- 請求書
請求書業務の基本的な流れとは?業務効率化の方法をわかりやすく解説
公開日:

企業の経理担当者にとって請求書業務は欠かせない業務の一つですが、煩雑なプロセスに悩まされている方も多いのではないでしょうか?
請求書業務を効率化するには、発行側、受領側それぞれの業務の流れを理解して、業務フローの標準化やITツールの導入などの対策を行う必要があります。
本記事では、請求書業務の基本的な流れと各書類の役割をわかりやすく解説するとともに、業務効率化のためのポイントを紹介します。
請求書発行業務の流れ

請求書発行業務は、商品やサービスの対価を確実かつスムーズに回収するための重要なプロセスです。ミスを防止するためには、以下のステップごとに正確な作業を行う必要があります。
ステップ1.請求金額の確定
まずは、取引内容に基づいて請求金額を確定させます。商品やサービスの単価、数量、適用される割引、消費税などを正確に計算し、最終的な請求金額を算出します。
ステップ2.請求書の作成
請求金額が確定したら請求書を作成します。請求書には以下の項目を漏れなく記載することが必要です。
- 請求書番号
- 請求書の宛先(取引先の氏名または名称)
- 発行者の情報(適格請求書発行事業者の氏名または名称・登録番号を含む)
- 請求日(発行日)
- 取引年月日
- 取引内容
- 適用税率
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)および消費税額
- 金額(総額)
- 振込期日
- 振込先
- 備考
ステップ3.請求書の送付
作成した請求書を取引先(請求先)に送付します。送付方法は郵送、FAX、メール、請求書発行システムの利用などが一般的です。基本的には、取引先と合意した方法で送付します。
ステップ4.入金確認
請求書に記載した支払い期限までに、請求金額が正しく振り込まれたかを確認します。とくに、入金期日や入金金額に誤りがないかどうか、重点的なチェックが必要です。
ステップ5.消込処理
入金が確認できたら、請求データと入金データを照合して消込処理を行います。これは、後の監査対応に備えるうえでも非常に重要な作業です。
ステップ6.督促
支払い期限を過ぎても入金が確認できない場合は、請求先に督促を行います。まずは電話やメールなどで状況を確認し、支払いを直接促すことが大事です。場合によっては、督促状の送付も検討します。
請求書受領業務の流れ

請求書受領業務は、自社が商品やサービスを受け取った際に、取引先から送付される請求書を適切に処理するプロセスです。正確な支払い処理は企業の信頼性を維持し、円滑な取引関係を構築するうえで欠かせません。
ステップ1.請求書の受領
まずは、取引先から送られてくる請求書を受領します。請求書は郵送、FAX、メールなどさまざまな方法で送られてくるため、事前にどの方法を用いるか合意しておくとスムーズです。
ステップ2.請求内容の確認
受領した請求書の内容(請求金額、取引内容、支払い期日など)が、自社の発注内容や契約内容と合致しているかを確認します。もし不明点や誤りがあれば、速やかに取引先に確認する必要があります。
ステップ3.支払い処理
請求内容に誤りがなければ、請求書に記載されている支払い期限までに請求金額を支払います。支払い方法は、銀行振込、口座振替、クレジットカード払いなど、取引先との間で取り決めた方法で行います。
ステップ4.支払い通知
支払いが完了したら、請求書の発行側(取引先)に対して支払いが完了した旨を通知します。このステップは必須ではありませんが、通知を行うことで、相手によりていねいな印象を与えられるでしょう。支払い通知は、メールやFAXなどで行うのが一般的です。
ステップ5.請求書の保管
支払い済みの請求書は、証憑書類として一定期間保管する必要があります。請求書の保管期間は原則として、該当事業年度の確定申告提出期限の翌日から7年間です。
請求書業務に関係する各書類の役割

請求書業務を円滑に進めるためには、請求書だけでなく、見積書、注文書、納品書など、関連する各書類の役割を理解しておくことが重要です。ここではそれぞれの書類の役割と、請求書との関係性について解説します。
見積書
見積書は、商品やサービスを提供する前に、その価格や納期などの条件を顧客に提示し、合意を得るための書類です。
見積書には提供する商品・サービスの内容、数量、単価、合計金額、有効期限などを記載します。顧客が見積書の内容を確認し、合意することで、その後の取引がスムーズに進みます。
見積書を作成する際は、金額や項目に誤りがないかしっかりと確認することが重要です。
注文書と注文請書
注文書は、見積書の内容に基づいて、正式に商品やサービスの発注を依頼する際に作成する書類です。注文書には、発注する商品・サービスの内容、数量、単価、合計金額、納期、支払い条件などを記載します。
一方の注文請書は、注文書の内容を確認し、注文を承諾したことを証明する書類です。注文請書には、注文書の内容に加えて、注文を承諾する旨を明記します。
注文書と注文請書は、双方で内容を確認し、取引内容の認識の齟齬を防ぐ役割を果たします。
納品書と検収書
納品書は、商品やサービスを納品する際に、納品内容を記載して顧客に渡す書類です。納品書には納品した商品やサービスの内容に加え、数量や納品日などを記載します。
これに対し検収書は、顧客が納品された商品やサービスの内容を確認し、問題がないことを確認した証として発行する書類です。
納品書と検収書は、納品物が正しく受領されたことの証明となり、後のトラブルを防ぐ役割を果たします。
請求書
請求書は、提供した商品やサービスの対価を請求するために発行する書類で、請求金額、取引内容、支払い期日、振込先などの情報が記載されます。
加えて、2023年10月から開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)においては、仕入れ側が仕入税額控除の適用を受けるためには、供給側が発行する請求書が「適格請求書(インボイス)」の要件を満たす必要があります。
適格請求書の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
請求書業務の流れを効率化するには?

請求書業務は、日々の業務の中でも手間や時間がかかる作業の一つですが、業務フローの見直しやツールの導入など、工夫次第で大幅な効率化が可能です。ここでは請求書業務を効率化するための具体的な方法を紹介します。
業務フローの標準化
請求書の発行・受領業務では、各書類のテンプレートを活用して、業務フローを標準化することで作業負担を軽減できます。たとえば請求書、見積書、納品書などのテンプレートを事前に作成しておくことで、毎回一から書類を作成する必要がなくなり、記入ミスも防げます。
さらに、フロー全体を標準化することで以下のようなメリットが得られます。
- ミスの削減:誰が作業しても同じ品質の書類が作成できるようになり、人為的なミスを減らせる
- 確認の効率化:書類の内容や形式が統一されるため、確認作業がスムーズになる
- 属人化の防止:特定の担当者しか業務内容を理解していない、という状況を防ぎ、業務の引き継ぎも容易になる
このように、標準化は請求書の発行側と受領側の両方にとってメリットがあります。
ITツールの導入
請求書の発行業務ではITツールの導入が効果的です。多くのツールでは請求書の作成から送付、入金管理までを一元的に行うことができます。
クラウド型請求書発行システムの主な機能は以下の通りです。
- 自動計算:商品の単価や数量、消費税などを自動で計算し、ミスのない正確な請求書を短時間で作成できる
- 書類の一元管理:作成した請求書をクラウド上に保存し、過去の請求書も日付や取引先などの条件で簡単に検索・閲覧できる
- 電子送付の効率化:作成した請求書をツール上から直接メールやシステム連携で送付でき、郵送コストと時間を削減できる
- 入金状況の可視化:銀行口座と連携して入金状況をリアルタイムで確認でき、未入金の把握や督促業務を効率化できる
一方、クラウド請求書受領システムの主な機能は以下の通りです。
- データ自動取込:受領した請求書のデータを自動で取り込み、手入力の手間とミスを削減できる
- 承認ワークフローの効率化:受領した請求書の内容確認や承認プロセスをシステム上で完結させ、承認状況を可視化できる
- 支払いスケジュール管理:支払い期日を自動で管理し、適切なタイミングでの支払い処理を促進、遅延リスクを軽減できる
- 会計システム連携:承認済みの請求書データを会計システムに自動連携させることで、二重入力を防ぎ経理業務全体の効率を向上できる
ツールを選ぶ際は、自社の業務フローに合っているか、必要な機能が備わっているか、サポート体制は充実しているかなどを確認しましょう。
アウトソーソング
請求書の発行側であれば、業務の一部または全部を外部に委託することも効率化の有効な手段です。たとえば、請求書発行代行サービスのように、請求書の印刷や送付を含め一連の請求書業務を依頼できます。
アウトソーシングは、とくに請求書の発行件数が多い企業や、人手が不足している企業にとって有効です。アウトソーシング先を選ぶ際は、実績や料金体系、セキュリティー対策などを比較検討しましょう。
なお、経理業務全般を委託する経理アウトソーシングなら、請求書の発行側だけでなく受領側の企業にとっても大きなメリットがあります。また経理全般を委託しなくても、請求書を代理で受け取る(代理受領)サービスを利用することも可能です。
経理アウトソーシングの詳細については、こちらの記事をご覧ください。
チームで業務改善に取り組む
発行側か受領側かに関係なく、請求書業務の効率化はチーム全体で取り組むことが重要です。
まずは業務分担と責任範囲を明確にしましょう。誰がどの業務を担当し、どこまで責任を持つのかを明確にすることで、業務の重複や漏れを防ぎ、スムーズな連携が可能になります。
また、定期的に業務フローを見直し、改善案を共有することも大切です。たとえば「この作業は本当に必要なのか?」「もっと効率的な方法はないか?」といった視点で業務を見直すことで、新たな改善点が見つかることがあります。
チーム内で定期的にミーティングを開き、改善案を出し合い、実行していくことで、継続的な業務効率化を実現できるでしょう。
請求書と電子帳簿保存法の関係

電子帳簿保存法(電帳法)は、国税関係帳簿書類のデータ保存を認める法律です。この法律には、大きく分けて「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つの区分があります。
- 電子帳簿等保存:会計ソフトなどで作成した帳簿を電子データのまま保存
- スキャナ保存:紙で受領・作成した書類をスキャンして電子データとして保存
- 電子取引:電子的にやり取りした取引情報を電子データのまま保存
上記のうち、電子データ(PDFなど)で請求書を発行する場合、電子帳簿保存法における電子取引のデータ保存の要件を満たす必要があります。発行側の企業は「訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する」などの要件を満たす必要があります。
請求書の受領側は、紙で受け取った請求書をスキャナーで読み取る場合はスキャナ保存、請求書をメールやシステム上で受け取る場合は電子取引のデータ保存の要件を満たさなくてはなりません。
それぞれの要件の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
請求書業務の課題と原因

請求書業務は、企業の信頼性や資金繰りに直接関わる重要な業務ですが、多くの企業がさまざまな課題を抱えています。ここでは請求書業務における代表的な課題と、その原因について解説します。
人為的ミスが発生しやすい
請求書発行業務では人為的なミスが発生しやすく、それが大きな問題に発展する可能性があります。よくあるミスとしては、以下のものが挙げられます。
- 書類間の情報の引き継ぎ不足
- 手作業での入力ミス
- 納期や金額のズレ
- 請求書の送付漏れや遅延
- 二重請求
こうしたミスの背景にあるのは、経理担当者の業務過多による人手不足です。請求書発行システムや会計ソフトなどのツールを活用せず、手作業で請求書を作成・管理することもミスを誘発する要因になりうるでしょう。
請求書に関するミスは、顧客からの信頼失墜につながります。業務フローの標準化をはじめとする、各種対策が必要です。
業務効率が悪くなりやすい
請求書業務はその性質上、業務効率が悪くなりやすい傾向があります。たとえば見積書、注文書、納品書、請求書など、同じような内容を何度も別の書類に転記する作業には多くの時間が必要です。また、手作業で行う作業が多いことも効率を低下させる要因です。
ほかにも、以下のような要因が業務効率を阻害する可能性もあります。
- 法的要件の不備:インボイス制度や電子帳簿保存法などの法的要件に対応できておらず、手戻りや余計な作業が発生する
- システム化の遅れ:専用ツール未導入で、Excelなどによる手作業の管理が中心
とくに中小企業では「システム化の遅れ」が深刻です。作業効率を上げるためには、請求書発行システムなどの導入を早期に行う必要があります。
まとめ
請求書業務の流れを効率化することは、企業の資金繰りや信頼性に直結する重要な取り組みです。しかし多くの企業は、人為的ミスや非効率な作業フローといった課題を抱えています。これらの課題を解決し、業務を効率化するためには、業務フローの標準化、ツールの導入と自動化、アウトソーシングの活用、チーム全体での業務改善などが欠かせません。
まずは自社の請求書業務の現状を把握することから始めましょう。課題を特定したら、具体的なアクションプランを立てて実行します。とくに中小企業の場合は、ツールの導入をはじめとするシステム化の推進がおすすめです。
「Bill One」は、請求書の受領・発行業務を効率化できるサービスです。
請求書受領業務では、あらゆる形式の請求書をオンラインで受け取り、クラウド上で一元管理することができます。
請求書発行・入金消込業務では、請求書をオンラインで一括発行できるだけでなく請求情報と入金情報をリアルタイムで突合し、入金消込の自動化を実現します。
これらを1つのサービスで実現できるのが「Bill One」です。
Bill One請求書受領の特長
- 紙や電子などあらゆる形式の請求書をオンラインで受領し、99.9%の精度*で正確にデータ化する
- 受領した請求書データを一元管理できる
- インボイス(適格請求書)の要件を満たしているかを自動チェック
- 適格請求書発行事業者番号が事業者名と一致しているかも自動で照合
- 電子帳簿保存法に対応した保存要件で受領した請求書データを適切に保管
- 暗号化やPMSの構築などの高度なセキュリティー対策を設けている
*Sansan株式会社が規定する条件を満たした場合のデータ化精度
Bill One債権管理の特長
- 請求先ごとに固有のバーチャル口座を振込先として請求書を作成・発行
- 名義不一致や複数の請求分を一括した合算入金も自動で消込処理
- 現在利用中の基幹システムとも柔軟に連携可能
- 発行済みの請求書と入金状況をリアルタイムに一覧表示・管理可能
- 請求書の作成・発行から入金消込、社内での照会・共有までをBill One上で完結
Bill Oneは経理業務にかかる工数を削減・効率化し、月次決算の加速に役立ちます。ぜひ導入をご検討ください。


3分でわかる Bill One請求書受領
請求書受領から、月次決算を加速する
クラウド請求書受領サービス「Bill One請求書受領」について簡単にご説明した資料です。




3分でわかる Bill One債権管理
リアルタイム入金消込で、現場を強くする
クラウド債権管理サービス「Bill One債権管理」について簡単にご説明した資料です。



記事監修者のご紹介
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
保有資格:弁護士
慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
- 本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。なお、本稿は、読みやすさや内容の分かりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。

執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部