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請求書の保存期間は?保存年数の数え方や保存方法、注意点について解説

請求書の保存期間は?保存年数の数え方や保存方法、注意点について解説

企業活動において避けて通れないのが、請求書の正確な管理と保存です。しかし、請求書をどのように、どれほどの期間保存すべきなのかわからない方は多いのではないでしょうか。

請求書は法律により保存方法が決められています。インボイス制度や電子帳簿保存法などの制度も始まり、請求書の正確な保存と管理が重要となりました。

本記事では、請求書の保存期間や保存方法、注意すべきポイントを詳細に掘り下げます。請求書を適切に保存するために、ぜひ参考にしてください。

請求書には保存義務がある

請求書は、取引を証明するために発行される書類です。取引の内容や個数、金額などが書かれており、いくら請求したのかを示します。請求書は「証憑書類」の1つです。証憑書類は税制上の規定により、一定期間の保存が義務付けられています。一定期間とは、法人の場合、個人事業主の場合で変わります。

保存するために気をつけるべきポイントは、原本の保存です。コピーや写しだと、請求書の改ざんや不正会計が起きてしまうリスクがあるためです。

保存義務の対象となるケースは以下の通りです。

  • 受領した請求書
  • 発行した請求書の控え

このように、請求書は保存義務があるため、自社の判断で捨てないようにしましょう。

請求書の保存期間

「請求書」と一口に言っても、すべての保存期間が同じではありません。また、法人と個人事業主の場合で保存期間が異なります。この章では受領した請求書と送付した請求書の2つに分けて紹介します。保存期間を守るための参考にしてください。

受領した請求書

受領した請求書は、法人・個人事業主のどちらに該当するかで保存期間が異なります。

法人の場合は7年、個人事業主の場合は5年です。しかし、例外もあるため、以下に詳しく解説します。

法人の場合

基本的に法人の請求書の保存期間は7年と決まっています。例外として、2018年4月以後に発生した欠損金の繰越控除がある場合は、保存期間が10年間となります。

欠損金の繰越控除とは、赤字部分を翌年の利益から控除できる仕組みです。基本的には7年保存ですが、念のため税務調査に備えて10年ほど保存しておくと安心でしょう。

なお、保存期間の数え方は、以下の章にある請求書の保存年数の数え方で解説します。

個人事業主の場合

個人事業主の場合、保存期間は基本的に5年間です。青色申告事業者と白色申告事業者のどちらも保存期間は変わりません。

ただし、年間の課税売上高が1,000万円を超える場合は注意が必要です個人事業主でも「消費税課税事業者」に該当し、請求書の保存期間は法人と同じ7年間と決まっています。

また、免税事業者の場合でも、会計帳簿の保存は7年間と義務付けられています。そのため、請求書に関しても7年間保存しておくと安心です。

5年が基本的な保存期間ですが、例外もあるため確認してください。

発行した請求書

冒頭の章で紹介した通り、発行(送付)した請求書は、控えを作成した場合のみ保存義務が生じます。保存期間は、先述の受領した請求書(法人7年、個人事業主5年)と同じです。

ただし、適格請求書の場合は扱いが異なります。適格請求書とは、正確な税率や消費税などを伝える書類です。

2023年10月1日から導入されたインボイス制度においては、適格請求書の発行と控えの作成・保存が義務となりました。

保存期間は現行制度と変わらず7年間です。

請求書の保存年数の数え方

請求書の保存期間の数え方は法律で定められています。

適格請求書の場合は、適格請求書を交付・受領した日の課税期間の事業末日の翌日から2カ月後を起点にカウントを始めます。適格請求書の保存期間は法人、個人事業主ともに7年です。受領した請求書、発行した請求書の控えのいずれも同様の数え方です。

通常の請求書は適格請求書と数え方が異なり、確定申告書の「提出期限の次の日」から数えます。そのため、すべての法人が同じタイミングではなく、決算月によって異なる点に注意しましょう。

例えば、6月を決算月に設定している場合、申告期限は8月31日です。(法人の確定申告期限は事業年度終了日の翌日から2カ月以内のため)。よって、保存年数は7年後の8月31日までとなります。

一方で個人事業主の場合は法人と異なります。申告期限の翌日にあたる3月16日が請求書の保存期間の開始日です。ただし、確定申告期限の3月15日が土日祝にあたる場合は、保存期間の開始日もずれ込むため、確認しましょう。保存年数は5年ですが、消費税課税事業者の保存期間は7年です。ちなみに、領収書の保存も同様です。

保存期限を正しく守って保存しましょう。

請求書の保存方法

請求書の保存に当たって、本章では保存方法を紹介します。請求書は紙での保存が一般的ですが、場合によっては電子データやマイクロフィルムでの保存も可能です。保存方法にもいくつか注意点もあるため、合わせて解説します。

紙での保存方法

紙で受領した請求書、または発行した請求書の控えは、そのまま紙の状態で保存もしくは、スキャナーで読み取って電子データとして保存する方法があります。

紙のまま保存する場合、膨大な量になり、かさばることがあるでしょう。また、探しやすいように項目に分けてファイリングして管理する必要があります。

なお、ファイリングの際は年度別・取引先ごとに行うと、保存期間が過ぎた請求書を廃棄する際に間違いを防ぐことができます。

また、スキャナーを使用する際は、電子帳簿保存法におけるスキャナー保存方式でなければ認められないため注意が必要です。保存する場合は、統一して適切な方法で行いましょう。

電子での保存方法

電子取引データでやりとりをした請求書は、そのまま電子データでの保存が必須です。

従来は、電子データでの保存と電子データから紙に出力して保存する方法を選択できました。しかし、現在は電子帳簿保存法の改正にともない紙に印刷して保存することが廃止となっています。紙に印刷したからといって電子データを削除するのは保存方法として誤りです。

メール添付やチャットなどでダウンロードした電子データの請求書は、電子的に保存しなければなりません。

なお、電子データで保存をする際には「真実性の要件」と「可視性の要件」の2つを満たす必要があります。

電子で保存するときは、ファイル名に取引先の名前、取引年月日、取引した金額の3つを含めましょう。統一したファイル名をつくると検索しやすくなります。

マイクロフィルムでの保存方法

紙や電子での保存方法以外に、マイクロフィルムで保存する方法もあります。マイクロフィルムとは、書類をカメラで撮影し、縮小して記録する媒体です。

保存期間の最後の2年間(法人の場合は6、7年目)の請求書しかマイクロフィルム化できないと期間が限定されています。紙媒体のまま保存するよりも、縮小してフィルムに収めるためスペースをとらないことがメリットです。また、長期保存にも適しています。

ただし、マイクロフィルムを使用する際には、規定を満たした専用のリーダーやプリンターが必要になるため、導入している会社は少ないのが現状です。

請求書保存で注意すべきポイント

請求書の保存には、いくつか注意点が存在します。

本章では以下の4つを挙げます。

  • 番号をつける
  • 控えは分類をして保存する
  • 電子での送付時は改ざんができない形式にする
  • 電子帳簿保存法の改正を確認する

自社のやり方が合っているのか、注意点にあてはまっていないか、確認してみてください。それぞれ解説します。

通し番号をつける

請求書には任意で付ける通し番号があります。事業者によって、請求書の書き方が異なる場合があるため、通し番号をつけていなくても問題はありません。

しかし、請求に関する問い合わせや、社内での請求管理などの際にデータを取り出しやすくなるため、番号をつけることがおすすめです。

また、通し番号のルールを会社内で決めておくと請求書の保存、管理がしやすくなります。

控えは入出金の状態ごとに分けて管理する

請求書の控えは入出金の状態ごとに分けて管理する方法があります。発行した請求書の控えを管理する主な目的は、取引先から正しい金額の入金が期限内に済んでいるのか確認するためです。

管理する方法として3つ挙げます。

  • 未入金の請求書控えと入金済の請求書控えを分けて管理する
  • 未入金の請求書控えは日付順にファイリングをする
  • 入金済みの請求書控えは、あとから確認する際に、すぐに見つけられるよう月別や取引先別などで分けておく

このように、分けて管理すると、請求書を探しやすくなったり、入出金を確認しやすくなったりします。経理業務の効率化にもつながるでしょう。

電子保存の場合は改ざんができない形式にする

請求書の控えを電子で保存する場合は、改ざんができない形式にしましょう。作成時は一般的にWordやExcelを使うことが多いです。しかし、そのままのファイルで保存してしまうと、数値の変更が可能なため、金額が改ざんされてしまうリスクがあります。

防止策として2つ挙げます。

  • WordやExcelで作成したあとにPDFに変換したうえで保存をする
  • 訂正や削除を行った履歴が残るシステムの利用などを講じる

改ざんなど不正が発覚してしまうと、信頼が失われます。電子保存する場合には、改ざんに注意しましょう。

電子帳簿保存法の改正を確認する

電子帳簿保存法の改正を確認することも請求書保存で注意すべきポイントです。

電子帳簿保存法は1998年に施行され、都度改正されてきました。2024年1月1日からは、電子帳簿保存法の宥恕期間が終了し、電子で受け取った書類は原則紙で保存できなくなりました。前章の電子での保存方法で紹介した「電子データで受け取った請求書は、そのまま電子データでの保存が必須」は直近の改正によるものです。

これらの背景から、時代によって内容が大きく変化する可能性も考えられます。従来までは問題ないが、今回から指摘の対象になった、といった状況があるため、改正に合わせて動く必要があります。

特に経理担当者は確認して、最新の要件に対応しましょう。

請求書の保存を怠った場合のリスク

請求書の適切な保存は、単なる事務作業ではなく、企業の法令遵守と健全な経営の基盤となります。請求書の保存を怠ると、税務調査時に過去の取引を証明できず、税務署から罰金や追徴課税が課せられる可能性があるほか、法的なトラブルや取引先との信頼関係の喪失にも繋がります。

ここでは、請求書の保存を怠った場合のリスクを3つ紹介します。

  1. 法的な罰則の対象となる可能性がある
  2. 税務調査時の不利益を被る可能性がある
  3. 経営上のリスクを負う可能性がある

1.法的な罰則の対象となる可能性がある

請求書の保存を怠ると、会社法第976条に基づいて100万円以下の罰金が科される可能性があります

​​また、適切な保存がなされず、結果として生じた申告漏れが悪質な隠蔽や改ざんと見なされた場合、罰則として追加の徴税が発生し増差本税に35%の重加算税が課される場合がありますので、請求書は適切に保存し、法令を遵守することが非常に重要です。

2.税務調査時の不利益を被る可能性がある

税務調査時に正確な経費の立証が困難になると、追徴課税のリスクが高まります。調査が長期化する上、頻繁に行われる可能性もあるため、通常業務にも大きな支障をきたす恐れがあります。

また、税務調査時に、国税関係書類に係る電子データで悪質な不正の事実があった場合には、その事実に関して生じた申告漏れなどに課される重加算税が10%加重されます。

3.経営上のリスクを負う可能性がある

請求書の適切な保存を怠ると、正確な財務管理が困難になり、経営判断を誤るリスクが高まります。また、取引先とのトラブルが発生した際、証拠となる書類が不足していると紛争解決が難しくなり、最悪の場合、訴訟リスクにもつながりかねません。

このような状況を招くと、最終的には会社の信用が損なわれ、さらなる経営リスクが発生する恐れがあります。

請求書の保存に関するよくある質問と解説

請求書の保存に関してよくある質問から、以下の3つについて解説します。

  • Q1.請求書の保存期間が過ぎたら、すぐに破棄してもよい?
  • Q2.請求書の訂正や取り消しがあった場合の対処方法は?
  • Q3.海外取引の請求書も同じ規則で保存する必要がある?

Q1.請求書の保存期間が過ぎたら、すぐに破棄してもよい?

法人の場合、請求書の保存期間は一部例外を除き7年と決まっていますが、請求書の保存期間が過ぎた場合でも、破棄する前に確認が必要です

まずは請求書の正確な保存期間を再確認し、社内規定や取引の性質を考慮した上で、廃棄するかしないかを判断しましょう。

破棄する際は、個人情報保護の観点から、情報漏えいを防ぐためにシュレッダーを使用するか、専門の廃棄業者に依頼しましょう。

また、以下のようなケースでは、保存期間がすぎていても、廃棄せず保存しておきましょう。

  • 税務調査の対象となる可能性がある取引関連の請求書
  • 係争中または将来的に訴訟の可能性がある取引の証拠となる請求書
  • 長期プロジェクトや継続的取引に関連する請求書

これらの点に注意することで、不要なリスクを回避し、請求書を適切に管理しましょう。また、定期的に請求書の棚卸しを行い、保存の必要性を都度見直すことも重要です。

Q2.請求書の訂正や取り消しがあった場合の対処方法は?

請求書の訂正や取り消しが必要な場合、まず訂正の内容を明確にし、関係者に迅速に通知します。訂正前の請求書は、訂正した請求書を発行し確認が取れてから廃棄しましょう。

破棄方法は、紙の場合はシュレッダー、データの場合は完全消去を行います。データ保護の観点から、誤った請求書を長期間保存することは避け、速やかに対応することが重要です。

ただし、Q1でも紹介した特殊なケースでは、法律や契約に基づき、保存期間が延長されることがあるため注意が必要です。

Q3.海外取引の請求書も同じ規則で保存する必要がある?

海外取引の請求書も国内取引と同様に、保存する必要があります。ただし、国内取引との違いとして、外貨建取引特有の注意点があります。

  • 日本円換算
    外貨建ての取引にかかる適格請求書を作成する場合、「税率の異なるごとに区分した消費税額等」については、円換算した金額を記載する必要があります
  • 国際税務対応
    各国の税法や会計基準を理解し、適切な方法で請求書を処理することが求められます。特に、付加価値税(VAT)や消費税など、異なる税制度に注意を払う必要があります
  • 関連書類の整備
    日本の税務署からの問い合わせに対応できるよう、契約書、送金証明といった取引の実態を示す関連書類も保存しておきましょう
  • コンプライアンス遵守
    OECD移転価格ガイドラインやFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)、マネーロンダリング防止法に基づく取引記録の保存など、国際的なガイドラインや規制への対応が必要か否かも考慮しなければなりません。必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも検討しましょう

国税関係書類の書面破棄に関する要件

なお、令和4年1月1日以降は書面破棄に関する要件変更がありました。

電子帳簿保存法一問一答問3には以下のように記載されています。

『令和3年度の税制改正において、適正事務処理要件

(旧規則第3条第5項第4号。紙段階での改ざん等を防止するための仕組み)の規定が廃止され、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、定期的な検査を行う必要がなくなりました。そのため、スキャナで読み取り、折れ曲がり等がないか等の同等確認を行った後であれば、国税関係書類の書面(紙)は即時に廃棄することとして差し支えありません。』

引用元:電子帳簿保存法一問一答 【スキャナ保存関係】 令和6年6月 国税庁 

上記記載の通り、条件を満たす場合には書面の破棄も可能となりましたが、顧問税理士がいる場合は相談し判断するようにしましょう。

まとめ

本記事では、請求書の保存方法や保存年数、保存に関する注意すべきポイントを解説しました。

請求書は紙や電子データ、マイクロフィルムで請求書の保存ができるとわかったのではないでしょうか。保存年数は法人は7年、個人事業主は5年(一部例外あり)と異なるため、確認しましょう。

また、請求書の形式に併せて請求書の保存方法は異なります。

受領した請求書や発行した請求書の控えは、電子帳簿保存法の要件を満たして保存しなければなりません。そのため、従来は発生しなかった紙と電子それぞれでの管理が二重に必要となり、請求書の保存方法が煩雑化することで、結果として経理担当者の業務負担が増加することになりました。

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「月次決算に役立つ情報」編集部

執筆・編集

「月次決算に役立つ情報」編集部

Bill Oneが運営する「月次決算に役立つ情報」の編集部です。請求書業務全般の課題や法対応など、経理課題の解決に導く情報をお届けします。
小野 智博

記事監修者のご紹介

弁護士 小野 智博

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士

保有資格:弁護士

慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

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