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立替経費とは?手順や課題、経費精算の効率化方法を徹底解説!
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立替経費とは、従業員が業務で発生した経費を一時的に立て替え、後で企業から精算を受ける費用のことです。交通費や出張時の宿泊費などが一般的な例です。
しかし、立替経費は従業員にとっても経理担当者にとっても手間のかかる作業で、双方の負担になっています。
本記事では、立替経費の基本的な定義や精算手順、課題などを解説します。併せて立替経費の処理を効率化するための方法も紹介します。ぜひ最後までお読みください。
立替経費とは

まずは、立替経費の定義について具体的に解説します。また、「立替金」や「仮払金」との違いも説明します。
立替経費の定義
立替経費とは、従業員が業務に必要な費用を一時的に立て替え、後で企業から精算を受ける経費のことです。
主な例としては、出張時の交通費や宿泊費、営業活動に伴う飲食費、業務に必要な消耗品の購入費などがあげられます。これらの経費は、業務遂行に欠かせないものですが、即時に企業から支払われることが難しい場合に、従業員が立て替える形で発生します。
立替経費と「立替金」や「仮払金」との違い
「立替金」とは、従業員や取引先が本来負担すべき費用を、企業が一時的に立て替える際に使用する勘定科目のことです。この項目は、社内外のいずれに対しても使われます。
言い換えると、立替金は立替経費とは逆の性質を持っています。立替金は経費ではなく、資産として取り扱われる勘定科目です。
「仮払金」は、従業員が業務に必要な費用を、あらかじめ企業から概算金額として受け取るお金です。まだ支出が確定していない時点で支払われ、後に正確な経費を精算します。出張費などが、あらかじめ支給されるケースがよく見られます。
立替経費の申請手順

立替経費の精算は、基本的に下記のような手順で行われます。
- 従業員による立替経費の精算申請
- 上司や管理者による確認と承認
- 経理担当者による仕訳
- 従業員への支払いと経理処理
- 記録の保管
それぞれについて詳しく解説します。
1.従業員による立替経費の精算申請
立替経費の精算申請は、まず従業員が自身で立て替えた経費を正確に報告するところから始まります。申請時には、経費の内容、金額、日付、利用目的などを明確に記載し、領収書やレシートなどの証憑を添付する必要があります。
精算申請のやり方は企業によってルールがあり、申請はルールに従って提出しなければなりません。かつては、経費精算の紙の書類を記入して提出する企業がほとんどでしたが、最近では、経費精算のシステムやアプリを使用して、手軽に申請できる企業も増えています。
申請の際に不備があると、確認や承認が遅れ、精算が滞ってしまうため、申請内容の確認は非常に重要です。また、申請書類の提出期限を守らないと、精算が翌月以降に持ち越される可能性もあるため、期限を守ることが求められます。
2.上司や管理者による確認と承認
次のステップは、上司や管理者による確認と承認です。従業員から申請された経費内容を確認し、その費用が業務上、正当なものかをチェックします。例えば、出張費や会食費が業務に関連しているか、申請された金額が適正か、証憑が正しく添付されているかを確認します。
ここで上司や管理者の役割は、経費が企業のルールに沿ったものであることを判断し、不正や不適切な申請がないかを確認することです。承認を行う際、内容に疑問点があれば従業員に確認し、修正が必要な場合は申請を差し戻します。
3.経理担当者による仕訳
従業員から申請された立替経費が承認された後、経理担当者がその内容に基づいて仕訳をするのが次のステップです。立替経費の内容に応じて適切な勘定科目を選び、支払いの対象を記録します。
例えば、出張費や交通費であれば「旅費交通費」、接待費なら「交際費」など、各費用に応じた科目で仕訳されます。また、これと同時に企業が従業員に支払う金額を「未払金」として計上することも一般的です。
仕訳が完了すると、経費の精算手続きは次のステップに進み、従業員への支払いが行われます。
4.従業員への支払いと経理処理
立替経費の精算が承認され、経理による仕訳処理が終わった後、次に行われるのが従業員への支払いです。この段階で、企業が従業員に立て替えた経費を振り込みなどの方法で支払います。通常、月末や月初に一括で処理されることが一般的ですが、場合によっては給料日と同じタイミングで支払うことも多いです。
支払いが完了した時点で、経理はその支出を正確に帳簿に反映させる必要があります。例えば、「未払金」や「経費」の勘定科目を使用して、支払いが完了したことを記録します。この作業で帳簿上での立替経費の処理は完了です。
5.記録の保管
立替経費の精算が完了した後、経費に関する書類やデータは適切に保管する必要があります。領収書やレシート、精算書類などの証憑も同様です。これらの書類は、税務上の証拠として重要な役割を果たし、必要に応じていつでも確認できる状態にしておくことが重要です。
保管期間については、個人事業主や法人などの事業形態によって異なりますが、一般的には確定申告期限の翌日から7年間保管が求められます。
電子帳簿保存法対応帳簿保存法により、自己が電子で作成した帳簿や書類については、一定の要件の下、電子データで保管することもできます。電子データで請求書等をやりとりした場合には、その電子データを保存しなければならないこととされています。
近年では、紙媒体だけでなく、電子データとして保管するケースも増えています。
立替経費の仕訳方法

ここでは立替経費の仕訳方法について解説します。具体的な例から処理手順を見ていきましょう。
立替経費を精算する際の仕訳方法
立替経費の精算を行う際、まず従業員が業務に関連して支出した経費を正しく仕訳する必要があります。具体例として、従業員が顧客との会食で3万円を立て替え、これを接待交際費として処理するケースを見てみましょう。
借方 | 貸方 |
---|---|
接待交際費 30000円 | 未払金 30000円 |
この仕訳では、立替経費は企業の経費として記録され、同時に立替分が「未払金」として処理されます。立替金は後で精算されるまで、企業の帳簿に未払いの状態で残ります。
精算金を支払う際の仕訳方法
次に、企業が従業員に立て替えた経費を精算する際の仕訳について解説します。この時点では、「未払金」として計上されている金額を支払い、その負債を消す処理を行います。
借方 | 貸方 |
---|---|
未払金 30000円 | 普通預金 30000円 |
企業が従業員に支払ったことをこのように記録します。
この仕訳をすることで立替金が消滅し、帳簿上で正確な経費処理が完了します。
立替経費の課題

ここでは立替経費における課題について解説します。立替をする従業員と立替を処理する経理担当者の2つの視点から考えてみましょう。
立替を申請する従業員の課題
Sansan株式会社では、20〜50代の従業員1000名を対象に「経費精算業務に関する実態調査」を実施しました。その調査結果から、立替経費に関するさまざまな課題が浮かび上がってきました。
そのうち、下記の3点について取り上げて解説します。
- 申請手続きに手間がかかる
- 金額が大きく負担になることがある
- 入金されるまでにタイムラグがある
1.申請手続きに手間がかかる
Sansan株式会社が20〜50代の従業員1000名を対象に実施した「経費精算に関する実態調査」によると、72.8%が「課題を感じている」と回答しました。

そして、立替経費に課題を感じていると回答した人にその理由を聞いたところ、最も多かったのが「精算処理が面倒」(33.9%)と答えています。

立替経費を申請する際、従業員にとって手続きの煩雑さは大きな負担です。まず、立て替えた費用の領収書やレシートを保管し、申請時に提出する必要がありますが、これを紛失すると申請が遅れてしまいます。また、申請書に詳細を正確に記入しなければならず、ミスがあると確認や修正が必要になるため、余計な手間が増えます。
こうした手続きが従業員の負担となることは少なくないようです。調査の結果でも、46.2%が立替経費の精算業務が、通常業務の妨げになっていると回答しました。

2.金額が大きく負担になることがある
調査の中でひと月あたりの立替合計金額を聞いたところ、平均約3.1万円という結果となりました。これは平均的な月収の約1割にも相当する金額です。
そのため、4割以上が立て替えによる金銭負担で「会社に不満を感じたことがある」と回答しています。

3.入金されるまでにタイムラグがある
立替経費の精算を申請した後、入金までに時間がかかる点も従業員にとって大きな負担です。承認のプロセスや経理の処理が遅れると、立て替えたお金がすぐに戻らず、従業員の生活にも影響を与えることがあります。
調査においても、4割の回答者が立て替えによる金銭負担を懸念し、接待や出張などの業務を躊躇した経験があると答えています。

参照:Sansan株式会社|「Sansan、「経費精算業務に関する実態調査」を実施〜会社員の7割以上が精算や領収書管理に「課題あり」。約半数が「立替経費精算が通常業務の妨げになっている」と回答〜」
参照:Sansan株式会社|「Sansan、「立替経費負担に関する実態調査」を実施〜会社員の平均立替金額は月3万円で、月収の1割に相当。4割が金銭負担を懸念して接待や出張を躊躇した経験あり〜」
経理担当(立て替えを処理する側)の課題
立替経費は精算申請する従業員の負担になっていることがわかりました。一方、立替処理を実行する側、いわゆる経理担当にも多くの課題があります。ここでは下記の4つを取り上げて解説します。
- 処理件数が多い
- 確認作業が煩雑
- 月末・月初に業務が集中
- 不正利用かどうか判断しづらい
1.処理件数が多い
経理担当者にとって、立替経費の処理件数が多いことが大きな負担です。従業員からの申請が頻繁にあると、処理する作業が膨大になり、時間を多く取られています。
Sansan株式会社が実施した調査によれば、企業では毎月平均1500件以上の立替精算が発生しており、それに対応するために経理担当者は月に平均100時間を費やしているということです。
このように、申請数が多いことで、ひとつひとつの確認や精算に手間がかかり、結果として経理担当者の業務量が増える原因となっています。
2.確認作業が煩雑
立替経費の処理をする際に、経理担当者は申請に基づいた精算を行うだけでなく、請求内容が正当なものかを確認したり、提出された証憑が適格請求書の要件を満たしているか目視で確認したりしなければなりません。要件を満たしていない場合には、企業は仕入税額控除ができなくなることにもなりかねません。
Sansan株式会社の調査で立替精算への課題を聞いたところ、「インボイス制度で求められる要件を満たすかどうかの確認に手間がかかる」が35.0%と最も多くなりました。

3.月末・月初に業務が集中
経理部門では、月末・月初に取引先への請求書発行や支払処理、入金や支出の管理等の業務が集中します。それに加えて立替経費の精算業務がこの時期に重なると、通常業務とぶつかってしまうため大きな負担です。
Sansan株式会社の調査においても、経理担当者の3割以上が「月末・月初に業務が集中することに課題を感じている」と回答しています。
こうした結果、精算が遅れて従業員に不満が生じるだけでなく、部署全体の効率低下につながる可能性もあります。
4.不正利用かどうか判断しづらい
立替経費の申請・精算手続きは、従業員の申告した内容に基づいている部分が大きいです。そのため、従業員の不正が起こるリスクは常に意識しておかなければなりません。しかし、不正利用かどうかの判断が難しいのが実際のところです。
Sansan株式会社の調査では、経理担当者の約3割が経費の不正利用を見聞きしたことがある、と回答しています。

立替経費業務を効率化する方法

ここまで立替経費の課題を解説しました。経理担当者だけでなく、従業員にも負担となっている立替経費の業務は、効率化が強く求められています。
立替経費の処理を効率化する方法としては、以下の3つの方法があげられます。
- 立替経費のルールを徹底する
- 法人用クレジットカードを活用する
- 立替経費の処理をシステム化する
それぞれについて解説しましょう。
1.立替経費のルールを徹底する
立替経費の業務を効率化するためには、まず企業全体でルールを見直し、徹底することが大切です。具体的な取り組みとして下記のようなことがあげられます。
- 立替経費に上限額を設定し、立替可能な経費の種類を明確にする
- 経費の申請期限を設ける(例:経費発生後2週間以内)
- 定期的に従業員向けの研修や説明会を実施する
これらのルールを全従業員に周知し徹底することで、無駄な立替経費の作業が発生するのを防ぎ、業務の標準化が進みます。結果的に、経理部門の負担が軽減され、企業全体の業務効率や生産性も向上することが期待できます。
2.法人用クレジットカードを活用する
法人用クレジットカードの導入は、立替経費の効率化に非常に有効な方法です。導入には下記のようなメリットがあります。
- 従業員個人の金銭負担がなくなる
- 経費精算プロセスが簡略化され、担当者の負担が低減する
- 経費の使用状況をリアルタイムで把握できる
- カードの利用明細を用いて経費の集計や分析が簡単に行える
適切な管理のもとで法人用カードを運用し、使用ルールを徹底すれば、立替経費に関連する多くの課題が解決できます。
3.立替経費の処理をシステム化する
立替経費の処理をシステム化することは、業務効率を大幅に向上させるだけでなく、経理業務全体の精度とスピードを改善するために非常に有効です。
手作業に頼る従来の方法では、ミスや遅延が発生しやすく、従業員と経理担当者の双方に大きな負担がかかっていました。
しかし、システム化することで、これらの課題を解消できます。システム化による具体的なメリットは以下のとおりです。
- 手作業による申請や確認の手間が減り、従業員と経理担当者の負担が軽減される
- 入力ミスや書類の紛失などのリスクが低減し、正確な処理が可能になる
- 申請から承認、精算までの流れがスムーズになり、従業員への支払いが早まる
- リアルタイムで経費の状況を把握でき、経費管理が効率化される
- 不正利用の防止や予算管理が容易になる
- 定期的なレポートやデータ分析が自動化され、経費の傾向を把握しやすくなる
- 経営判断に必要なデータがそろい、管理がしやすくなる
システム化によって、立替経費の管理はより迅速で正確なものとなり、経理部門の負担を軽減し、企業全体の効率化につながります。
まとめ
本記事では、立替経費の基本的な処理の手順と、Sansan株式会社の調査から見えてきた企業が抱える課題を解説しました。
立替経費は企業運営において不可欠です。しかし、従業員と経理担当の双方に大きな負担となっているのも事実です。Sansan株式会社の調査結果からは、申請手続きの煩雑さ、入金の遅れ、業務の集中、不正利用のリスクなど、多くの課題が明らかになりました。
これらの問題を解決するには、明確なルールの策定、法人カードの活用、そして経費精算システムの導入が効果的です。
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部

記事監修者のご紹介
税理士 松崎 啓介
松崎啓介税理士事務所 所長、一般社団法人租税調査研究会主任研究員
保有資格:税理士
昭和59年~平成20年 財務省主税局勤務
税法の企画立案に従事(平成10年~平成20年 電子帳簿保存法・通則法規等担当)
その後、大月税務署長、東京国税局調査部特官・統括官、審理官、企画課長、審理課長、個人課税課長、国税庁監督評価官室長、仙台国税局総務部長、金沢国税局長を経て令和2年8月税理士登録。
松崎啓介税理士事務所 所長、一般社団法人租税調査研究会主任研究員
主な著書「Q&Aでわかる税理士のためのインボイス制度と改正電子帳簿保存法」(第一法規)、「デジタル化の基盤 電帳法を押さえる」 (税務研究会)等
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