
精算方法と期限 | どのように、いつまでに精算手続きを行うのか。 |
不正時の罰則 | 不正が発覚した場合はどのように処分されるのか。 |
全従業員への周知と継続的な見直し
どれほど優れた規程であっても、従業員に周知徹底されなければ機能しません。新しい経費規程を導入する際には、全社説明会などを通じて、変更点や注意事項を丁寧に伝えることが重要です。特に、これまで曖昧だった部分を明確化した内容については、具体例を交えて分かりやすく説明しましょう。
また、社内ポータルへの掲載も効果的です。FAQ形式でよくある質問をまとめたり、申請書のテンプレートを用意したりすることで、従業員が迷わずに手続きできる環境を整えます。新入社員研修では、経費精算の基本ルールを必須項目として組み込むことも重要です。
さらに、働き方の多様化に対応した見直しも欠かせません。年に一度は規程の見直しを行い、現場の声を反映させながら、実態に即したルールへと継続的にアップデートしていきましょう。
「面倒だから自腹」を防ぐ2つのポイント

明確なルールがあっても、手続きが煩雑であれば「面倒だから自腹で済ませよう」と考える従業員が出てくる可能性があります。ここでは、経費精算にかかる負担を軽減し、適切な運用を促すための2つのポイントを紹介します。
- 立替払いを抜本的に減らす
- 申請・承認のフローを簡略化する
1.立替払いを抜本的に減らす
従業員にとって最も大きな負担のひとつは、自分のお金で一時的に立て替えることです。
この課題を根本的に解決する手段として、法人カードや法人向けプリペイドカードを従業員に支給することが効果的です。
法人カードを活用すれば、従業員は立替負担から解放されます。また、企業側も経費の使用状況をリアルタイムで把握できるようになり、ガバナンスの強化につながります。また、支払いが後払いになることで、キャッシュフローの改善効果も期待できるでしょう。
法人カードを利用した経理処理の詳細については、以下の記事もご覧ください。
2.申請・承認のフローを簡略化する
経費精算の「面倒くささ」を解消するには、デジタルツールの活用が効果的です。
たとえば、スマートフォンアプリで領収書を撮影するだけで申請が完了する仕組みを導入すれば、申請者の負担が大幅に軽減されます。OCR機能で金額や日付が自動入力されれば、手入力の手間もなくなります。
また、スマートフォンやタブレットから承認作業ができるシステムなら、承認者が出張先から申請内容を確認・承認できるようになり、決裁の滞留も防止できます。
経費の自腹をなくすことで企業が得られるメリット

経費の自腹負担をなくすことは、従業員の不満を軽減するだけでなく、企業全体に多くのメリットをもたらします。ここでは、適切な経費精算システムの構築がもたらす具体的な効果について解説します。
本来の業務への集中と満足度の向上
経費精算業務の煩わしさから解放されることで、従業員は本来の業務に集中しやすくなります。営業担当者であれば顧客対応や提案書作成に、エンジニアであれば開発業務に、それぞれの専門性をより発揮できるようになるでしょう。
月末の経費精算に追われることなく、計画的に業務を進められるようになることで、仕事の質も向上します。締め切りに追われて慌てて処理することがなくなるため、ミスの減少にもつながります。
さらに、公平で透明性の高い経費精算制度は、従業員の満足度と企業への信頼感の向上にも寄与します。「従業員のことをきちんと考えている」という実感は、エンゲージメントの向上や離職防止にも役立つでしょう。
コストの可視化とガバナンス強化
経費データがリアルタイムで可視化されることで、経営層は各部署のコスト状況を即座に把握できるようになります。予算に対する進捗状況が一目で分かるため、必要に応じて早期に対応することが可能です。
また、法人カードの利用明細と経費申請データが自動的にひも付くことで、不正利用の抑止効果も期待できます。私的利用や架空請求といった不正行為は、システム上で異常値として検出されやすくなり、早期発見が可能になります。
すべての取引履歴がデジタルで記録されるため、監査証跡としても活用でき、内部統制の強化にもつながります。
生産性の向上と競争力強化
経費精算のDXは、組織全体の生産性向上に大きく貢献します。たとえば経理部門では、手作業による入力や確認作業が大幅に削減され、より付加価値の高い業務に注力できるようになるでしょう。
さらに、働きやすい環境の整備は、優秀な人材の獲得と定着にもつながります。特にデジタルネイティブ世代にとって、アナログな経費精算システムは就職先を選ぶ際のマイナス要因となりかねません。
先進的なシステムを導入している企業として認知されることで、採用市場での優位性を得やすくなります。
まとめ
経費の自腹負担は、従業員の不満、法的リスク、税務リスク、ガバナンスの欠如など、企業経営に多大な悪影響を及ぼす可能性があります。この課題を解決するには、明確な経費規程の整備と、経費精算のデジタル化が欠かせません。
ルールを作るだけでなく、それを実効性のあるものとして機能させることが重要です。従業員が「面倒だから自腹で済ませよう」と考えなくて済むような、使いやすく公平なシステムを構築することが、結果として企業の成長と従業員の満足度向上につながります。
なお「Bill One」を導入すれば、そもそも立替経費が発生しないため、従業員が自腹を切る必要はありません。
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記事監修者のご紹介
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
保有資格:弁護士
慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部




