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建設業における請求書の作り方 | インボイス制度対応の書き方や効率化のポイント
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請求書の作成は、建設業でも重要な業務のひとつです。一方で「どのような項目を記載すればよいの?」「インボイス制度に対応するにはどうしたらよい?」といった疑問や不安を感じている方は少なくありません。
この記事では建設業の請求書作成に不可欠な基本知識や、請求書を効率的に作るためのポイント、さらに「よくある質問」の答えをご紹介します。ぜひ、請求書作成業務にお役立てください。
建設業の請求書とは

建設業において、請求書は工事の完了を報告し、その対価を請求するための重要な書類です。まずは建設業の請求書に必要な項目や、建設業ならではのルールについて見ていきましょう。
建設業の請求書に必要な項目

建設業の請求書には、以下の項目を記載する必要があります。
1.書類作成者の氏名または名称
請求書を発行する企業名または個人事業主の名前を記載します。
2.取引年月日
工事が完了した日、または検収日を記載します。
3.取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
工事の内容を具体的に記載します。軽減税率の対象となる工事(2019年4月1日より前に契約した建設工事)の場合は、その旨を明記します。
4.税率ごとに区分して合計した税込対価の額
工事の対価を税率ごとに区分し、合計金額を記載します。
5.書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
請求書を受け取る企業名または個人事業主の名前を記載します。
6.その他、上記に追加した方がよい内容
以下の項目も記載することでより分かりやすく正確な請求書を作成できます。
- 請求書番号:請求書を一意に識別するための番号
- 支払い期限:請求金額の支払い期限
- 支払い方法:銀行振込などの支払い方法
- 備考欄:その他、必要な情報
他業種と異なるポイント
建設業の請求書は、工事の進捗に応じた分割請求や前受金の取り扱いが必要な点で他業種と大きく異なります。工事ごとに内容や納期が異なるため、契約時の合意内容を正確に反映することが必要です。
分割請求の金額計算や前受金の管理を明確に記載することは、後日のトラブルを防ぎ、取引先との信頼関係を維持するためにも重要な役割を果たします。
人工代の書き方には注意が必要
人工代とは、作業員の人件費のことです。具体的には「作業員1人当たりの1日の単価×作業員数×作業日数」で計算します。たとえば、1人当たり3万円の日当で、2人の作業員が4日働いた場合の人工代は以下の通りです。
2人×3万円×4日=24万円
人工代の記載方法に決まりはありませんが、後日のトラブルを避けるため、作業人数と作業日数、単価(人工代)が分かるように書くのが好ましいです。一例として、以下のように書くこともできます。
品目 | 単価 | 数量 | 金額 |
---|---|---|---|
人工代(2人×4日) | 30,000 | 8 | 240,000 |
インボイス制度に対応した請求書の書き方

2023年10月1日よりインボイス制度が導入されました。建設業においても、適格請求書(インボイス)の発行・受領は必須となっています。
インボイス制度とは
インボイス制度とは、適格請求書等保存方式の略称で、買い手が仕入税額控除を適用するために、売り手から発行される適格請求書(インボイス)の保存を義務付ける制度です。
インボイス制度は消費税の不正還付を防ぐことを目的としており、適格請求書には、取引内容や消費税額などを詳細に記載する必要があります。建設業では工事金額が高額になることが多く、消費税額も大きいため、インボイス制度への対応は特に重要です。
インボイス制度の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
インボイス制度に対応するための要件
インボイス制度に対応するためには、請求書に必要な各要件を正確に記載することが求められます。以下に、必要な要素を具体的に説明します。
適格請求書発行事業者番号
税務署から付与される「T」で始まる13桁の適格請求書発行事業者番号を必ず記載します。記載がない場合、取引先が仕入税額控除を受けられなくなる可能性があるため、注意が必要です。
取引年月日
取引が実際に行われた日付を正確に記載することで請求対象期間が明確になります。これにより、どの取引をどの期間に計上すべきかや、仕入税額控除の対象になるかどうかを判断しやすくなります。
取引内容
工事の具体的な内容、作業項目、使用した資材、提供したサービスの詳細を記載します。特に軽減税率対象品目がある場合には、その旨を明記することで正確な消費税計算が可能になります。
税率ごとに区分した税込対価と消費税額
標準税率と軽減税率に分け、税率ごとの税込対価および消費税額を正確に記載します。これにより計算ミスを防ぎ、正確な税額を算出できます。
適用税率
消費税計算の根拠として、各取引に適用される税率を明記します。これにより税率ごとの処理が明確になります。
取引先の氏名または名称
請求書の受領者となる事業者や個人の正確な名称を記載します。これにより取引の信頼性が高まるとともに、後の管理業務も円滑になります。
インボイス制度対応の注意点
インボイス制度への対応に当たっては、以下の点に注意が必要です。
適格請求書発行事業者としての登録
インボイスを発行するには、事前に税務署に登録申請を行い、適格請求書発行事業者になる必要があります。登録にはe-Taxの場合で約1カ月、書面提出の場合で約1.5カ月かかるため、あらかじめスケジュールに余裕をもって申請を行いましょう。
参照:国税庁「適格請求書発行事業者の登録通知時期の目安について」
取引先への周知
取引先が免税事業者の場合、インボイスを受け取ることができないため仕入税額控除もできません。このため事前に取引先に周知を行い、取引条件を見直してもらうなどの対応をお願いしましょう。
建設業の請求書作成を効率化する方法

建設業の請求書は、手書きで作成すると時間と手間がかかり、ミスも発生しやすくなります。効率化のためには請求書発行システムなど、デジタルツールの活用が重要です。
手書きからデジタルツールへ移行する
従来の手書きによる請求書作成には、以下のようなデメリットがあります。
- 手書きで記入するため、作成に時間がかかる
- 手書きのため、計算ミスや転記ミスなどのヒューマンエラーが発生しやすくなる
- 修正箇所が多い場合は書き直す必要があり、手間がかかる
これに対し、デジタルツールを活用することで以下のように請求書作成業務を効率化できます。
- 入力支援機能や自動計算機能により、作成時間を短縮できる
- 入力チェック機能や自動照合機能により、ミスの発生を抑制できる
- デジタルデータのため修正が容易に行える
加えて、クラウドベースのシステムを利用すれば請求書のデータをリアルタイムで共有できるほか、最新の税率や法令改正にも迅速に対応できます。
請求書発行システムを利用する
請求書発行システムは、請求書の作成、発行、管理などを一元的に行えるシステムです。主な機能としては以下のものが挙げられます。
- 自動化:顧客情報や商品情報などを登録しておくことで、請求書の内容を自動入力できる
- データ管理:請求書の発行履歴や入金状況などを一元管理できる
- 分析:請求データに基づいた分析を行い、経営改善に役立つ
なお、請求書発行システムにはさまざまな種類があります。自社の業務規模やニーズに合わせて、適切なシステムを選びましょう。
建設業の請求書でよくある疑問

建設業の請求書について、よくある疑問とその回答をご紹介します。ぜひ参考にしてください。
建設業の請求書は自由にカスタマイズしても良いか?
基本的な項目に漏れがなければ、書式やレイアウトなどは自由にカスタマイズして構いません。ただし取引先の要望があれば、それに合わせて作成する方がスムーズな取引につながります。
取引先が都道府県や市区町村などの自治体の場合、各自治体のホームページに請求書の様式が定められていることがあります。必ず確認してから作成しましょう。
建設業の請求書はいつ発行すれば良いか?
一般的には、工事が完了した後に請求書を発行します。ただし前払金や中間金を請求する場合は、その都度請求書の発行が必要です。分割請求の場合は、契約内容に基づいて請求書の発行時期を定めます。
複数の工事をまとめて請求することはできるか?
複数の工事をまとめて請求することは可能です。ただし、工事ごとに内容を明確に区分して記載することが重要です。まとめて請求する場合でも、それぞれの工事に対する請求書番号は個別に付与しましょう。
税率や消費税額の記載方法は?
税率ごとに区分して金額を記載し、消費税額を計算しましょう。建設業では8%(軽減税率)と10%(標準税率)の両方が適用されるケースがあるため、請求書作成の際は注意が必要です。
請求書はどのように送れば良いか?
電子請求書(デジタルデータで作成した請求書)の場合は、メールやオンラインストレージサービスなどを利用して送付します。紙の請求書の場合は、郵送または手渡しで送付します。
電子請求書の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
記載ミスをした場合はどうすれば良いか?
適格請求書ではない、一般の請求書に記載ミスがあった場合は訂正印を押して修正するか、新しい請求書を発行します。修正する場合は二重線で消して訂正印を押し、その横に正しい内容を記載します。
適格請求書に記載ミスがあった場合は、誤りがあった事項を修正し、改めて記載事項のすべてを記載した請求書を交付するか、当初に交付した請求書との関連性を明らかにし、修正した事項を明示した請求書を交付します。
請求書を再発行するのはどのような場合か?
請求書に記載ミスがあった場合や、紛失した場合などに再発行します。記載ミスがあった場合には正しい内容で作成し「修正」などと明示し、相手方が紛失した場合には元の請求書と同じ内容で作成し「再発行」と明記することが重要です。
請求書の保存期間はどのくらいか?
発行した請求書の控えを作成した場合、請求書(控え)の保存期間は原則7年間です。
従来の請求書の場合、保存期間はその事業年度の確定申告期限の翌日から起算します。適格請求書の場合、交付した日の課税期間の事業末日の翌日から2カ月後が起算日になります。
請求書の保存期間の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
この記事では、建設業における請求書の書き方について解説しました。請求書に必要な項目、インボイス制度への対応、よくある疑問などを理解することで、正確な請求書を作成できるようになり、取引先との信頼関係を築くことができます。
また、クラウドサービスの活用も効果的です。請求書発行システムを活用すれば、請求書作成の効率化、ミスの削減、法令遵守などを実現できるでしょう。
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記事監修者のご紹介
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
保有資格:弁護士
慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部