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売掛金を回収する方法 | 取引先への督促から法的措置の手順までを解説【弁護士監修】

売掛金を回収する方法 | 取引先への督促から法的措置の手順までを解説【弁護士監修】

売掛金の回収は自社の資金繰りに関わるため、未回収が発生した際には初期対応と状況に応じた適切な手順を踏むことが重要です。

穏便な交渉から内容証明郵便の送付、支払督促や訴訟といった法的措置に至るまで、段階を追ってやるべき対応を明確にしておくことで、スムーズな回収につながります。

本記事では、売掛金が回収できない原因の特定から、状況別の具体的な回収方法までを解説します。

売掛金回収が遅れているときの対応法

売掛金の回収が遅れている場合、まずは支払われない要因を特定します。原因を明らかにすることで、適切な対応方法を検討できます。

契約書や請求書を確認する

売掛金の回収が遅れていたら、まずは取引先と交わした契約書や発行した請求書を確認します。特に支払い条件や支払い期日に間違いがないかを念入りに確認しておくことが重要です。

請求書の発行漏れや記載内容の誤りなど、事務手続き上の不備が原因となっている場合があります。また支払い条件が「月末締め翌月末払い」なのか「月末締め翌々月10日払い」なのかなど、取引先と認識がずれている可能性も考えられます。

このような不備が原因で売掛金の回収が滞ることもあるため、取引先に連絡をする前に、自社で請求書や契約内容を確認することが望ましいです。

新たな取引を一時的に停止し、取引先に連絡する

自社の請求書や契約書に問題がないことが確認できたら、取引先に連絡します。取引先が意図的に支払っていないのか不明であるため、連絡する際は、入金が確認できていない事実を冷静に伝えます

また取引先の資金繰りが悪化している可能性もあります。この場合、新たな取引をしてしまうと、追加の売掛金が発生し、さらに回収が困難になる恐れがあります。そのため、入金が確認できるまで新たな取引を一時的に見合わせることも視野に入れて、慎重に検討します。

取引先と支払い日を確認する

取引先に連絡をして、相手方が支払いに応じてくれる場合は、必ず具体的な支払い日を確認・合意をします。

後で「言った」「言わない」のトラブルを防ぐため、口頭での確認だけでなくメールや書面でも証跡を残しておくと安心です。

もし約束の支払い日を過ぎても入金がない場合は、再度取引先に連絡をします。このときも、感情的にならず冷静な対応を心がけましょう。

契約内容を見直す

売掛金回収の遅延が頻繁に起こるようであれば、今後の取引に備えて契約内容を見直すことも重要です。見直しによって、リスクを減らし、売掛金の未回収を予防することができます。

まずは取引先の与信を見直します。取引先の経営状況や財務状況を定期的に確認し、取引の継続や取引額の調整を検討します。また支払い遅延が起きた場合に備えて、遅延損害金を設定することも有効です。遅延損害金を設定することで、支払い期日を守る動機付けになり得ます。

遅延損害金は、支払い期日を過ぎた翌日から支払いが完了する日までの日数分を計算して請求します。

売掛金回収の流れと法的措置の手順

売掛金回収の流れと法的措置の手順を、4つのステップで説明している図

何度催促しても売掛金の入金がない場合、法的措置も視野に入れて回収を進める必要があります。法的措置にはいくつかの段階があり、状況に応じて適切な方法を選ぶことが大切です。

督促状を内容証明郵便で送付する

取引先に電話やメールなどで催促しても支払いに応じてもらえない場合は、内容証明郵便で督促状を送付する方法があります。内容証明郵便とは、いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送ったかを日本郵便が公的に証明してくれるサービスです。

内容証明郵便で督促状を送る最大のメリットは、催促したという事実が日本郵便によって証明されることです。これにより、万が一法的な手続きに進む際に重要な証拠となり、相手に対応を促す効果も期待できます。

また、督促状には未払いになっている売掛金の金額や、取引日、商品名、数量、単価、支払い期日、振込先を明確に記載します。加えて期日までに支払いがなければ法的な手段を検討する旨を付け加えることで、より強い意志を伝えられます。

内容証明郵便の作成は、文字数や枚数に制限がありますが、郵便局の窓口で手続き方法を教えてもらえます。送付後は、郵便局が保管する謄本と、手元に残る控えを大切に保管してください。

支払督促を行う

内容証明郵便を送っても売掛金回収ができない場合は、支払督促の手続きを検討します。支払督促とは、債務者(お金を払う側)の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てを行い、裁判所から支払いを督促してもらう法的な手続きです。

支払督促は、通常の訴訟と比べて、手続きが比較的簡単で、迅速かつ安価にできるメリットがあります。また書面審査のみで行われるため、裁判所に出向く必要はありません。

手続きとしては、支払督促の申立書を作成し、必要書類を添えて簡易裁判所に提出します。

申立書に不備等がなければ、裁判所は相手方に支払督促を送付します。相手方が受領後2週間以内に異議申し立てを行わなければ、その2週目の翌日から30日以内に仮執行宣言の申立てを行うことができます。

仮執行宣言の申立書に不備等がなければ、仮執行宣言が発付され、相手方に仮執行宣言付支払督促が送達されます。相手方が、仮執行宣言付支払督促正本を受領した日から2週間以内に督促異議の申立てをしないときは、相手方に対して強制執行の手続をとることができます。

ただし支払督促にはデメリットもあります。相手方が異議申し立てを行った場合、自動的に通常の訴訟手続きに移行しますが、この場合に最初から訴訟を選択するよりも時間や手間がかかる可能性があります。相手方の対応を予測して選択することが重要です。

訴訟を行う

支払督促に対して相手方から異議申し立てがあった場合や、最初から訴訟を選択する場合は、裁判所で法的な解決を目指すことになります。訴訟は、裁判官が双方の主張を聞き、証拠に基づいて判決を下す手続きです。

請求金額に応じて、以下の訴訟方法があります。

少額訴訟

60万円以下の金銭の支払いを求める場合に利用でき、原則として1回の審理で判決が出ます。訴訟手続きも比較的容易で、弁護士を立てずに本人だけで進めることも可能です。ただし同一の簡易裁判所での利用は年10回までと制限があります。

通常の訴訟

60万円を超える請求や、少額訴訟の対象外のケースで利用されます。訴状の提出後、口頭弁論が数回行われ、双方の主張や証拠を審理します。より詳細な主張や証拠を提示できる反面、判決までに多くの時間を要します。

簡易裁判所での裁判

訴額が140万円以下の金銭の支払いを求める訴訟は、管轄が簡易裁判所となります。140万円を超える場合は地方裁判所が管轄します。

訴訟は時間や費用の負担がある一方で、裁判所の判決という強い効力を持つため、最終的な回収手段として位置づけられます。弁護士に依頼することで手続きが円滑に進みやすくなります。

強制執行を実施する

裁判所の判決や支払督促の仮執行宣言が出た後も相手方が支払いに応じない場合は、強制執行を実施できます。

強制執行とは、裁判所の力を借りて、強制的に相手の財産を差し押さえ、売掛金として回収する手続きです。

強制執行の対象となる財産は多岐にわたり、相手方の銀行預金や給料、不動産のほか、自動車、機械設備、売掛金などの債権も差し押さえの対象となり得ます。

強制執行を行うには、まず裁判所や公証人によって相手の支払義務が正式に認められた「債務名義」を取得する必要があります。

判決や仮執行宣言付支払督促、和解調書、公正証書などがこれに該当し、通常は強制執行に使用するための執行文の付与も受けます(ただし支払督促や和解調書など、執行文が不要とされる債務名義もあります)。

執行力のある債務名義と送達証明書等を添えて裁判所へ申立てを行うと、預金や給与、不動産など相手方の財産が差し押さえられ、裁判所や執行官により換価され、その代金から債権が回収されます。

強制執行は最終的な手段ですが、未払い状態が長期化するのを防ぐために重要な手続きです。ただし相手方に十分な財産が確認できない場合、強制執行を行っても回収につながらない可能性があるため、事前に財産状況を把握しておくことが重要です。

売掛金回収に関する仕訳処理

売掛金の回収は、経理処理にも正確に反映します。回収できた場合だけでなく、相殺や回収不能になった場合など、いくつかのパターンに応じた仕訳処理が必要です。

売掛金を回収できた場合

売掛金が入金された際は、入金日付けで売掛金の消込を行います。消込とは、売掛金が発生した際に計上した債権を、入金によって消す処理のことです。

例えば売掛金10万円が現金で入金された場合の仕訳は以下のようになります。

借方

貸方

現金

100,000円

売掛金

100,000円

この仕訳によって、資産である現金が増え、同時に資産である売掛金が減ります。これにより、帳簿上で売掛金がゼロになり、回収が完了したことになります。

買掛金と相殺した場合

同じ取引先と売買取引があり、売掛金と買掛金(自社が支払うお金)が発生している場合は、相殺を行うことも検討できます。相殺とは、お互いの債権と債務を差し引いて、差額だけを支払う(受け取る)処理です。相殺によって、金銭のやりとりが少なくなり、経理処理もシンプルになります。

例えば取引先Aに売掛金が50万円あり、取引先Aに買掛金が30万円あるとします。この場合、買掛金30万円を売掛金と相殺し、差額の20万円のみを現金で受け取ります。この相殺を行った際の仕訳は以下のようになります。

借方

貸方

買掛金

現金

300,000円

200,000円

売掛金

500,000円

売掛金が回収不能の場合

売掛金が回収できないことが明らかになった場合、貸倒損失として計上する必要があります。貸倒損失とは、売掛金などの債権が回収できなくなった場合に発生する損失のことです。

ただし売掛金が回収不能になったからといって、すぐに貸倒損失として計上できるわけではありません。貸倒損失として認められるのは、主に2つのケースです。

1つ目は法的措置により債権が消滅した場合で、具体的には破産手続きや民事再生手続きなどで、債権の全額が消滅することが確定したケースです。

もう1つは債権の全額が回収できないことが明らかになった場合です。相手先の経営状況が悪化し、今後の支払いが期待できないケースや、債務者と連絡がつかないケースが当てはまります。

例えば回収不能になった売掛金が30万円あった場合の仕訳は以下のようになります。

借方

貸方

貸倒損失

300,000円

売掛金

300,000円

この仕訳を行うことで、回収不能になった売掛金を帳簿から消し、その分を企業の損失として計上できます。

売掛金の仕訳処理での注意点

売掛金の仕訳処理を行う際には注意点があります。

会計年度をまたぐ計上に注意する

売り上げは、発生主義に基づいて計上するため、売掛金も会計年度をまたぐ計上には注意が必要です。

例えば決算月の末日に商品やサービスを提供し、売掛金が発生した場合、たとえ入金が翌年度になったとしても、当年度の売り上げとして計上する必要があります。売上計上日と入金日がずれることは珍しくないため、売掛金は商品やサービスが提供された時点で計上します。

また締め日が月中である場合、決算月の締め日以降の売り上げについても、忘れずに当年度の売掛金として計上する必要があります。これらの処理は、税務調査でも細かくチェックされるため、正確な管理が求められます。

似た勘定科目と混同しない

売掛金には、未収入金や前受金といった似た勘定科目があります。これらの勘定科目を混同しないように、それぞれの違いを理解しておくことが重要です。

未収金は、営業活動以外で発生した未回収の代金を計上する科目です。例えば土地などの固定資産や有価証券を売却した代金や、賃料の未回収分が当てはまります。それに対して前受金は、サービスを提供する前に受け取った代金を指します。売掛金はサービス提供後に受け取る代金が対象なので、混同しないようにしましょう。

まとめ

売掛金回収は、企業の資金繰りを安定させるために非常に重要な業務です。回収が遅れている場合は、まず自社の契約書や請求書に間違いがないかを確認し、その後に取引先に連絡をして状況を確認することが大切です。

取引先との話し合いで解決できない場合は、内容証明郵便の送付や支払督促、訴訟などの法的措置も視野に入れて対応を進めていく必要があります。

また売掛金の管理を徹底するためには、回収が遅れ始めた時点で与信を見直すことや、取引条件を変更するといった対策も有効です。

売掛金が確実に回収できる体制を日頃から築いておくことで、未回収によるリスクを最小限に抑えることができます。正確な売掛金の仕訳処理を行うことも、企業の経営判断に不可欠です。

回収が遅れている売掛金については放置せず、一つひとつの状況に応じた適切な対応をすることが、企業の財産を守ることにつながります。

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小野 智博

記事監修者のご紹介

弁護士 小野 智博

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士

保有資格:弁護士

慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

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「月次決算に役立つ情報」編集部

執筆・編集

「月次決算に役立つ情報」編集部

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