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適格請求書(インボイス)とは?6つの要件や対応に当たって理解しておくポイントを解説

適格請求書(インボイス)とは?6つの要件や対応に当たって理解しておくポイントを解説

2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、買い手が消費税の仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として適格請求書(以下、インボイス)の保存が必要になりました。

この記事では、インボイスとは何かを説明したうえで、インボイスとして認められるための6つの要件や、インボイスを発行または受領するに当たり押さえておきたいポイントを解説します。

記載要件だけでなく、消費税の計算方法や保存期間、間違いがあった場合の訂正方法なども紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

適格請求書(インボイス)とは

適格請求書(インボイス)とは、売り手が買い手に対して正確な消費税の適用税率や消費税額を伝える手段であり、登録番号などの一定の要件をすべて記載してある書類のことをいいます。要件を満たしていれば、必ずしも請求書である必要はなく、納品書などでもかまいません。

インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」です。適格請求書発行事業者になるためには税務署に登録申請手続きをする必要があります。登録申請手続きは、国税庁のe-Taxソフトを利用すると便利です。

売り手、買い手それぞれにとって、インボイスの有無が経営に与える影響は以下の通りです。

  • 売り手:インボイスを発行できないと購入を避けられる可能性がある
  • 買い手:原則としてインボイスがないと消費税納税額の計算上、仕入税額控除の適用が受けられない(令和11年9月30日までは経過措置あり)

売り手、買い手、どちらにとっても、インボイスを発行・保存することは経営活動に影響を与える大切な事項です。

適格請求書(インボイス)の6つの要件

従来、消費税の適用税率ごとに取引を区分できる「区分記載請求書」があれば、仕入税額控除を適用できました。一方、インボイスでは「区分記載請求書」の内容に加えて、次の項目が記載されている必要があります

  • 登録番号
  • 適用税率の記載
  • 税率ごとに区分した消費税額等

上記の変更を踏まえて、インボイスに記載しなければならない要件は以下の6点です。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称・登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)および税率ごとに区分した消費税
  5. 適用税率
  6. 取引先の氏名または名称

それぞれの要件について、区分記載請求書との違いも合わせて解説します。

適格請求書(インボイス)の6つの要件を示した請求書の例

1.適格請求書発行事業者の氏名または名称・登録番号

インボイスには、適格請求書発行事業者の氏名または名称と、登録番号の記載が必要です。登録番号は、Tから始まる13桁の数字であり、法人であれば「T+法人番号」、個人事業主であれば「T+法人番号と重複しない数字(13桁)」です。

登録番号は税務署に登録申請をすると通知されます。通知書は原則として再発行されないため、紛失しないように注意しましょう。

登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで公表されています。番号から検索、または全件ダウンロードも可能です。

2.取引年月日

取引のあった年月日を記載します。こちらは、従来の区分記載請求書と同様です。

3.取引内容

取引の内容を明記します。軽減税率の対象である場合はその旨も明記しましょう。軽減税率の対象は「※」などの記号で表すことも認められています。

4.税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)および税率ごとに区分した消費税額等

8%(軽減税率)、10%の税率ごとに区分した「消費税額等」を記載します。ただし、対象税率の品目がない場合はあえて「0円」と記載する必要はなく、省略可能です。

インボイス制度では従来と異なり、税率ごとに区分した消費税額等の端数処理が「一つのインボイスにつき、税率ごとに1回ずつ」の方法のみになります。品目ごとに端数処理できなくなるため、注意が必要です。

5.適用税率

税率ごとに区分して合計した対価の額に「適用税率」を記載します。対価の額は税込みでも税抜きでもかまいません。

こちらも消費税額等と同様に、適用税率が8%のみ、または10%のみの取引であれば、取引がない税率については記載の省略が可能です。

6.取引先の氏名または名称

インボイスを受領する方の氏名または事業者名を記載します。

適格請求書(インボイス)における消費税の計算方法

インボイス制度導入後の消費税の計算方法は「積上げ計算」と「割戻し計算」の2つの方法から選択できます。

前述の通り、インボイスでは税率ごとに区分した消費税額等の端数処理が「一つのインボイスにつき、税率ごとに1回ずつ」の方法のみになります。原則としてこのインボイスに記載された消費税額等を積み上げて計算するのが積上げ計算、取引金額の総額を税率で割戻して計算する方法が割戻し計算です。以下、それぞれの計算方法を解説します。

積上げ計算

積上げ計算では、インボイスに記載された消費税額等の合計額に、100分の78をかけて計算します。

積上げ計算は、仕入税額の計算では原則の計算方法ですが、売上税額の計算では特例の計算方法になります。もし売上税額の計算で積上げ計算を選択した場合は、仕入税額も積上げ計算を行う必要がある点に注意が必要です。

なお、積上げ計算はインボイスを基に計算するため、売上税額を積上げ計算するためには適格請求書発行事業者でなければなりません。

割戻し計算

割戻し計算は、税率ごとに区分した税込みの取引金額の合計額に、108分の100または110分の100をかけて税率ごとの課税標準額を算出し、さらにそれぞれの税率(7.8%または軽減税率対象の場合は6.24%)をかけて税額を計算する方法です。

売上税額の計算では原則の計算方法ですが、仕入税額の計算では特例の計算方法になります。売上税額の計算で割戻し計算をしていれば、仕入税額は積上げ計算と割戻し計算のいずれかを選択することができます。

適格請求書(インボイス)対応で理解しておきたいポイント

適格請求書(インボイス)について理解しておきたいポイントを「売り手(インボイスを発行する側)」「買い手(インボイスを受領する側)」それぞれの立場から解説します。

売り手(インボイスを発行する側)が押さえておきたいポイント

インボイスを発行するにあたり、押さえておきたいポイントは以下2点です。

  • 適格請求書発行事業者になることが、インボイス発行の条件
  • 一定期間の保存義務がある

それぞれ詳細を解説します。

適格請求書発行事業者のみが発行できる

インボイスを発行するためには、適格請求書発行事業者になり、登録番号を得ることが必要です。適格請求書発行事業者になると、消費税の課税事業者となり、消費税の申告と納税が必要となります。

現在免税事業者であっても、適格請求書発行事業者になれば課税事業者になり、売上金額がいくらであっても消費税の申告と納税が必要です。金銭的負担や、事務作業の負担を把握しておきましょう。

保存期間義務を押さえておく

発行したインボイスは、写しを一定期間保存する必要があります。保存期間は、課税期間末日の翌日から2月を経過した日から7年間です。

保存すべき「写し」は、交付したインボイスのコピーだけでなく、記載事項が確認できる程度の記載がある一覧表や明細表でもかまいません。

売り手側だけでなく、買い手側も同様の保存義務があります(詳細は受領側の項目で解説)。

買い手(インボイスを受領する側)が押さえておきたいポイント

インボイスを受領するにあたり、押さえておきたいポイントは以下4点です。

  • インボイスの要件を満たす記載があるか確認する
  • 消費税の計算式が正しいか確認する
  • 一定期間の保存義務がある
  • 誤りや不備がある場合には、修正を依頼する

それぞれ詳細を解説します。

受領した書類が適格請求書の要件を満たしているか確認する

インボイスの保管が仕入税額控除適用の要件であるため、受領した書類がインボイスの要件を満たすかどうかを確認することが大切です。もし要件を満たさない場合はインボイスとして認められず、消費税の税負担が増えてしまいます。

確認するポイントは主に以下の通りです。

  • 前述した6つの記載要件がすべて正しく記載されているか
  • 登録番号が正しいものか

登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで公表されており、照会が可能です。しかし手動で照会すると、確認作業の負担が重くなることが想定されます。

検算する必要がある

インボイス制度では、従来の区分記載請求書とは異なり、税率ごとに区分した消費税額等の端数処理が「一つのインボイスにつき、税率ごとに1回ずつ」のみになりました。端数処理の仕方が正しいかを確認しましょう。

そして、インボイスに記載された税区分ごとの消費税額、請求金額の合計などが合っているかを検算してください。数字が誤っていると、インボイスとして認められません

売り手(インボイスを発行する側)と同様に保存期間義務を押さえておく

受領したインボイスは、売り手側同様に一定期間保存する必要があります。保存期間は、課税期間末日の翌日から2月を経過した日から7年間です。

もしインボイスを電子データで受領した場合には、電子帳簿保存法に従った保存が必要です。2022年1月より電子帳簿保存法が改正され、原則として電子データで受領した書類は、電子データのまま保存することになりました。電子帳簿保存法にのっとった保存、管理が必要です。

誤りや不備があった場合には発行元に修正を依頼する

受領したインボイスに誤りや不備があった場合は、発行者へ修正・再度交付を依頼してください

ただし、受領したインボイスに買い手が自ら修正を加え、修正した事項を売り手に確認を受けたものを保存した場合でも、インボイスとして認められます。その際「売り手に確認した旨と日付」を明記することが大切です。

また、修正前のインボイスを正しいものとしないよう、修正部分を明記するか、適切に管理しましょう。

まとめ

以上、適格請求書(インボイス)として認められる6つの要件、インボイスを発行または受領するに当たり押さえておきたい基本的なポイントを解説しました。

インボイスは、従来の区分記載請求書とは記載が必要な要件が異なります。このため、請求書を発行する側も受領する側もインボイス制度開始をきっかけに経理業務が複雑になり、業務負荷が高まりました

  • 売り手側(発行側):インボイスを要件に沿って正確に作成することが必要
  • 買い手側(受領側):インボイスの要件を満たしているかチェックしたり、不備がある場合には修正を依頼したりすることが必要

業務を効率化するためには、組織体制の見直しやシステムの導入が有効です。

Bill Oneは、適格請求書(インボイス)の受領、発行、ともに対応したインボイス管理サービスです。以下のような特徴で、インボイスに関する業務を効率化できます。

【買い手(受領側)】

  • インボイスをデータ化し、要件を満たしているかを自動でチェック
  • 国税庁のシステムとの連携で、登録番号の照会が可能
  • 消費税額の検算
  • 電子帳簿保存法に対応した電子保存が可能

【売り手(発行側)】

  • システム上のフォーマットに沿うことで、要件を満たしたインボイスを作成・発行が可能
  • 紙・電子の両方の発行に対応
  • 電子帳簿保存法の要件を満たして請求書控えを電子保存することが可能

インボイスを発行する場合も、受領する場合も、自動化や電子保存により業務効率化が可能です。インボイス制度に正確に対応し、安心して業務を遂行するためにも、Bill Oneの導入をぜひご検討ください。

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「月次決算に役立つ情報」編集部

執筆・編集

「月次決算に役立つ情報」編集部

Bill Oneが運営する「月次決算に役立つ情報」の編集部です。請求書業務全般の課題や法対応など、経理課題の解決に導く情報をお届けします。
小野 智博

記事監修者のご紹介

弁護士 小野 智博

弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士

保有資格:弁護士

慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、企業の海外展開支援を得意とし、日本語・英語の契約審査サービス「契約審査ダイレクト」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」

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