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決算期をまたぐ請求書の対応方法とは?経費処理のルールや注意点・効率化のコツを解説
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決算期をまたぐ請求書の処理は、計上のタイミングや按分方法の判断が複雑で、経理担当者を悩ませる業務のひとつです。請求書の日付や入金日だけで単純に判断できないケースも多く、正しく処理しなければ期ズレ・二重計上・計上漏れといったミスや、税務リスクを招く恐れがあります。
本記事では、発生主義に基づく正しい計上基準や、サービス提供が年度をまたぐケースなどの具体的な処理方法、期ズレを効果的に防ぐためのシステム導入について、ていねいに解説します。
請求書の処理業務をシステムで自動化
決算期をまたぐ請求書で発生しやすいトラブル

決算期末は通常月よりも処理件数が増え、判断が複雑な案件も集中します。ここでは、決算期をまたぐ請求書を処理する際に、起こりやすいトラブルについて解説します。
処理漏れや計上ミスが発生する
決算期は、通常の月よりも処理すべき件数が膨大です。その中で、決算またぎ特有の前払処理や未払計上といったイレギュラーな判断を迫られる場面が増えるため、どうしても人為的なエラーが起きやすくなります。
「早く数字を固めなければならない」という心理的な焦りも、ミスにつながる要因の一つです。焦りが確認不足を招き、結果として二重計上や計上漏れを誘発し、決算数値の正確性が損なわれる原因となってしまいます。
決算業務の停滞につながる
請求書の到着が遅れたり、内容に疑義があったりすると、決算作業を進めたくても金額が確定できず、業務全体がストップしてしまうことがあります。
また、締め切り直前や締め切り後に「出し忘れていた請求書」が他部署から提出されるケースも少なくありません。修正や再計算といった手戻りが発生することは、経理担当者の残業増加や決算スケジュールの遅延に直結します。
月次決算が停滞する原因とその対策については、以下の記事をお読みください。
税務上のリスクを招く
決算期をまたぐ請求書の処理ミスは、単なる事務ミスでは済まされない場合があります。本来当期に計上すべき売上や経費が翌期にズレ込んでしまうことを「期ズレ」と呼びますが、これは税務調査において特に厳しくチェックされるポイントの一つです。
もし税務調査で不適切な期ズレが指摘されると、故意に利益操作を行ったとみなされる可能性があります。たとえ悪意がなかったとしても、修正申告の手間がかかるだけでなく、過少申告加算税などのペナルティ(追加納税)が発生するリスクがあることを理解しておくことが大切です。
また、故意による利益操作と認定されれば35%の重加算税が課されることもあります。
参照:国税庁|「No.2026 確定申告を間違えたとき」
決算期をまたぐ請求書は「発生主義」で処理する

会計処理には「現金主義」と「発生主義」の2つの考え方があります。決算期をまたぐ請求書を正しく処理するためには、発生主義の原則を理解しておくことが大切です。
現金の動きではなく、取引の実態で判断する
企業会計の原則である「発生主義」とは、現金の授受があった時点ではなく、取引が発生・確定したタイミングで費用と収益を計上する考え方です。これに対し、現金の受け取りや支払いの時点で計上する「現金主義」という考え方もありますが、一般的な企業会計では発生主義が採用されています。
発生主義では、請求書の発行日や代金の支払い日が翌期であっても、当期中にサービスの提供や商品の納品が完了していれば、役務の提供や引渡しが終了していることから、その取引は当期の費用または売上として処理されます。
反対に、当期中に入金があったとしてもサービス提供が翌期に行われる場合は、当期中に役務の提供が完了していないことから当期の売上として計上することはできません。決算またぎの請求書を処理する際には、この発生主義の考え方に基づいて判断することが基本となります。
売上・費用の計上時期を決める基準
発生主義を実務に適用する際には、どの時点をもって「取引が発生した」とみなすかの基準を明確にしておくことが大切です。
売上の計上基準としては、商品を出荷した時点で計上する「出荷基準」、取引先が検収を完了した時点で計上する「検収基準」、不動産取引などで使用収益が開始された時点で計上する「使用収益開始基準」などがあります。
このように、業種や取引形態によって適切な基準は異なるため、自社にとって適切な基準を慎重に検討しておきましょう。
請求書の一元管理で支払管理を効率化
【ケース別】決算期をまたぐ請求書・経費の正しい会計処理

決算またぎの請求書は、取引の内容や状況によって処理方法が異なります。ここでは、実務で発生しやすい代表的なケースごとに、適切な会計処理の方法を解説します。
納品・サービス完了が翌期になる場合
当期中に代金を支払ったものの、実際の役務の提供や商品の納品が翌期になる場合は、当期の費用として計上することはできません。この場合、支払った時点では「前払費用」という資産の勘定科目で処理をしておき、翌期になって実際にサービスや納品を受けたタイミングで費用化(経費への振替)を行います。
たとえば、3月末が決算の企業で、4月開催の社員研修費 100,000円を3月25日に支払った場合の仕訳例は以下の通りです。
【支払い時(3月25日)の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
前払費用 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
【翌期首(4月1日)または研修実施時の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
採用教育費 | 100,000円 | 前払費用 | 100,000円 |
なお、地代家賃や保険料などのように、一定の契約に基づき継続的に役務の提供を受けるもので、1年以内の期間に対する支払いについては、支払った期に損金算入できる「短期前払費用」の特例が認められる場合があります。
契約期間が年度をまたぐサブスク・保守費用の場合
サーバー利用料や年間保守契約、サブスクリプションサービスなど、契約期間が月や年度をまたぐ費用も注意が必要です。
たとえ代金を一括で支払っていたとしても、会計上はサービス提供期間に応じて按分し、当期にかかる分と翌期にかかる分を分ける必要があります。当期に対応する分は費用計上し、翌期以降に対応する分は「前払費用」として処理します。
たとえば、3月1日に、向こう1年分(3月1日〜翌年2月末日)のサーバー保守費用 120,000円(月額1万円×12カ月)を一括で支払った場合の仕訳例は以下の通りです。
【支払い時(3月1日)の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
支払手数料 | 10,000円 | 普通預金 | 120,000円 |
前払費用 | 110,000円 | ||
【翌期首(4月1日)の振替仕訳】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
支払手数料 | 110,000円 | 前払費用 | 110,000円 |
逆に、後払いで支払いが翌期になる場合は、当期分を「未払費用」として計上するなど、経過勘定を用いて適切に期間配分を行うことが大切です。
出張期間が年度をまたぐ場合の旅費交通費
3月末から4月にかけての出張など、出張期間が決算日をまたぐ場合も、厳密な期間按分が求められます。
宿泊費や交通費などを仮払いや立替で一括精算する場合でも、全額を当期の経費にすることはできません。日程に基づき、当期の日数分は「旅費交通費」として計上し、翌期の日数分にかかる費用は「前払費用」などに分けて仕訳を行うのが原則です。
たとえば、3月30日から4月2日までの3泊4日の出張で、宿泊費 30,000円(3泊分)を3月30日に法人カードで決済(または現金払い)した場合の仕訳例は以下の通りです。
【支払い時(3月30日)の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
旅費交通費 | 20,000円 | 現金(未払金) | 30,000円 |
前払費用 | 10,000円 | ||
※当期宿泊分(20,000円)は費用、翌期宿泊分(10,000円)は前払費用とする
【翌期首(4月1日)または帰社後の精算時の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
旅費交通費 | 10,000円 | 前払費用 | 10,000円 |
金額が大きくない場合は重要性の原則により簡便な処理が認められることもありますが、まずは上記を基本ルールとして押さえておきましょう。
請求書が未着・遅延している場合
決算作業を進めている段階で、取引先からの請求書がまだ届いていないというケースも考えられます。しかし、すでに業務や納品が完了しているのであれば、請求書の有無にかかわらず当期の経費として計上しなければなりません。
金額が見積もりなどで確定している場合は、「未払金」や「未払費用」として計上します。これにより、当期の正しい損益を計算することができます。その後、翌期に請求書が届いてから、計上した未払金を消し込む形で支払い処理を行います。
たとえば、3月31日までに広告掲載が完了しているものの、請求書(100,000円と見積もり済み)が4月になっても届いていない場合の仕訳例は以下の通りです。
【決算整理(3月31日)の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
広告宣伝費 | 100,000円 | 未払金 | 100,000円 |
【翌月に支払った際(4月30日)の仕訳】
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
未払金 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 |
システムの導入をせずに決算期の業務負担を減らす方法

システムを新たに導入しなくても、社内の運用ルールや管理方法を工夫することで、決算期の業務負担を軽減できる場合があります。ここでは、具体的な対策を紹介します。
社内ルールの整備と周知徹底
まずは、経費精算や請求書の提出ルールを明確化することが大切です。「経費精算は翌月○営業日まで」「請求書を受領したら○日以内に経理へ提出」といった期限を設け、就業規則や罰則規定を含めて整備し、周知します。
また、社内だけでなく取引先への協力依頼も有効な対策です。決算月に関しては、通常よりも早めに請求書を送付してもらえるよう事前に依頼しておくなど、密なコミュニケーションをとることで、未着による遅延のリスクを減らすことができます。
ステータスの可視化
二重計上などの単純ミスを防ぐためには、物理的な工夫も効果的です。紙の請求書であれば、処理が終わったものに「済」のスタンプを押す、未処理と処理済みの保管フォルダを明確に分けるといった対策が挙げられます。
また、請求書の受領窓口を経理部に一本化するのも一つの方法です。各担当者の手元に請求書が留まることを防ぎ、経理部門で集中管理することで、処理の滞留や紛失のリスクを低減できます。
アナログ管理の限界
上記のような対策を行っても、人間が手作業で処理をする以上、見落としや入力ミスといった人為的なミスを完全になくすことは困難です。
また、繁忙期に経理担当者が社員一人ひとりに確認や催促をして回ることは、経理担当者にとって大きな負担となります。こうしたコミュニケーションコストや精神的なストレスは、アナログ管理の限界といえます。
請求書の処理業務をシステムで自動化
システムの導入で決算期をまたぐ計上ミスを根本から防ぐ

アナログ管理の限界を超え、決算業務の効率化と正確性を両立するためには、システムの導入が有効な手段となります。ここでは、請求書処理システムの導入によって得られる具体的な効果を解説します。
経理システムの選び方や導入のメリットについては、以下の記事もお読みください。
請求書の受領をシステムで一元化する
請求書受領サービスを活用することで、紙やメール、PDFなど、さまざまな形式で届く請求書の受け入れ窓口を一元化できます。
これにより、請求書の紛失や、担当者が手元に抱え込んでしまうことによる未提出を物理的に防げるようになります。特に、複数の部門や拠点で請求書を受け取っている企業では、受領窓口の一元化による効果が大きいといえます。
また、代理受領やデータ化代行のサービスを利用すれば、経理部門が請求書の到着状況を能動的に把握できるようになり、「届いているかどうかわからない」「どこで滞留しているかわからない」という不安から解放されます。こうした心理的な負担の軽減も、システム導入のメリットのひとつです。
データの読み取りをシステムで自動化する
AI-OCRやオペレーターによる入力代行を活用すれば、請求書に記載された取引日や金額が正確にデータ化されます。これにより、手入力によるミスや、日付の確認漏れによる期ズレを防ぐことができます。
さらに、会計システムとの連携機能を持つサービスを選べば、仕訳入力の手間も削減でき、決算業務全体のスピードアップにつながります。
請求書の読み取りを効率化する方法については、以下の記事をお読みください。
処理状況をシステムで可視化する
請求書の処理ステータスがシステム上で可視化されることで、二重計上のリスクを排除できます。重複した請求書を検知するフラグ機能や、処理済み・未処理を一覧で確認できるダッシュボード機能などを備えたサービスを利用すれば、人の目だけに頼らないチェック体制の構築が可能です。
また、過去の請求書をクラウド上で検索することで、「昨年はどのように処理したか」「同じ取引先からの請求書はどう仕訳したか」といった確認が容易になり、会計処理の継続性を保ちやすくなります。
必要な情報にすぐアクセスできる環境を整えておくことで、決算期の繁忙期においても、業務効率と正確性の両立が期待できます。
まとめ
決算期をまたぐ請求書の処理では、発生主義に基づいた正しい計上タイミングの判断と、前払費用・未払費用などの経過勘定を適切に使い分けることが求められます。また、期ズレは税務調査で指摘されやすいポイントのひとつであるため、日頃から正確な処理を心がけることが大切です。
社内ルールの整備やステータス管理の徹底といったアナログな対策も有効ですが、人為的なミスを根本から防ぐためには、システムの導入が効果的です。
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記事監修者のご紹介
税理士 松崎 啓介
松崎啓介税理士事務所 所長、一般社団法人租税調査研究会主任研究員
保有資格:税理士
昭和59年~平成20年 財務省主税局勤務
税法の企画立案に従事(平成10年~平成20年 電子帳簿保存法・通則法規等担当)
その後、大月税務署長、東京国税局調査部特官・統括官、審理官、企画課長、審理課長、個人課税課長、国税庁監督評価官室長、仙台国税局総務部長、金沢国税局長を経て令和2年8月税理士登録。
松崎啓介税理士事務所 所長、一般社団法人租税調査研究会主任研究員
主な著書「Q&Aでわかる税理士のためのインボイス制度と改正電子帳簿保存法」(第一法規)、「デジタル化の基盤 電帳法を押さえる」 (税務研究会)等
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執筆・編集
「月次決算に役立つ情報」編集部







