- 経費精算
小口現金の廃止で業務はどう変わる?メリット・デメリットと代替方法を解説
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小口現金とは経費の精算に備えて会社にストックしておく現金を指し、従業員が立替経費を精算する際に小口現金から支払うことを小口精算といいます。
近年、不正利用や盗難のリスク、業務効率化の観点から、小口現金を廃止する企業が増加しています。
本記事では小口現金を廃止すべき理由や、廃止する際の注意点をまとめました。また、小口精算の代わりとなる銀行振込や、法人カードを用いた精算方法についても紹介しています。ぜひ最後までお読みください。
小口現金を廃止する3つのメリット

今回は、小口現金を廃止するメリットを3つ紹介します。
- 盗難や紛失、不正利用の防止につながる
- 経理担当者の負担を軽減できる
- 精算時の金額授受に関するトラブルを防止できる
1.盗難や紛失、不正利用の防止につながる
小口現金は社内に現金を置く必要があるため、紛失や盗難、不正利用のリスクがあります。
このようなリスクに対する最も効果的な対策は、小口現金そのものを廃止することです。職場で管理する現金を排除することにより、紛失や盗難のリスクを軽減し、より安全で透明性の高い精算の仕組みを構築できます。
2.経理担当者の負担を軽減できる
経理担当者の業務負荷を軽減する方法としても、小口現金の廃止は有効です。小口現金の管理には、次のような業務プロセスが存在します。
- 日々の残高確認
- 精算申請書類の確認
- 現金の受け渡し対応
- 小口現金出納帳への記帳と照合
管理にまつわる作業自体は単純なものの、精算申請のタイミングで突発的に作業が発生するため、経理担当者は業務を中断して対応せざるを得ません。小口現金の廃止は、経理担当者が本来の業務に集中できる環境を作ることにつながります。
3.精算時の金額授受に関するトラブルを防止できる
小口現金を廃止できれば、精算時に発生しがちな現金の授受や、記帳ミスによるトラブルも回避可能です。
小口現金は紙の帳簿やExcel上で管理することが多く、現金の数え間違いや記帳ミスがつきものです。現金残高に差異が生じた場合、原因を特定するために、申請から支払いまでのプロセスを細かく確認しなければならず、余計な手間が発生します。
こうした問題を根本的に解決するには、小口現金の廃止が最善の策です。
小口現金を廃止する3つのデメリット

小口現金を廃止するには、立替経費の精算方法を銀行振込に変更する必要があります。
その場合、小口現金によってもたらされるリスクの多くが軽減される一方、新たな課題も考慮しなければなりません。
- 従業員が経費を立て替える期間が長くなる
- 振込精算による経理担当者の事務負担が発生する
- 振込手数料が発生する
それぞれ詳しく説明します。
1.従業員が経費を立て替える期間が長くなる
小口現金を廃止し、小口精算を振込精算に移行すると、精算申請から入金までに時間がかかるため、従業員は一時的に経費を立て替えなければなりません。
給与水準や家計の状況によっては、立替払いした金額が生活費やカードの支払いに影響を与えることがあります。従業員に金銭面での不安や心理的な負担を強いる可能性があるため、制度設計には十分な配慮が必要です。
2.振込精算による経理担当者の事務負担が発生する
振込精算には各従業員の経費申請を確認し、指定口座へ送金するプロセスが発生するため、小口現金の管理とは異なる種類の事務作業が発生します。
特に大きな問題として、作業が締め日付近に集中することが挙げられます。多くの企業では、経費精算を特定の締め日ごとに行うため、経理担当者の業務負担が一気に増大します。振込が遅れると従業員からの問い合わせが発生し、さらに負担が増加する可能性もあります。
3.振込手数料が発生する
小口現金で精算する場合、現金の受け渡しにコストは発生しません。しかし振込精算へ移行すると、従業員の銀行口座への振込ごとに手数料がかかります。
手数料は振込のタイミングを、給与と同時にすることで削減可能です。一方で、申請から振込までの期間が長くなると、従業員の金銭負担が増加します。小口現金を廃止する際は、コスト削減と従業員への配慮のバランスを考慮した、振込頻度の設定が重要です。
小口現金を廃止した場合の運用

小口現金を廃止すると、経費精算や取引先への支払い方法の見直しが必要になります。これまで現金で対応していた支払いについて、新たなルールに基づいて運用しなければなりません。
ここからは小口現金を廃止した場合の支払い方法について、用途ごとに説明します。
- 従業員の立替経費
- 接待や慶弔費などの高額な立替経費
- 切手や印紙の購入
- 取引先への支払い
詳しく見ていきましょう。
立替経費の精算は口座振込に一本化する
小口現金を廃止する場合、立替経費の支払い方法は口座振込に変更するのが一般的です。
振込精算を導入している多くの企業では、1件ごとに都度振り込むのではなく、締め日を設定し、一定期間の申請分をまとめて処理する運用が採用されています。振込回数を減らすことで、事務負担と手数料の削減につながります。
接待や慶弔費などの高額な経費には仮払いを活用する
高額な経費(例:接待交際費、慶弔費、出張費など)の支払いには、仮払い制度の導入を検討しましょう。
仮払いとは、事前に従業員からの申請に基づいて一定額の現金を支給し、後日、領収書を提出させた上で差額を清算する方法です。高額な経費を立て替える必要がなくなるため、従業員の金銭的負担を軽減できます。
ただし、仮払い制度を導入すると、未精算の仮払金が増えるリスクがあるため、適切な管理が不可欠です。具体的には、以下のような運用ルールを定める必要があります。
- 申請から精算までの期限を明確に設定する(例:仮払い後7日以内に精算を完了させる)
- 未精算の仮払金が一定期間を超えた場合は督促を行う
- 仮払いの残高確認を定期的に実施し、不正利用を防ぐ
管理を徹底することで、経費精算の負担を減らしながらも、不正や管理ミスを防止できます。
切手や印紙の購入方法を立替経費に変更する
小口現金を廃止すると、切手や印紙の購入方法も見直さなければなりません。これまでは経理担当者が小口現金でまとめて購入し、社内でストックしておくケースが一般的でしたが、今後は必要な分を都度購入し、立替精算をする必要があります。
しかし、切手や印紙は現金同様に不正利用や横領のリスクがあるため、立替精算へ移行する際には、以下のような管理ルールの見直しが求められます。
- 購入時の領収書提出を義務付ける
- 購入した切手・印紙の数量を台帳に記録し、ダブルチェックを徹底する
- 一定額以上の購入は、事前承認を義務化する
とくに切手や印紙は社内でストックされることが多く、適切な管理が行われていないと、従業員が私的に流用する可能性もあります。立替経費で購入する場合も、適切な運用ルールを整えることが重要です。
現金払いの取引先は、口座振替に変更する
一部の取引先では、現金払いでの取引を求められる場合があります。しかし、小口現金を廃止する以上、こうした取引先に対する支払い方法は口座振替へ変更しなければなりません。変更する際には、以下の点を事前に検討の上、取引先と協議する必要があります。
- 現金払いを求める取引先のリストアップ(特定の業者だけ現金払いが残るケースがあるため)
- 口座振替への変更に伴う手数料負担をどちらが負担するか
小規模な取引先や個人事業主との取引では、現金払いを前提としているケースが多いため、スムーズな移行が難しいケースがあります。取引先との関係性を考慮しながら、口座振替を推進しましょう。
小口現金の廃止後は法人カードの導入がおすすめ

小口現金を廃止し、経費の精算方法を振込に変更すると、従業員や経理担当者にさまざまな負担がかかります。そこで有効なのが、法人カードの活用です。
ここからは、小口現金の廃止後に法人カードの導入をおすすめする理由を解説します。
法人カードとは
法人カードとは、会社が経費の支払いに使うクレジットカードのことです。個人のクレジットカードとの大きな違いは、会社の銀行口座と結びついている点にあります。
社員が法人カードで支払いをすると、利用額は直接会社の口座から引き落とされます。社員が立て替える必要はなく、経費精算の手間を大幅に減らせる点が特徴です。経理担当者の事務負担軽減や現金管理リスクの低減にもつながるため、多くの企業で導入が進んでいます。
法人カードを導入すべき理由
法人カードを導入する最大のメリットは従業員の立替経費を大きく減らせる点です。
出張費や備品購入など、普段クレジットカード払いができる経費なら、従業員が自己負担せずに支払いが可能です。会社の銀行口座から直接的に支払われるため、従業員は精算申請をする必要がなくなり、業務の効率化につながります。
Sansan株式会社の調査によればインボイス制度の開始によって、経理担当者、経費を申請する側の非経理担当者ともに立替精算の事務負担が増えていると回答しています。


参照:Sansan株式会社|「Sansan、「経費精算に関する実態調査」を実施〜インボイス制度で負担増、一社あたり月1500件の立替が発生。約3割が経費の不正利用を見聞きしたことがあると回答~」
経理担当者においても、法人カードの利用明細から金額や支払い先を把握できるため、経費の仕分け作業など、経費精算にまつわる業務の効率化が可能です。
小口現金廃止後の精算方法を徹底比較

これまで小口現金を廃止する場合の精算方法として、立替精算と法人カードの導入といった2つの方法を紹介しました。これらの方法をあらためて次の6つの観点で比較しました。
- 現金管理の手間
- 不正リスク
- 従業員の立替負担
- 精算までのスピード
- 記録の正確性
- 経理業務の効率

小口現金を廃止し振込精算に移行することで、不正リスクは防止できる一方、精算処理自体はなくならないため、事務負担の軽減にはつながりにくいでしょう。また従業員の立て替えによる金銭的負担が増加する点にも注意が必要です。
法人カードを導入した場合、カードの紛失する恐れはありますが、私的利用のリスクは立替精算と変わりません。むしろクレジットカード払いが可能な支払い先においては、立て替え行為が発生しにくいため、立替精算にまつわる業務負荷を大幅に削減できます。
まとめ
今回は、小口現金の廃止に関するメリットとデメリット、そして廃止後の運用方法について詳しくお伝えしました。小口現金の廃止には次のようなメリットがあります。
- 盗難や紛失、不正利用の防止につながる
- 経理担当者の負担を軽減できる
- 精算時の金額授受に関するトラブルを防止できる
廃止後の運用としては、
- 立替経費の精算は口座振込に一本化する
- 接待や慶弔費などの高額な経費には仮払いを活用する
- 切手や印紙の購入方法を立替経費に変更する
- 現金払いの取引先は、口座振替に変更する
などの対応が必要です。
小口現金の廃止後は立替精算だけでなく、法人カードを活用することで従業員の金銭的負担を減らしながら、経費精算の手間を大幅に削減できます。
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部