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【2025年最新】紙の請求書はどうする?電子帳簿保存法の対応や使い続ける時の注意点
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電子帳簿保存法が改正され、電子取引の場合は電磁的記録(電子データ)による保存が義務付けられました。DXによる業務効率化が進む中、紙の請求書を使い続けるべきか悩む企業も多いでしょう。
この記事では、紙の請求書を使い続けるメリット・デメリットや、電子化の要否などを紹介します。改正電子帳簿保存法で紙の請求書が廃止になるのか、紙で受け取った請求書の保存方法などもまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
紙の請求書は廃止になる?

近年で請求書に関する法改正が頻繁にあったため、「紙の請求書は廃止になるの?」と不安に感じている方もいるかもしれません。
結論、紙の請求書そのものは廃止されていませんが、電子取引をした書類は電子データでの保存が必要です。以下で詳しく解説します。
紙の請求書自体は廃止されていない
2024年1月1日より完全義務化となった「電子取引の電子データ保存」に伴い、「紙の請求書が廃止になるの?」と疑問に感じている方も多いかもしれません。しかし、2025年5月現在、紙の請求書自体は廃止されていません。
紙での請求書発行はもちろん、請求書業務でも、紙の状態で受け取った請求書はそのまま紙で保存することが可能です。
請求書電子保存が義務化(2024年1月〜)
一方で、請求書電子保存の要件が変更になった点を押さえておきましょう。電子帳簿保存法の改正に伴い、2024年1月より、電子取引をした書類は電磁的記録(電子データ)による保存が義務化されました。
つまり、自社で請求書を紙で保存していたとしても、「請求書を電子データで受け取った場合は電子データで保存しなければならない」ということです。紙での請求書保存自体は可能であるものの、取引先が電子データでの発行にしか対応していない場合、請求書システムを導入する必要が生じるケースもあります。
紙の請求書を使い続けるメリット

紙の請求書を使い続けたいと考えている企業担当者の方もいるかもしれません。以下では、紙の請求書を使い続けるメリットを見てみましょう。
- 改ざんのリスクが少ない
- ITが苦手な社員が困らない
1. 改ざんのリスクが少ない
まず挙げられるのは、改ざんのリスクが少ないことです。
紙の請求書は物理的な書類として存在するため、データのように簡単に改ざんされるリスクが少ないとされています。特に手書きの請求書では筆跡などの特徴が残るため、不正が発覚しやすく、デジタルデータのように簡単に修正が加えることは難しいでしょう。
2. ITが苦手な社員が困らない
ITが苦手な社員が困らないこともメリットです。紙の請求書であれば、システムを使った操作が必要ありません。ITに不慣れな社員の多い企業でも、これまで通り処理を進めることができます。
新しいシステムは便利である一方、導入時に社員の教育や研修が必要となり、社員のスキルによっては慣れるまでに時間がかかることもあります。しかし、紙の請求書であれば従来の方法で運用を続けられるため、社員に負担をかけずに業務を行えます。
紙の請求書を使い続けるデメリット

一方で、紙の請求書を使い続けるデメリットも多くあります。紙の請求書を使い続けることを検討している場合は、以下の点に注意しましょう。
- 再発行・修正に工数がかかる
- 印刷・郵送などにコストがかかる
- 保管・管理が大変
- 過去の請求書を探しづらい
- 必要に応じて出社が必要
1. 再発行・修正に工数がかかる
紙の請求書は一度発行すると修正が難しく、訂正が必要になった場合には手間がかかります。たとえば金額や取引内容に誤りがあった場合、修正するために新しい請求書を作成し、再度印刷・郵送を行わなければなりません。
一方、電子請求書であればシステム上で修正し、すぐに送信が可能です。紙の請求書を発行し続けていると、このようなデメリットには気付きにくいかもしれません。しかし、電子化が進んでいる取引先にとっては「やり取りや管理が大変」「保管に手間がかかる」など、不満が出るリスクがあります。
2. 印刷・郵送などにコストがかかる
紙の請求書を発行するには、印刷用紙やインク代、封筒、切手代など、さまざまな費用が発生します。特に大量の請求書を発行する企業では、一つひとつのコストは小さくても、積み重なると大きな負担となります。
電子請求書であれば、システム導入の費用はかかるものの、備品の費用がかからなくなります。特に郵送費用は取引先が増えるほど負担が大きくなるため、慎重に検討しましょう。
3. 保管・管理が大変
紙の請求書を使い続ける場合、保管のために物理的なスペースが必要です。請求書は7年〜10年間の保存が必要なため、年数が経つと膨大な量の書類が蓄積され、管理が煩雑になりやすいです。請求書には重要な情報が含まれているため、不要になった請求書を破棄する際も慎重な処理が必要です。
4. 過去の請求書を探しづらい
過去の請求書を探しづらいことも、紙の請求書の大きなデメリットです。
請求書を電子化して管理する場合、過去の請求書を遡ってすぐに検索・閲覧できます。システム上で管理できるため、保管場所を探し回る必要もありません。
一方、紙の場合はこうした機能がないため、業務のスピードが落ちてしまう可能性があります。ファイリングして整理していたとしても、必要な情報を見つけるためには時間と手間がかかります。
5. 必要に応じて出社が必要
紙の請求書を使用している場合、発行の際にオフィスで印刷や封入をしなければならなかったり、受け取るために出社が必要になったりと、出社しなければならないケースが多くなります。電子請求書であればオンラインで確認や処理ができますが、紙の請求書ではそうはいきません。
テレワークや働き方改革が進む中、出社を前提とした働き方になってしまうと、社員から不満が生じたり、業務の柔軟性が損なわれたりする可能性があります。
【電子帳簿保存法】紙の請求書を受け取った場合の保存方法

紙の請求書を受け取った場合の保存方法を解説します。受け取った紙の請求書をスキャンして電子データで保存する場合、改正された電子帳簿保存法に沿って保存をしなければなりません。
また、自社が紙の請求書を発行している場合も、取引先の管理状況によっては相手に手間をかけてしまう可能性があります。受け取り側の対応について、流れやおおまかな保存方法を理解しておきましょう。
紙で受け取った場合は「そのまま保存」or「スキャナ保存」

取引先から紙の請求書を受け取った場合、紙のまま保存しておくことも、スキャンして電子保存することも可能です。
紙のまま保存する場合は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間が義務付けられています。適切にファイリングして、管理しやすい形で保管しましょう。
一方、電子化して保存する場合は、電子帳簿保存法の「スキャナ保存」の要件を満たすことが必要です。スキャナ保存の要件を満たしている場合、紙の原本を破棄しても問題ありません。
スキャナ保存の要件については、以下の記事で詳しく解説しています。
電子請求書を受け取った場合は紙での保管はNG
一方、取引先から電子データとして請求書を受領した場合は、電子データのまま保存する必要があります。電子帳簿保存法により、紙に印刷して保存することは認められていないため、注意しましょう。
詳しくは、以下の記事も参考にしてみてください。
紙の請求書は電子化するべき?

請求書の電子化が進む中で、「自社でも請求書を電子化した方が良いのだろうか」と疑問を持つ企業も多いでしょう。
2025年3月現在は、紙の請求書を使い続けること自体は認められています。しかし、今後の法改正や業界の動向を考えると、電子化を視野に入れておくことが望ましいといえます。以下でその理由を解説します。
紙の請求書を使い続けること自体は可能
法律上、現時点では紙の請求書の発行・受領を続けること自体は可能です。しかし、電子帳簿保存法の改正やデジタル化の流れを考えると、今後は紙の請求書の利用が難しくなる可能性があります。取引先が電子化を進めてしまうと、自社だけ紙の請求書を使用し続けることは現実的ではないかもしれません。
また、法改正によって紙の請求書に関するルールが厳しくなる可能性もあります。電子取引に関する保存要件が変更されたように、紙の請求書の保管方法にも変更が加えられる可能性は否定できません。
企業の競争力を高めるために電子化はおすすめ
時代の流れだけでなく、企業の競争力を高めるためにも電子化はおすすめです。
先に触れた通り、請求書の電子化には多くのメリットがあります。電子化を進めることでコスト削減や業務効率化が実現し、法令遵守の観点からも適切な対応を実現しやすくなります。
電子請求書を導入することで、請求書の発行や受領に関する業務のスピードが向上します。社員の業務負担が減り、他の重要な業務に注力できるようになることで、企業全体の業務効率も高まるでしょう。
また、人材確保の面でも請求書の電子化は重要です。求職者の多くは、ペーパーレス化が進んだ働きやすい職場環境を求めています。テレワークや柔軟な働き方に対応できる職場であれば、既存社員のモチベーションも高まるはずです。
企業の競争力を高めたい場合、請求書は電子化した方がよいでしょう。
紙の請求書に関するよくある質問

最後に、紙の請求書に関するよくある質問をまとめました。
- 紙の請求書と電子請求書の両方を受け取った場合はどうする?
- 紙の請求書の保存期間は?
- インボイス制度で紙の請求書はどうなる?
- 紙の請求書は電子化が必須?
1. 紙の請求書と電子請求書の両方を受け取った場合はどうする?
紙の請求書と電子請求書の両方を受け取った場合、内容がまったく同じであれば、基本的にはどちらか一方のみを保存すれば問題ありません。ただし、紙の請求書と電子請求書の間に金額や取引内容に違いがある場合、それぞれを別の書類として保存する必要があります。
2. 紙の請求書の保存期間は?
紙の請求書も電子請求書も、法律で定められた保存期間は、その事業年度における確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間です。ただし、一定の条件を満たした法人は、10年間の保存義務が発生するケースもあります。例えば、2018年4月1日以降に発生した欠損金の繰越控除を適用する場合などが該当します。
なお、請求書の保管期間については、以下の記事でも詳しく解説しています。
3. インボイス制度で紙の請求書はどうなる?
インボイス制度のもとでは、適格請求書発行事業者は、自社が発行した適格請求書の控えを保存する義務があります。紙の請求書を発行した場合、発行者はその控えを作成し、適切に保管しなければなりません。
4. 紙の請求書は電子化が必須?
紙の請求書は現在も有効な書類であり、電子化が必須というわけではありません。企業が希望すれば、従来通り紙の請求書を発行・受領することは可能です。
ただし、注意しなければならないのは「電子で受領した請求書は電子で保存しなければならない」ということです。取引先が電子請求書を導入している場合、受け取る側も電子化に対応せざるを得ない状況になります。企業によっては、取引先の要望に応じて請求書の電子化を進めなければならないケースも増えてくるでしょう。
まとめ
紙の請求書について、使い続けるメリットやデメリットを踏まえて解説しました。
紙の請求書を使い続けることは、法律上は可能です。しかし、インボイス制度や電子帳簿保存法の影響もあり、今後は電子請求書の導入がさらに進むことが予想されます。企業としては、法令遵守を徹底しながら、業務効率化やコスト削減の観点からも、電子化の準備を進めておくのが賢明であるといえるでしょう。
請求書の電子化を負担なく進めるには、自社に適した請求書システムを導入することが大切です。一口に請求書システムといってもさまざまなサービスがあるため、自社のニーズに合ったものを導入しましょう。
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記事監修者のご紹介
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
保有資格:弁護士
慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部