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法人カードの個人利用が招くリスクとは?不正や私的利用を防ぐ仕組みづくり
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法人カードの用途は、原則として事業目的の支払いに限定されます。一方で、少額であれば問題にならないだろうと判断してしまったり、意図せずに個人利用(私的利用)してしまうというケースも見られます。
こうした公私混同は、経理業務を煩雑にするだけでなく、税務調査での指摘や銀行融資への悪影響など、企業経営上のさまざまなリスクにつながる可能性があります。本記事では、法人カードの個人利用がなぜ危険なのかを説明するとともに、不正やミスを未然に防ぐための仕組みづくりについて紹介します。
法人カードで経費精算を効率化
法人カードの個人利用が招くリスクとは

法人カードを私的な買い物や支払いに利用することは、企業にとって多方面でのリスクを伴います。ここでは主に3つのリスクについて説明します。
税務上のリスク
業務に関連しない個人的な支出は、税務上の経費として認められません。税務調査でこうした支出が発覚した場合、経費として認められず所得税や法人税等の本税が課され、さらに過少申告加算税や延滞税などの附帯税も課されるなど、追徴課税の対象となります。
特に、意図的な私的利用など悪質とみなされる場合は、その支出分が返済義務のない「給与(役員賞与)」と認定される可能性があります。この場合、法人側は「損金不算入」となり、さらに個人側にも所得税や住民税が課され、結果として法人・個人の双方で税務上の追加負担が生じることになりかねません。
信用上のリスク
個人利用分を企業側が立て替えている状態が解消されないまま決算を迎えると、その金額は決算書上で「役員貸付金」として計上されます。
役員貸付金は、金融機関の融資審査において懸念材料となる場合があります。
公私混同が疑われると経理がずさんだと認識され、融資の審査がより厳しくなり、結果として格付けが下がって融資が受けられなくなったり、適用される金利が上昇したりなど、資金繰りへの実害が出ることも考えられます。
業務上のリスク
たとえ1件当たり数千円の個人利用であっても、経理担当者に大きな負担を与えることになります。
担当者は、申請された金額が経費なのか私用なのかを確認するために、本人へ連絡し、事情を聴取した上で領収書を回収し、さらに修正仕訳を行うという付随業務を行わなくてはなりません。
本来は不要なはずの非生産的な業務が積み重なれば、月次決算の遅延を招く要因ともなります。また、こうした無用な確認作業の増加は、経理担当者のモチベーション低下にもつながる要因です。
法人カードのポイント・マイルを私的利用した場合

法人カードの利用で貯まるポイントやマイルの取り扱いにも注意が必要です。私的な利用が発覚した場合、法的・税務的な問題に発展する可能性があります。
ポイントの所有権は原則として法人側にある
法人カードの利用によって付与されるポイントやマイルは、原則としてカードの契約者である法人の資産と考えられます。カードを実際に使用するのが役員や従業員であっても、その権利は企業側に帰属するという考え方が一般的です。
従業員が許可なくこれらのポイントを個人の旅行や買い物に利用した場合、社内規程違反や不適切な利用として問題となる可能性があります。「自分が使ったカードで貯まったポイントだから」という認識は通用しない可能性があるため、注意が必要です。
社長個人の利用が課税対象になることも
ポイントを役員や従業員が私的に利用した場合、税務上は「企業側から個人への経済的利益の供与」とみなされます。その利用額が一定以上であれば、利用した本人に対する「給与所得」として課税対象になる可能性があるため、注意が必要です。
意図せず税務申告から漏れてしまうと、税務調査の際に所得の過少申告を指摘されるリスクがあります。たとえ社長であっても、企業の経費で得たポイントを自由に使うことは、税務リスクを伴う行為です。
ポイント管理のガイドライン化は不可欠
ポイントやマイルの個人利用を黙認することは、不公平感を生むだけでなく、企業にとって税務上・法務上のリスク要因となります。
個人利用を認める場合は、福利厚生としての位置づけや利用者に対する給与課税の有無などの課税関係を含め、慎重に制度設計する必要があります。
経費精算のルールづくりについては、以下の記事もお読みください。
法人カードで小口現金をキャッシュレス化
法人カードを個人利用してしまった場合の対応と仕訳例

法人カードを個人利用してしまった場合は、速やかに適切な対応を取ることで、リスクを最小限に抑えることができます。ここでは、状況に応じた対応方法と仕訳例を紹介します。
すぐに現金を返済した場合
個人利用が早期に発覚し、すぐに現金で精算できる場合は、「立替金」として処理します。
例えば、従業員が法人カードで5,000円の私的な買い物をしてしまい、発覚後すぐに現金で返済した場合の仕訳は以下のようになります。
【カード利用時】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
立替金 | 5,000円 | 未払金 | 5,000円 |
【現金返済時】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
現金 | 5,000円 | 立替金 | 5,000円 |
このように、早期発見・早期解決であれば、決算書への影響もなく、リスクを最小限に抑えることができます。日頃から利用明細を確認する体制を整えておくことが重要です。
返済が決算をまたぐ・返済できない場合
返済が遅れて決算期をまたいでしまう場合や、すぐに返済できない場合は、「役員貸付金」または「従業員貸付金」として処理する必要があります。
たとえば、役員が法人カードで10万円を個人利用し、決算時点で未精算の場合の仕訳は以下の通りです。
【決算時】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
役員貸付金 | 100,000円 | 未払金 | 100,000円 |
【後日返済時】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
現金 (または普通預金) | 100,000円 | 役員貸付金 | 100,000円 |
前述した通り、役員貸付金が決算書に計上されると、金融機関からの評価に悪影響を与える可能性があります。ミスが発覚した時点で放置せず、決算日までに必ず精算を完了させるよう促す仕組みづくりが重要です。
役員貸付金には「受取利息」の計上が必要
役員貸付金として処理する場合、企業側は適正な利率で利息を受け取る必要があります。無利息または低利で貸し付けると、その差額が役員への経済的利益とみなされ、給与として課税される可能性があるためです。
適用すべき利率は、企業が金融機関から借り入れをしている場合はその借入利率、借り入れがない場合は税法上の基準利率が目安となります。利息の仕訳は以下の通りです。
【利息計上時】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
役員貸付金 (または未収入金) | ○○円 | 受取利息 | ○○円 |
このように、役員貸付金の処理には手間がかかるうえ、税務上の論点も生じます。わずかな個人利用であっても、決算をまたぐことで処理が非常に複雑になるため、早期精算の徹底が重要です。
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不正やミスによる法人カードの個人利用を防ぐには

法人カードの個人利用を防ぐためには、事後対応だけでなく、未然に防ぐための仕組みづくりが大切です。ここでは、具体的な対策を紹介します。
法人カードの不正利用を防ぐ方法については、以下の記事もお読みください。
就業規則や利用規定を整備しておく
まずは、法人カードの利用範囲を明確にするためのルールを明文化することが基本です。具体的には、就業規則にカード利用に関する条項を追加する、あるいは独立した「法人カード利用規定」を設けることが挙げられます。
また、カードを貸与する際には「私的利用の禁止」を明記した誓約書を取り交わすことも有効です。違反した場合の処分内容をあらかじめ明確にしておくことで、心理的な抑止力が働き、安易な利用を防ぐことにつながります。
支払い先の制限が可能な法人カードを選ぶ
システム的な制限機能を活用することも非常に効果的です。最近の法人カードには、ギャンブルや金融サービスなど、明らかに事業に関係のない特定の業種での利用をあらかじめ制限できるものがあります。
また、事前申請がないと決済ができない仕組みや、特定の店舗以外での利用をブロックする機能を備えたカードを選ぶことで、ミスによる誤用や悪意のある不正利用を入り口で遮断することが可能になります。
利用限度額を必要最低限に設定する
カードごとに利用限度額を細かく設定することも、物理的な対策として有効です。業務で必要な出張費や備品購入費の範囲内に限度額を抑えておくことで、万が一私的利用が行われた場合でも、その被害額を最小限に食い止めることができます。
ただし一律に高い限度額を設定するのではなく、役職や担当業務の内容に応じて、個々の利用実態に合わせた適切な枠の設定を心がけることが大切です。
領収書原本と利用明細の突き合わせを義務化する
法人カードの利用明細と領収書の突き合わせを義務化することで、不正利用の抑止力になります。「領収書の提出が必須」というルールがあれば、私的利用をためらう心理が働くためです。
一方で、利用明細と領収書を1件ずつ目視で確認する作業には、相応の工数がかかります。経理担当者の負担を考慮すると、デジタル技術の活用など、確認作業を効率化する仕組みの導入を検討することが望ましいでしょう。
リアルタイムでカードの利用状況を把握する
法人カードの利用状況をリアルタイムで確認できるシステムを導入することで、問題の早期発見が可能となります。
リアルタイムで利用状況をモニタリングできれば、たとえ個人利用が発生したとしても即座に把握し、本人への確認が可能となります。早急な対応ができれば、前述した「即時の現金精算」での処理が可能になり、役員貸付金の発生や税務・信用のリスクを最小限に抑えることが可能です。透明性の高い運用が、結果として社員を守ることにもつながります。
まとめ
法人カードの個人利用は、税務調査での指摘、金融機関からの信用低下、経理業務の煩雑化など、さまざまなリスクを招く可能性があります。ポイントやマイルの私的利用についても、課税対象となるケースがあるため注意が必要です。
こうしたリスクを防ぐためには、利用規定の整備や限度額の設定に加え、カードの利用状況をリアルタイムで確認・制御できる仕組みを導入することが効果的です。
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記事監修者のご紹介
税理士 松崎 啓介
松崎啓介税理士事務所 所長、一般社団法人租税調査研究会主任研究員
保有資格:税理士
昭和59年~平成20年 財務省主税局勤務
税法の企画立案に従事(平成10年~平成20年 電子帳簿保存法・通則法規等担当)
その後、大月税務署長、東京国税局調査部特官・統括官、審理官、企画課長、審理課長、個人課税課長、国税庁監督評価官室長、仙台国税局総務部長、金沢国税局長を経て令和2年8月税理士登録。
松崎啓介税理士事務所 所長、一般社団法人租税調査研究会主任研究員
主な著書「Q&Aでわかる税理士のためのインボイス制度と改正電子帳簿保存法」(第一法規)、「デジタル化の基盤 電帳法を押さえる」 (税務研究会)等
- 本稿は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。正確な情報を掲載するよう努めておりますが、内容について保証するものではありません。なお、本稿は、読みやすさや内容の分かりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。

執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部






