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BaaSとは?銀行API連携の仕組みとビジネス活用の具体例をわかりやすく解説
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近年、BaaS(Banking as a Service)が注目されています。銀行がAPIを介して他企業に金融機能を提供するこのBaaSという仕組みは、金融業界だけでなくECやFinTech(フィンテック)など幅広い分野で導入が進められてきました。
この記事では、BaaSの基本的な定義や仕組みから、国内外の具体例、導入のメリットと導入プロセスについて詳しく解説します。自社ビジネスにBaaSを取り入れ、競争力を強化したいと考えている方は、ぜひ最後までお読みください。
BaaSとは

銀行が提供する金融機能を、APIを通して利用できるBaaS。まずはその仕組みと、なぜ注目されているのかについて説明します。
BaaSの定義と仕組み

BaaS(Banking as a Service)とは、銀行が持つ預金、融資、決済、為替といった金融機能を、API(Application Programming Interface)を通じて外部の企業(主に非金融事業者)に提供するビジネスモデルのことです。
従来の金融サービスは、銀行が自ら顧客に提供するのが一般的でした。しかしBaaSの登場により、金融サービスとIT技術を組み合わせて新しいサービスを提供するFinTech企業はもちろん、ECサイト、小売、通信事業者など、さまざまな業種の企業が自社のサービスに金融機能を組み込めるようになっています。
たとえばECサイトが独自のブランド名で決済サービスを提供したり、配車アプリが運転手への報酬支払いを自動化したりすることが可能です。
BaaSが注目される背景
BaaSが注目される背景には、主に3つの要因があります。
- 社会全体のデジタル化の進展
- FinTechの急速な普及
- 顧客ニーズの多様化
社会全体のデジタル化の進展
スマートフォンやインターネットの普及により、消費者はオンラインでの購買やサービス利用を日常的に行うようになりました。企業はこのデジタル化の波に乗り、顧客接点を強化するために、オンラインサービスに金融機能を組み込む必要性に迫られています。
FinTechの急速な普及
FinTech企業は最新のテクノロジーを活用して、従来の金融サービスにはない利便性や新しい価値を提供しています。BaaSは、FinTech企業がスピーディーかつ低コストで金融サービスを開発・提供するための基盤となっています。
顧客ニーズの多様化
画一的な金融サービスではなく、個々のライフスタイルやニーズに合わせてパーソナライズされた金融サービスが求められるようになりました。BaaSを活用することで、企業は自社の顧客データやサービスと金融機能を組み合わせ、より柔軟で多様なサービスを提供できます。
BaaSの活用事例

BaaSは、国内外のさまざまな企業で活用が進んでいます。ここでは、銀行の金融機能を活用した新しいサービスが生まれている事例を、具体的に見ていきましょう。
国内の活用事例
日本では、銀行などの金融事業者がAPIを介してさまざまな業種の企業と連携し、新しいサービスを提供しています。
その一例が、住信SBIネット銀行が提供するBaaSプラットフォーム「NEOBANK(ネオバンク)」です。このプラットフォームを利用することで、提携企業は自社のブランド名で銀行サービスを提供できます(JALの「JAL NEOBANK」、ヤマダデンキの「ヤマダNEOBANK」、Tマネーの「V NEOBANK」など)。
また、住信SBIネット銀行とSansan株式会社が共同で提供する「Bill One Bank」も要注目です。これはSansanの経理DXサービス「Bill One」に、住信SBIネット銀行の銀行APIを組み込んだものです。請求書の作成・発行機能に加え、請求書発行後の入金消込業務や仕訳データの自動作成を自動化することで、経理業務の効率化を実現します。
参照:住信SBIネット銀行|住信SBIネット銀行 法人企業向け「B to B」 BaaS提供Sansanとの提携による「Bill One Bank」提供開始|プレスリリース

海外の活用例
海外でもBaaSを活用した革新的なサービスが数多く登場しています。
その一例が、AppleがGoldman Sachsとの提携により提供する「Apple Card」です。Apple CardとiPhoneのWalletアプリを連携させることで、ユーザーは利用履歴の確認やキャッシュバックの受け取りなどを簡単に行えます。また、iPhoneユーザー同士で簡単にお金を送り合うことも可能です。
Uberも、BaaSプロバイダーのGreen Dotと提携して「The Uber Debit Card」を提供しています。これはUberのドライバー向けのデビットカードで、Uberでの収入を即座に受け取れる、ガソリン代の割引を受けられるといった機能があります。
BaaS導入の課題

BaaSにはさまざまなメリットがある一方で、導入に当たってはいくつかの課題も存在します。ここでは、BaaS導入を検討する際に考慮すべき主な課題について解説します。
セキュリティー対策
BaaSでは金融機関が保有する顧客情報や取引データを外部の事業者が扱うため、高度なセキュリティー対策が不可欠です。万一、情報漏えいや不正アクセスが発生した場合、企業の信用が失墜するだけでなく、顧客に甚大な被害をもたらす可能性もあります。
BaaSプロバイダーの選定に当たっては、セキュリティー対策のレベル(暗号化、認証、アクセス制御など)を十分に確認し、自社のセキュリティーポリシーに適合するかどうか慎重に判断することが必要です。
もちろんBaaSプロバイダーだけでなく、自社側のセキュリティー対策も強化する必要があります。
API規格の統一
現在、国内の銀行APIは金融機関ごとに独自の仕様で提供されるケースが多く、統一された規格が存在しません。これは開発の効率を下げ、コストを増加させる要因となっています。
たとえば複数の銀行APIを連携させる場合、それぞれのAPI仕様に合わせたシステム開発が必要となり、これが開発期間の長期化や、システム連携の複雑化につながっているのです。
業界全体でのAPI標準化の取り組みは進められていますが、まだ途上にあり、今後の課題となっています。
専門人材の確保
BaaSを導入・運用するためには、金融サービス、API、クラウド技術などに関する専門的な知識やスキルを持った人材が必要となります。とりわけBaaSを利用する非金融事業者にとって、これらの知識・スキルを持つ人材の確保や育成は大きな課題です。
導入に当たっては、社内でのリスキリング(再教育)プログラムの実施や、外部からの専門家採用、BaaSプロバイダーのサポート活用などを検討する必要があります。
BaaS導入のメリット

BaaSの導入は、企業、金融機関、そして利用者の三者すべてにメリットをもたらします。ここでは、それぞれの立場から見たBaaS導入のメリットを解説します。
企業のメリット
BaaSを導入する最大のメリットは、自社サービスに金融機能を組み込むことでサービスの付加価値を高め、顧客体験を向上させられる点です。
たとえばECサイトであれば、独自の決済サービスを提供することで顧客の利便性を高め、購買意欲を促進できます。加えて、決済手段の多様化(後払い、分割払いなど)は顧客層の拡大にもつながります。
さらに、金融機能を通じて得られる顧客データを活用してマーケティング戦略を高度化することも可能です。
金融機関のメリット
金融機関にとって、BaaSは新たな収益源の確保と顧客接点の拡大につながります。
従来、金融サービスは自社のチャネル(支店、ATM、インターネットバンキングなど)を通じて提供されてきました。しかしBaaSを活用することで、外部の事業者のサービスを通じて、自社の金融商品をより多くの顧客に届けることが可能になります。
これにより、新たな顧客の獲得だけでなく、既存顧客の利用促進や、休眠顧客の掘り起こしも期待できます。
さらに、BaaSプロバイダーとして、API利用料が新たな収益源にもなります。
利用者のメリット
利用者の側から見ると、BaaSは金融サービスへのアクセスをより容易にし、利便性を高めてくれます。
たとえば、普段利用しているECサイトやアプリで銀行口座の開設や決済、ローン申し込みなどができるようになれば、時間や場所を問わず金融サービスの利用が可能です。
また、複数の金融サービスを一つのプラットフォームで管理できるなど、利便性もより高まります。
BaaS導入のプロセス

BaaSの導入は、単にシステムを導入するだけでなく、ビジネスモデルの変革を伴う可能性があります。ここでは、BaaS導入を成功させるためのプロセスを以下の3つのステップに分けて解説します。
- 自社のニーズの明確化
- パートナー企業(BaaS提供企業)の選定
- システム統合とテスト運用
1. 自社のニーズの明確化
BaaS導入の最初のステップは、自社のビジネスニーズを明確にすることです。まず、以下の点を検討しましょう。
解決したい課題 | BaaSを導入して、どのような課題を解決したいのか?(例:新規顧客獲得、既存顧客のLTV向上、業務効率化など) |
提供したい価値 | 顧客にどのような価値を提供したいのか?(例:より便利な決済手段、パーソナライズされた金融サービス、金融サービスと自社サービスの融合など) |
必要な機能 | どのような金融機能が必要なのか?(例:決済、口座振替、融資、為替など) |
ターゲット顧客 | どのような顧客層をターゲットとするのか? |
KPI(重要業績評価指標) | BaaS導入の成功を測るための指標は何か?(例:新規顧客獲得数、顧客単価、取引件数、顧客満足度など) |
これらの点を明確にすることで、自社に必要なBaaSの機能や、パートナー企業に求める要件が見えてきます。ただし最初から完璧な要件定義をしようとせず、アジャイル的な考え方で、小さく始めて徐々に改善していくことを意識しましょう。
2. パートナー企業(BaaS提供企業)の選定
自社のニーズが明確になったら、次は最適なパートナー企業を選定します。BaaSプロバイダーを選ぶ際には、以下の基準を参考にしましょう。
提供機能 | 自社のニーズを満たす機能を提供しているか?将来的な機能拡張の可能性は? |
セキュリティー | 十分なセキュリティー対策が講じられているか?(暗号化、認証、アクセス制御、データ保護など) |
信頼性 | システムの安定性、可用性は?SLA(サービス品質保証)は? |
実績 | 類似の導入事例はあるか?導入企業の評判は? |
サポート体制 | 導入時、運用時のサポート体制は充実しているか? |
費用 | 初期費用、月額費用、従量課金などの料金体系は?自社の予算に合うか? |
APIの使いやすさ | 開発者向けのドキュメントやSDKは充実しているか? |
コンプライアンス | 関連法規に準拠しているか? |
複数のBaaSプロバイダーを比較検討して、自社のビジネスモデルや将来の成長戦略に最も適したパートナーを選びましょう。
3. システム統合とテスト運用
パートナー企業選定後は、自社システムとBaaSのAPIとの統合を進め、テスト運用を実施します。
機能テスト | 各機能が正しく動作するか? |
性能テスト | 負荷に耐えられるか?レスポンスタイムは? |
セキュリティーテスト | 脆弱性はないか? |
ユーザビリティテスト | ユーザーにとって使いやすいか? |
テスト運用中に発見された問題点は、本番稼働前に必ず修正しましょう。また、テスト運用を通じて、運用体制の構築やマニュアルの整備も進めておくことが重要です。
まとめ
この記事では、BaaS(Banking as a Service)の基本的な仕組み、注目される背景、国内外の活用事例、導入のメリットと課題、そして導入プロセスについて解説しました。
BaaSを導入すると、さまざまな業種の企業が自社サービスに金融機能を組み込むことができ、顧客体験の向上、新たな収益源の確保、業務効率化などを実現できるでしょう。
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部