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【保存版】請求書の保管方法を完全網羅 | 紙・データ別の整理術も紹介
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請求書の保管方法や期限には法律で定められたルールがあり、適切な管理を怠ると企業の運営にかかわる重大な問題に発展しかねません。また、近年ではインボイス制度や電子帳簿保存法の影響で、保管ルールも複雑化しています。
今回は請求書を適切に保管するために、請求書保管の基本やデジタル化のメリットを紹介します。ぜひ最後までお読みください。
請求書の保管はなぜ必要なのか

そもそもなぜ請求書は保管しなければならないのでしょうか。
ここでは3つの観点から、請求書の保管が必要な理由を詳しく解説します。
- 請求書の保管は法律で義務付けられている
- 自社発行の請求書と受領した請求書の保管義務の違い
- 経営管理における請求書保管の重要性
ではさっそく見ていきましょう。
請求書の保管は法律で義務付けられている
法人の場合、請求書の保管は主に3つの法律によって義務付けられています。
消費税法(インボイス制度)
2023年10月にインボイス制度が開始されて以降、適格請求書発行事業者は、原則として7年間の保管義務があります。保管しなければ消費税の仕入税額控除の適用を受けられずに、税負担が増えてしまう可能性があります。
法人税法
事業者が費用を経費として計上するには、取引の証拠である請求書を保管しておかなければなりません。適切な保管がなされていない場合、税務調査において経費が否認され、過少申告加算税や重加算税が課される可能性があります。
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法の改正により、2024年1月より電子データで受領・発行した請求書は、電子データのままでの保存が義務化されました。
万が一、電子取引により授受した取引データを削除、改ざんするなどして、売上除外や経費の水増しが行われた場合のほか、保存された取引データの内容が事業実態を表していないような場合(架空取引等)は重加算税の加重対象となります。
自社発行の請求書と受領した請求書の保管義務の違い
自社発行の請求書と、取引先から受領した請求書で保管すべき理由は異なります。
- 自社発行の請求書:売上計上の証拠
- 受領した請求書:仕入れ、経費の証拠
両者とも税務調査や会計監査の際に、適正な取引を証明するために不可欠な資料であるため、課税期間末日の翌日から2カ月を経過した日から7年間の保存が必要です。
経営管理における請求書保管の重要性
経営の観点からも、請求書の保管は必要です。請求書は過去の取引履歴を確認する上で重要な経営資料となるためです。他社との取引条件の確認や製品価格を改定する際の判断材料、与信管理の参考資料として活用できます。
また適切に保管しておくことで、取引先とのトラブルや監査対応時に、正確な取引記録として重要な役割を果たします。
紙の請求書の保管方法

電子帳簿保存法の施行によって、紙の請求書から電子請求書への移行が増えています。しかし業界や企業規模によっては、いまだに多くの企業が紙の請求書を発行しているのが現状です。
Sansan株式会社が請求書関連業務に携わる、726名の経理担当者を対象に行った調査でも、6割の企業が紙の請求書を発行しています。(2024年4月時点)

引用:Sansan株式会社「Sansan、請求書の発行業務に関する実態調査」を実施~郵便料金値上げまで半年も、請求書発行は「紙が多い」が約6割。一方で約半数が紙から電子への切り替えを検討~」 |
紙の請求書には常に紛失リスクや検索の手間という問題が付きまといます。これらの問題を減らすためには、効率的な整理方法を定め、社内ルールを確立することが重要です。
ここでは実践的な3つの方法を紹介します。
- 取引先別にファイリングする方法
- 日付・月別で管理する方法
- 支払い状況で分類する方法
一つずつ詳しく説明します。
1.取引先別にファイリングする方法
取引先が限定されている場合、取引先ごとに専用のファイルを用意し、時系列で整理する方法が有効です。過去の取引履歴を素早く確認できるだけでなく、請求書の検索がスムーズになります。とくに長期間にわたって取引が発生している企業では、売上や支払い状況の把握がしやすい点もメリットです。
2.日付・月別で管理する方法
請求書を月ごとにファイリングし、発行日順に整理する方法です。この方法は、とくに取引先が多く、毎月多くの請求書を発行・受領する企業に適しています。決算時の書類準備が簡単にできるというメリットがあり、経理業務を効率的に進めたい企業に適している方法です。
3.支払い状況で分類する方法
支払い状況によって請求書を分けて管理すると、キャッシュフローの管理がしやすいため、支払い漏れの防止や資金繰り管理の効率化につながります。支払い後の請求書は取引先ごと、日付・月別など、企業の状況に合わせて管理するとよいでしょう。
電子化した請求書の保管方法

電子データで発行・受領した請求書は、電子データのまま保管しなければならず、印刷して保管するだけでは法的要件を満たさない点に注意が必要です。また紙の請求書をスキャンして電子化する際にも守らなければいけないルールが存在します。電子帳簿保存法の要件を理解し、適切な保管方法を確立しましょう。
電子帳簿保存法の要件を満たした保管方法とは
電子化した請求書を保存する際は、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。電子帳簿保存法では「真実性の確保」「可視性の確保」という2つの要件が存在します。これらの要件を満たさないと、税務調査時に電子データの証拠能力が否定され、経費計上や仕入税額控除が認められない可能性があります。
真実性の確保
真実性の確保とは、電子データの改ざんや不正操作を防ぎ、信頼性のある形で保存することです。改ざんを防ぐために紙の請求書に押印するのと同じように、電子データの場合も改ざんや削除ができない仕組みづくりが重要です。
可視性の確保
可視性の確保とは保存された電子データが、必要なときにすぐに取り出せる状態であることを保証することです。税務調査時に「○○年○月の△△社の請求書を提示してください」と言われたとき、即座に提示できる環境での保管が求められます。
電子データで受け取った請求書の正しい保管方法

電子データで受け取った請求書は、そのままの形式で保管することが義務付けられています。メール添付のPDF、クラウドサービスからダウンロードしたデータ、Web上で取得した請求書などは、電子帳簿保存法の施行により、印刷して紙で保管する方法が認められなくなりました。
具体的には以下のステップで保存します。
- ファイル名を統一(「YYYYMMDD_取引先名_請求書.pdf」など)
- 適切なフォルダへ保存(支払い状況・年度・月別・取引先別で整理)
- 改ざん防止措置を実施(タイムスタンプ付与、履歴管理システム導入など)
- 検索機能を確保(日付・取引先名・金額で検索可能に)
- 画面上で即時表示できる環境を整備
- バックアップを取る(データ消失リスク対策)
正しく電子保管することで、業務の効率化・監査対応の円滑化・データ管理の最適化が実現できます。
紙でもらった請求書をデータ化する際の注意点
紙の請求書をスキャンして電子データ化する場合、次の6つを満たすことが必須の要件となります。
- 基本的には7営業日以内、業務処理規程を定めている企業であれば最大2カ月と7営業日以内のタイムスタンプ付与
- 訂正・削除履歴が管理できる環境での保存
- 事務規程の作成と運用
- スキャン時の解像度200dpi以上・カラー(256階調以上)
- 検索機能の確保(日付・取引先名・金額 などの条件で検索できること)
- 画面上で即時に表示できること
これらを遵守しないと、税務調査で経費計上が認められない可能性があります。
原本は破棄してもOK?電子化後の紙の請求書の取扱い
電帳法の要件を満たして電子化した場合、原本は破棄可能です。なお電子帳簿保存法一問一答問3には以下のように記載されています。
『令和3年度の税制改正において、適正事務処理要件
(旧規則第3条第5項第4号。紙段階での改ざん等を防止するための仕組み)の規定が廃
止され、令和4年1月1日以後に保存を行う国税関係書類については、定期的な検査を行
う必要がなくなりました。そのため、スキャナで読み取り、折れ曲がり等がないか等の
同等確認を行った後であれば、国税関係書類の書面(紙)は即時に廃棄することとして
差し支えありません。』
引用元:電子帳簿保存法一問一答 【スキャナ保存関係】 令和6年6月 国税庁
上記記載の通り、条件を満たす場合には書面の破棄も可能となりましたが、顧問税理士がいる場合は相談し判断するようにしましょう。
デジタル化で得られる5つのメリット

請求書業務のデジタル化は、業務効率の改善だけでなく、コスト削減やリスク管理まで幅広い効果があります。今回は次の5つのメリットを紹介します。
- 保管スペースの削減
- 検索時間の短縮
- テレワーク対応
- 災害リスクの軽減
- データ分析が可能
詳しく説明します。
1.保管スペースの削減
紙の請求書をデータ化することで、物理的な保管スペースが不要となります。請求書は7年間の保管が義務付けられているため、紙の請求書は管理する企業にとって大きな負担でした。
従来のファイリングキャビネットや倉庫を利用した保管方法には、整理や管理に多くのコストがかかっています。デジタル化すれば請求書をコンパクトに管理できるため、保管コストの削減につながります。
2.検索時間の短縮
従来の紙の請求書では、キャビネットから該当の書類を探す手間や、誤って異なる場所に保管されるリスクがありました。しかしデータ化すれば請求書は、取引先名・日付・金額などの複数の条件で即座に検索が可能です。
電子データであれば数秒で目的の請求書を表示できるため、監査や税務調査の際に迅速な対応が可能です。日常的に請求書の確認作業が頻繁に発生する経理担当者の工数削減に大きく貢献します。
3.テレワーク対応
クラウド方式のシステムを活用すれば、オフィス以外の場所でも請求書の確認や承認作業ができるようになります。コロナ禍以降、テレワークが普及するなかでも、紙の請求書の受け取りのために出社を余儀なくされていた経理担当者は、多いのではないでしょうか。
電子化すれば、ワークフローのオンライン化が進み、承認の遅延を防ぎながら業務をスムーズに進められます。
4.災害リスクの軽減
電子データで保管することで、自然災害や事故による紙の消失リスクを回避できます。
請求書を紙で保管する場合、火災・水害・地震 などの影響により、原本の紛失や損傷の可能性があります。クラウドや外部ストレージにバックアップを取ることで、万が一の際にも迅速な復旧が可能です。
データの分散保管を行うことで、一カ所の被害によるデータ消失を防げます。暗号化やアクセス管理を施すことで、データの安全性のさらなる向上につながることもメリットの一つです。
紙の請求書は劣化や紛失のリスクが伴いますが、電子データであれば保管期間を超えても品質が維持され、必要な情報を確実に保持できます。
5.データ分析が可能
デジタル化により、請求書のデータを活用した詳細な経営分析が可能です。支払いパターンの把握や、キャッシュフローの最適化により資金管理の精度が向上します。
たとえば請求書の金額傾向を分析すれば、コストの増減を可視化でき、価格交渉や取引条件の見直しの根拠になります。さらに請求書データを会計ソフトやBIツールと連携することで、経費の可視化が進み、不必要な支出を特定しやすくなるという点もメリットです。
まとめ
今回は、請求書の適切な保管方法とデジタル化のメリットについて解説しました。請求書の保管方法の見直しは、法律遵守・経営管理・業務効率化の観点から非常に重要です。
とくに近年はインボイス制度の導入や電子帳簿保存法の改正により、従来の紙ベースの管理では対応が難しくなってきています。適切な保管方法を確立しつつ、デジタルツールを活用することで、業務の負担を大幅に軽減できます。
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- 電子帳簿保存法に対応した保存要件で受領した請求書データを適切に保管
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記事監修者のご紹介
弁護士 小野 智博
弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士
保有資格:弁護士
慶應義塾大学環境情報学部卒業。企業のDXサービスについての深い理解に基づき、企業法務を提供している。特に、グローバル事業の支援を得意とし、「国際ビジネス法務サービス」を提供している。また、ECビジネス・Web 通販事業の法務を強みとし、EC事業立上げ・利用規約等作成・規制対応・販売促進・越境ECなどを一貫して支援する「EC・通販法務サービス」を運営している。著書「60分でわかる!ECビジネスのための法律 超入門」
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部